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第10話「桜井桃果は攻めていきたい」③

「モモ、次はここなんだけど……分かる?」

「どこ?」

 二回目の質問タイム。もう同じことでパニくったりはしません。むしろ、こっちから近づいて意識させます。

「この問題にはこの公式を使うと思うんだけど、うまいことさっぱりした答えにならないんだよ。公式違ってる?」

「あぁ、これ。これは少し難しいんだよね」

 私は、そう言いながら彼の肩くらいまで顔を近づけます。ちょっと自分でも近づきすぎだと思うくらいです。

「これは応用問題なの。公式自体は合っているんだけど、順番が違うの。まず、こっちをこうやって……、それからここの公式を使うんだよ」

 そうして問題を解いていくわたし達。翔平(しょうへい)くんの顔を見ると、顔が赤くなっています。ふふん、どうですか。わたしだってやればできるんですよ。

 まぁ、こっちはこっちでものすごく恥ずかしいけどね。心の準備が出来ていた分、こっちが有利ってもんです。


「なるほど! 分かったよモモ、ありがとう! それで、えっと……言いにくいんだけど……」

 翔平くんの顔がまた赤くなりました。可愛いですね。照れちゃって。女の子に近寄られて照れてい……


「その、当たってるんだけど……」

「?」


 わたしは自分の状況を見直してみました。翔平くんの左肩から出すように教科書を見るわたし。ちょっと近すぎるくらいなお互いの距離。そして、


「!?」


 翔平くんの左肩に当たる、私の胸。


「わぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーー!」


 私は一気に後ろにある壁まで下がり、翔平くんは顔を下に向ける。


「いつから!? いつからなの!?」

「えっと、質問始めた時からずっと……」


 それって最初からじゃないですか! なんで教えてくれなかったの!? てか、なんで気づかなかったのわたし! バカなの!?


「ごごごごごめんね翔平くん、わざとじゃないから!」

「いや、こっちこそ何かごめん」


 気まずい。気まずすぎる。わたしがこんなに気まずさを感じてるんだから、向こうはもっとそう感じているだろうな……。

 まぁ、けど、ある意味アプローチ成功☆みたいな? 考えようによれば、今日は可愛い服着て来たし、薄地だから翔平くんにより胸の感触を与えることができたし……。


 ……全然成功じゃないよ! 大失敗だよこれ! 


 沈黙が痛いです。何か言わないと……


「しょ、翔平くん、ラッキーだったね! 女の子の胸の感触を楽しめて!」


 何言ってるのーーーーーーー!! ! 自意識過剰な糞ビッチですかわたしは! 


「何言ってんの! からかうなよ!」

 ほらーーわたしと同じ反応だよ! でももう後には引けない。ここで引いたら何でこんなこと言ったんだってなる。


「ほら、わたしの胸ってミドちゃんより大きいし、ミドちゃんじゃ味わえない感触だったでしょ?」

 さりげなくミドちゃんより魅力的アピールするわたし。ゲスすぎますね。体を売る淫乱女みたいで言ったことに後悔します。


「ま、まぁ、確かにミド姉より大きかったけど……ってそういうことじゃないでしょ!」


 顔が真っ赤な翔平くん。それを見て、わたしも顔が真っ赤になります。顔から蒸気が噴き出そうです。



 それからしばらくわたし達は何も会話せず、普通に問題を解きます。こういう時は時間が解決してくれるのを待つのが吉です。とてもじゃないけど、直視なんてできません。


 *


「ん~、ちょっと休憩」

 先程の大事故から一時間くらい経過したおかげで、わたしも翔平くんも気にしなくなりました。一段落したため、ちょっと休憩します。


「そういえばモモって、イラスト描いてるんだってね。知らなかったよ」

「あ、ミドちゃんから聞いた? うん、描いてるよ」

「ミド姉が褒めてたよ。上手だって」

「そんな、わたしなんて趣味で描いてるだけだし、夢を目指しているミドちゃんの方がよっぽどすごいよ」

「モモはイラストレーターとか絵を描く仕事はしないの?」

「うん、わたしはそういうのはいいかな。絵は趣味にしていきたいから。まぁ、だからって、将来やりたいことが決まっているわけではないし、何がやりたいのかも分からないんだけどね」

「俺も同じようなものだよ。将来考えるのって、難しいよね」

「そうだね。けど、翔平くんはインターンシップに行くみたいだし、もう一歩進んでいるよね。わたしも頑張らないとなー」

「ありがとう。同い年として、お互い頑張ろう!」


 あ、そういえばわたしって、翔平くんに年上ってこと言ってなかったんでしたっけ。まぁ、変に気を使われても嫌だし、別にいいか。浪人生なんて大学生になればたくさんいるしね。


