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6 イリス

「ユリシア、お前は私が嘘を言っているというのか」

「はい。そうです」


 私は、確信をもってそういった。


「一体、私の話のどこに嘘があるというのだ」

「私の実母、シャーロット様が私を産んで死んだというところ、そしてイリスのことについてです」


 私は、その二つの話について違和感を覚えていた。


「まず、母が、私を産んで死んだということですが、まず、ありえないことでしょう」

「なぜ、そう思う」

「理由は簡単です。母は、『銀龍』という二つ名を持つほどの力を持つのですよ。そのような人の体が弱いわけありません。もともと体が弱かったり、何か病を患っていたのであれば私を産んで死んだということもありえるでしょうが、その可能性も低いでしょう」


 この世界の医療は、日本よりも遅れてはいるが、別に出産による母親の死亡率が極端に高いという訳でもない。しかも、母は、体を鍛えていた武人だ。その可能性は極端に低くなってくる。


「なるほどな。で、イリスについての説明が嘘だというのはどういうことだ」

「それについては、お父様の説明に無理がありすぎて、嘘だとわかってしまいます。

 捕虜となった人物に、侍女が付いていくなど、普通ありえないことですし、そんなことをすれば、母が生きていると気づかれてしまう可能性が高くなってしまいます。お父様であれば、そのリスクについて理解しているはずです。

 何より、イリスは少し、侍女にしてはいろんな技術に精通過ぎていますからね」



 剣術だけならまだしも、格闘術、槍術、弓術等々、イリスから私が教わった技術は多岐に及ぶ。その数は普通の侍女が覚えている、数を優に超えていた。


「それにですね、私の元にはもともと母に仕えていた者もいますし、私、実は母の家臣であった人物とであってお話を昔したことがありまして、その時母にそのような侍女がいたとは聞いていませんでしたから」


 私が母の家臣と出会ったのは、山賊に攫われて、そのまま山籠もりしてしまった時のことだ。あの時、彼とは一か月間よく語り合ったものだ。


「では、イリスは一体何者であるのか。母の侍女ではなく、しかし真実を知っているからには、大きな関りを持っている人物。そんな方。一人しかいませんよね。ね、イリス、いいえ、シャーロット様」


 私はイリスの方に顔を向けて言った。


「……良くわかったわね」

「おい、イリス」


 お父様が声を上げて、言った。


「もういいじゃない。もうこの子は気づいているのだから。ねえ、ジンバド」

「それも、そうだな……」


 お父様は、イリスに言われて、押し黙った。


「改めて、私は、シャーロット。昔、『銀龍』と呼ばれていた、あなたの実母よ」


 イリスは、私の前に来て、そう言った。

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