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第21話「陽ノ下朱里は接近したい」③

 陽ノ下朱里(ひのもとしゅり)


 雑貨屋のゆるふわコーナーでお姉さまのお気に入りがないか探すあたしと翔平(しょうへい)。正直、こんな買い物早く終わらせて真実を明らかにしたいのだが、お姉さまに喜んでもらいたいのはあたしも一緒なので、ちゃんとアドバイスを送っていた。


 町田(まちだ)先輩と桜井(さくらい)さんはいつの間にか近くにはいなくなっていた。ここの雑貨屋、少し広いから、別のコーナーに行くと見えなくなってしまうみたいだ。


 お姉さまへの贈り物も大事だけど、あの二人の関係性が気になって仕方ない! そう思ったあたしは、翔平に一言断りを入れて、雑貨屋を歩き回る。すると、そこには町田先輩と桜井さんが話す姿があった。


「(何だか仲良さそうに話しているわね!)」


 あたしは少し離れたところに身を隠し、聞き耳を立てる。


「……お前さ、……好きだろ?」

「な、何で!?」

「バーカ、ばればれ……の」


 な、なにぃぃぃ!!!!!


 お店のBGMが邪魔で少ししか聞き取れなかったけど、今確かに、「好き」とか言ってた! それに対して、町田先輩がバレバレだとか何とか! 桜井さんなんて、それを聞いて頬を紅潮させてるし!!


 え!? え!? つまりどういうこと!? 桜井さんが誰かのことが好きで、町田先輩はそれに気づいているって意味よね? 話の流れとこれまでの行動から考えると、


『……お前さ、オレのこと好きだろ? バーカ、ばればれだっつーの』


 ってこと!? ぎゃぁぁぁぁぁぁぁーーーーーー!! そんなまさかーーーーー!!


 いや待って! まだ分からない! なにせ、あたしは前にもこんな経験をしたことがあるのだから。(みどり)さんと翔平の会話をこんな風に聞いて、勘違いしたという苦い過去がねぇーーー!! 陽ノ下朱里は失敗から学ぶ女よ! これはあたしの勘違いに違いない!


 あたしは更に聞き耳を立てる。


「……翔平……気になってる」


 ……ん? どういうこと? あまり聞こえないけど、『翔平』と『気になる』? これはよく分からないわね?


「……BL……オレは翔平……好き」


 えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!?


 え!? ちょっと待って!? 町田先輩ってそっちの人!? え!? え!? 流石にこれは聞き違いよね!?

 桜井さんは?

 ……え!? 桜井さんはそれを聞いてショックを受けてる!? 泣いてる!? 顔を覆って下を向いてるわ! 


 つまりどういうこと? 信憑性はともかくとして、あたしは今まで聞いた会話の流れを整理してみる。


『お前、オレのこと好きだろ?』

『何で(分かったの)!?』

『バーカ、バレバレだっつーの。(けど悪い、)オレはBL(ボーイズラブの人)なんだ。翔平が好き(なんだ)』


 えぇーーーーー!!!! 嘘よね!? 流石にこれはないわよね!?


 あたしはこれが九分九厘自分の聞き違いだと分かっていても、脳の処理が追いつかない。衝撃的な会話内容で正常な判断ができなくなっている。


 あたしは急いで翔平のところに走って帰る。こんなの聞いたらちんたら買い物なんかしてる場合じゃない! 急いで事の真相を確かめないといけない!


