表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
83/144

第26話「設定姉弟は目標に向かいたい」③

 桜井桃果(さくらいとうか)


 十月二週目の週末、喫茶店『ブラウン』でのバイト上がりにロッカールームで話すわたしと朱里(しゅり)さん。


「それで、翔平(しょうへい)との仲に何か進展はあったのかしら?」

「まだ全然……」


 夏服の季節は終わり、冬服のデザインとなった制服のボタンを外しながら、わたしはそう答えます。


「朱里さんこそ、町田(まちだ)くんとの仲は深まったの?」

「うっ……。あたしの話はいいのよ! あたしの話は!」


 焦りながら向けた矛を返してくる朱里さん。自分の心配はしなくていいのかな~?


「それより桜井さん、あなたと翔平のことよ! あの童顔大学生を好きになるモノ好きなんて桜井さん以外いないだろうからライバルの心配はないにしても、そろそろ距離を詰めていかないといけないんじゃないかしら?」

「モノ好きって……朱里さんって結構はっきりモノを言うよね……」


 それに、わたしだけじゃないですしね……。童顔の大学生を好きになるモノ好きな歳上……。


「それで、デートはもうしたのかしら?」

「それは、一応したけど……。結局あの時は、翔平くんに意識してもらうことはできなかったよ……」


 途中でミドちゃんの家に行っちゃったしね……。まぁ、行かなかったとしても進展することはなんだかんだでなかったかもしれませんが……。


「へぇ、デートはしたのね。思ったよりやるじゃない! 桜井さんって、結構内気な性格だから、あれ以降なにも行動していないと思っていたわ」

「そんなことないよ~。わたしだって結構頑張ってるんだから!」


 朱里さんは、やっぱり遠慮のない物言いでからかうように言ってくる。一応わたしが歳上、朱里ちゃんが歳下ですが、以前ショッピングモールを一緒に回ってから距離が縮まり、それこそ友達のような関係で接している。わたしもその方が気楽で楽しく話せるのでむしろ大歓迎です。


「けど、あの鈍感バカにはそれくらいじゃ効果ないかもね。もっと、積極的にアプローチしないと」

「うん。そうなんだよね……」


 以前、町田くんも言っていましたが、翔平くんは恋心に関しては超がつく鈍感だそうです。そんな翔平くんには、やっぱりやりすぎなくらいの積極性が必要なんでしょうか……。

 わたしは天性的に引っ込み思案なところがあるので、こういう時、思ったことを素直に行動できる人が羨ましいと思います。ミドちゃんはもちろん、朱里さんも思ったことを口にするタイプなので、そこのところが羨ましいと感じます。


「その、それでなんだけど……」


 急にわたしから目を逸らして、結ばれた二つの髪のうち右側をいじりながら照れ混じりに言い淀む朱里さん。普段あまり見せない様子です。


「良かったら、明日の休みにダブルデートに行かないかしら? あたしも、町田先輩ともう少し仲良くなりたいし……」

「ダ、ダブルデート!?」


 とんでもない言葉が飛び出しましたよ! ダブルデートって!


「あのダブルデートですか!? リア充御用達の男女カップル二組でキャッキャウフフするあのダブルデートですよね!?」

「微妙に認識がずれている気がするけど、まぁ概ね間違ってないわね……」

「行った者は非リアの神に魂を吸われるかもしれないと言われている、あのダブルデートですよね!?」

「そんなことは言われてないわね」


 若干引き気味にそう答える朱里さん。勢いよくがっついてしまいしたか……。


「で、どうなの? あなただって、翔平をデートに誘う口実が欲しいでしょ? これなら、ごく自然に誘えると思うんだけど?」

「う、うん。そうだね! 行こう! やろう! ビバ! ダブルデート!」


 確かに、二人でデートに行こうと誘うよりは格段にハードルが低いです。わたしと朱里さんで示し合わせて、二人きりになることだってできるし!

 朱里さんも同じ考えだったようで、わたしたちはダブルデートのプランを考え始めます。途中、上手いことわたしが翔平くんを連れてどっかに行き、朱里さんを二人きりにしてあげると提案します。町田くんはわたしの恋心を知っているので、その辺りは町田くんにも話せば上手いこと行きそうです。


「けど、何でダブルデートなの?」


 着替えを終え、お互いにロッカールームから出るときにそう尋ねると、朱里さんは言いづらそうに答えます。


「それはその……。まだ二人で遊びに行くとか、できそうにないし……」


 顔を赤くして素直にそう答える朱里さん。可愛いですね、朱里さん! 金髪デレとか、見ててニヤニヤしちゃいますよ!


「何かしら、その顔……?」 

「ん~、別に~?」


 ほっこり気分で見るわたしから目を逸らし、「フンッ!」と不機嫌そうになる朱里さん。このツンもいいですね~。


 *


 家に帰ったわたしは、早速翔平くんに連絡します。結果はオーケー。朱里さんの方も、町田くんを誘うことには成功したようです。こうやって誘いに応じてくれるということは、少なくともわたしたちは仲の良い関係だということですよね。


 わたしは本棚の少女漫画に手を伸ばします。パラパラとページをめくり、あるページでめくる手を止めます。主人公の女子高生が、好きな男の子に告白するシーン。


「告白……かぁ」


 勉強机に片頬を付け、左手をだらりと伸ばしながら、わたしは考えます。

 告白したら、翔平くん、わたしと付き合ってくれるかなぁ?


「告白……、してみようかなぁ……」


 第26話を読んでいただき、ありがとうございます。今回は、翠と翔平が目標に向かって頑張り始める話でした。タイトルのままですね(笑)二人ともまだまだ目標に到達するのに時間はかかりますが、それでも、この一歩は大きなものとなるはずです。頑張って欲しいですね。


 せっかくなので、就活について。当初の翔平のように、やりたいことが特にないままなんとなく大学生活を過ごしている人が大多数を占めることでしょう。私だってその一人でしたしね。岡村翔平は、そんな学生の分身のような存在として見て欲しいと思い、生まれました。

 どうしてもフィクション作品ですので、現実離れした『きっかけ』が翔平にはありましたが、私はそれでも『きっかけ』は誰にでもあるということをお伝えしたいですね。そして、それは本当に本当にひょんなことから、生まれると思います。第1話で翠も話していますが、『就活のことを意識した時点で、もう就活を始めている』と考えることもできます。

 意識すること。これだって、十分なきっかけになりますよね? 恋愛だって、意識すると始まるのですから!


 私のこの作品も、大なり小なり、皆さんの『きっかけ』になればいいなと思います!


 それでは、今回はこの辺で! 次回のあとがきでお会いしましょう!


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