「あ、朱里! おかげさまでいいのが買えたよ。結局、ヘソ出しハムスターのぬいぐるみを買うことに……」

「そんなことはどうでもいいわぁぁぁーーーー!!」

「げふーーーーーーー!!」


 勢い余って翔平の腹に見事決めるあたし。申し訳ない気持ちはこの時はなく、あとになって平謝りした。


「てめっ……、何すんだ…………」

「それどころじゃないのよ!」

「それどころじゃないって……」


 地面に片膝をついて腹を抑えながら、翔平は声を振りしぼる。あたしはなりふり構わず若干の泣き顔で翔平に命令した。


「いいから! あたしは今すぐにでも、桜井さんに本当のことを聞きに行くわ! だから、それと同じタイミングで翔平、あなたも町田先輩に探りを入れに行って!」

「……何でお前、泣いてんの?」

「あと、町田先輩が男に興味があるかも聞いて来て!」

「いきなりなにーーーー!?」

「町田先輩に手を出したら殺すわよ」

「出すかーーーーー!!」


 あたしはないとは思いつつも、二人の間のボーイズラブを禁ずべく、釘を刺したのだった。


 *


 翔平の買い物は終わったので、四人で集合し、三階の水着コーナーに行きたいとあたしは強引に桜井さんを連れて三階に降りた。もちろん、男二人には四階に残ってもらい、見事男女で分断することに成功した。


「それで、朱里さん。どんな水着を買うんですか?」

「ごめんなさい、桜井さん。水着を買うというのは嘘なの……」

「え? どういうことですか?」


 あたしは水着ショップの横道から休憩所に入り、桜井さんに単刀直入に切り出す。


「桜井さんに聞きたいことがあるんだけど……」

「聞きたいこと?」

「そう。桜井さん、好きな人がいるわよね!」

「え?」


 すると桜井さんの顔はみるみるうちに赤くなっていく。やっぱりこの反応! 間違いない! これは勘違いのしようがない!


「い、いきなり何言ってるんですか!?」

「正直に答えて欲しいんだけど、……」

「え!? もしかして朱里さんも!」


「町田先輩のこと好きなの!?」とあたしが先に聞くより先に、桜井さんの口から放たれたのは衝撃の一言だった。


「翔平くんのことが好きなの!?」

「……あ?」


 瞬間、あたしは反射的に顔を歪めて応対することになる。桜井さんは「ひぃ!」っと何故だか悲鳴を上げる。そんなに怖い顔してる? あたし……。


 *


 結論から言うと、今回の件も全てあたしの勘違いだった。それも、前回と同等以上の酷さ。何よ! 町田先輩がBLとか! 何でそんな勘違いするわけ!? 自分で自分を殴りたい。


「そうだったのね。あなたは翔平のことが……」

「はい……」

「あの冴えない男のことが……好きと?」

「そんなことないです! 翔平くんは優しくて頼りになる男性です!」


 う~ん。まぁ、お人好しだし、何だかんだで優しいっちゃ優しいわよね。それ以上に、ムカつく時が多いけど。


「ま、そうかもしれないわね」

「はい! そうですよ! それにしても、朱里さんは町田くんのことが好きなんですね? だからわたしに対する目つきが怖かったんですね……」

「あたし、そんなに怖い目つきしてたかしら……?」

「そりゃあもう! 今日なんて、後ろからガン見してましたよね!? 何で睨まれているのか全然分からなかったんですから!」


 しまった。いつの間にかそんな態度をとってしまっていたのね。もしかしたらバイトの時も無意識に強く当たっていたかもしれないわね……。


「ごめんなさい、桜井さん! 全面的にあたしが悪いわ! 勝手に勘違いしてしまって!」

「いえ、もういいですよ。それにしても、朱里さんが町田くんをね~。ふ~ん」

「な、何よ。その顔は!」

「いえいえ、意外と可愛いとこあると思っただけですよ」

「なっ!」


 あたしは顔を赤くして何も言えなくなる。桜井さんは目を細めて唇を緩ませてこちらを見てくる。


「ふふっ。お姉さんにやられたので、妹に仕返しです」

「ふ、ふん! 別にいいでしょ! 町田先輩はかっこいいんだから!」

「そうですね。好きになる人は人それぞれです」

「……桜井さん。敬語、やめてもらえないかしら? あたしの方が歳下なんだから、タメ語でいいわ。あたしも敵対心からなのか、いつの間にかタメ語になってしまってるし。本来ならあたしが敬語を使わないと……」

「別にいいですいいです! それならわたしは言葉遣いを変えるから、朱里さんはそのままで! これでいいでしょ?」

「ありがとう。桜井さん! お互いに好きな人がいる者同士、頑張りましょう」

「うん!」


 あたしと桜井さんはお互いの手を握った。自分と同じ気持ちを持つ者同士の誓いの儀式みたいに感じた。


「それにしても、翔平を好きになるなんて、モノ好きな人ね」

「そんなことないよ! 翔平くんは可愛いし、格好良いんだから!」

「えぇ~」


 あたしは、身近に恋愛話ができる友人を見つけたような気がして、少し嬉しくなった。


 *


 町田大樹(まちだだいき)


「はぁ? お前、何言ってんの?」

「え? 違うの!?」


 オレが、桜井のことを好きというとんちんかんなことをいきなり言われ、オレは困惑する。翔平も、何やら驚きの表情を出す。


「それ、どこ情報だよ」

「いや、大樹だよ!」

「オレ?」

「以前、モモの話題を出した時に大樹が気になってるって言うもんだからそうなのかと」

「違うわーーーー!! そういう意味で言ったんじゃないわーー!!」

「え? 違うの? じゃあ、どういう意味で?」


 うっ。そう言われると……。一度言ったこととはいえ、改めてそんな風に聞かれると答えづらいじゃねぇか!


「まぁ、その何だ……、胸だよ」

「は? 胸?」

「そうだよ! 以前も話したと思うけど、飲み会で色々あって桜井の無防備な姿とか見てたらちょっと気になったんだよ! あいつの胸が!」

「……」


 うわ! 何こいつ! ゴミを見るような目で見てきやがる!


「大樹って意外とスケベだね」

「スケベ上等だこらぁぁぁ!! お前だって同じ状況だったら絶対意識しちまうかんな!! そんな目すんじゃねぇ! 想像してみろ! ミドリさんとか桜井のエロい格好をよーー!」

「ミド姉とモモのエロい格好……」


 そう言われて翔平は想像したんだろうか、みるみる顔が赤くなる。人のこと言えない!


「ほら見ろ! やっぱお前もそうなるじゃんかよ!」

「確かにそうだった……。その通りだ。これはむしろ健全な男子大学生だね……」

「そうだろうそうだろう」


 翔平は納得したようだ。そうだとも、これこそが健全な男子大学生の反応だ!


「それじゃあ、大樹は女性の胸に興味があると、そういうことでオッケー?」

「まぁ、聞き方はあれだが、間違ってもいないな」

「それじゃあ、この質問はもはや不要だね」

「ん? どんな質問だよ」


 そう言われて気になったオレは、「いやいや」という翔平に強引に質問させた。そんな質問が来るとは知らずに……。


「大樹が、BLに興味あるのかってことだよ」

「ふっざけんなてめーーーーーーーーーー!!!!!!」



 そして、ショッピングモールの中ではオレの声がこだましたという……。


 第21話を読んでいただき、ありがとうございました! 今回は、朱里と桃果が仲良くなる話でした。どんどんキャラ同士の関係性が深くなっているのを見て、作者も物語を進めている感じがします!


 結局、大樹と朱里は仲良くなれたのか? いえ、大して変わってないですね(笑)第3話ぶりとなる朱里の聞き違いにより、大樹はボーイズラブにされてしまいそうになりました。桃果をライバルだと思っていた朱里からすれば、実はライバルが翔平だった可能性が出てくると、心中穏やかではないでしょう(笑)(笑)

 需要があるのであれば、今後しょーとの方でBLネタをやってみてもいいかもしれないなぁ……。いや、ないか。


 今回の話を書いていて楽しかったのは、やはり朱里と翔平の掛け合いです。今回はいつもよりも過激に書いてみました。いろんな方からコメントをいただくのですが、朱里と翔平の掛け合いが好きという方、結構いるようですね! この作品で一番好きなキャラでも、朱里と答える方が多いです! 朱里も喜んでいます! 作者も好きですよ、朱里ちゃん! これからも出番がたくさんあるので、楽しんでくださいね!


 それでは今回はこの辺で。次回から、続きものになります! 時系列的には夏。夏といえばやっぱり……! 次回をお楽しみに!

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