「あ、そうそう。俺も即売会にミド姉の手伝いをしに行くことになったから、当日はよろしくね」

「そうなんだ! 翔平くんも手伝ってくれるんだね! 嬉しいな」

「モモも単独のイラスト本を出すんでしょ? 当日、楽しみにしてる!」

「何だか恥ずかしいなぁ」


 こうやって普通に会話しているだけでも楽しいです。友達として話しているだけでも楽しい。声がいつもよりも弾み、顔は自然と緩んでしまいます。

 やっぱりこれが、好きっていうことなんですね。


 ミドちゃんのおかげで翔平くんに再会できたんですよね。そう言う意味ではミドちゃんに感謝ですね。

 それに、恋敵とは言え、翔平くんがミドちゃんと仲がいいのは、素直に嬉しい。何ででしょうかね? 普通こういう時は嫉妬とかするものだと思ってましたけど。


 よく分かりませんが、翔平くんもミドちゃんも、両方大好きだからなんだろうなーとわたしは思いました。


 *


 図書館での試験勉強を終えると、すでに時刻は午後六時くらいとなっていました。


「最近はより日が延びたね。まだ明るいや」

「そうだね。気温ももう夏って感じだしね」


 そんな雑談をしながら図書館を出ます。

 勉強会だというのに、今日は一日新鮮なことだらけでした。楽しかったし、緊張したし、恥ずかしかったし、わたしの心臓は今、休息を求めているでしょう。


「今日は本当にありがとうモモ、すごい助かったよ。これで明日のテストも大丈夫だと思う」

「そう、それなら教えた甲斐があったよ」

「お礼がしたいんだけど、何かない? 俺にできることなら何でもするよ」


 その時わたしの脳裏に思い浮かんだのは、昨日の夜に見ていたドラマのシーンでした。


 まさか、いくら何でもって言ったって、限度ってものがあるでしょう! そんなことお願いして迷惑をかけたくないです。翔平くんは善意で言ってくれているのに。


 心の中の邪な気持ちと常識が葛藤して、現実のわたしも頭をブンブンしてしまいます。


 でも、わたしだって、ミドちゃんみたいに積極的になりたい。翔平くんともっと仲良くなりたい。翔平くんに意識して欲しい。


 ミドちゃんには負けない。わたしはもっと攻めていく! 

 気づけばわたしの心は、一歩踏み出す方に傾いていました。


「じゃ、じゃあ翔平くん」

 わたしは、トートバッグの紐をギュッと握り締めます。そして、手に力を入れて、勇気を振り絞ります。


「一日だけでいいから、わたしの……」


 わたしはミドちゃんより一歩先を行く! まだ翔平くんと付き合っていないミドちゃんより、先に付き合ってみせる! ライバルの顔を思い浮かべ、その言葉を繰り出す。



「弟になって!」


「…………」

「…………」

「……へ?」


 翔平くんが唖然とし、間抜けな声を出す。


 わたし自身も、全く同じ気持ちでした。


 第10話を読んでいただきありがとうございます!

 今回は、桃果と翔平の勉強回でした。今回も続きものです!

 衝撃的な一言を放った桃果ですが、一体どうなることやら……。お楽しみに!


 個人的に、勉強会中の桃果を想像しながら書いてると、桃果の初々しさが可愛かったです。ラッキーハプニングも唐突に思いついたんですが、結果、作者もニヤニヤするような展開になりました。きっと緊張していて気づかなかったんですね。ドンマイ桃果!

 てか、ふと思ったんですけど、こういうシーンあったら15歳以上指定とかしなきゃダメなんでしょうかね? 全然考えてなかったので設定してませんでしたけど……。そういえば第5話の大樹回でもそこそこ15指定の会話が繰り広げられているわけで……。

 これについては要検討ですね。サイトの規定とか見てみます。気になることあったら指摘してくれると嬉しいです(>_<)


 そういえば、他の作者さんの作品を見ていると、設定集を作っている人を結構見かけます。読んでいて物語とは違った楽しみがあったので、今度作ってみようかな~と思ったり思わなかったりです。それに、小説じゃ見かけませんけど、漫画だとキャラクター人気投票とかありますよね? 自分で作ったキャラクターがいると、やっぱり気になっちゃいますね。「読者はどのキャラが好きなんだろ~?」って。けど怖くてできないー! 投票数集まらないと思うと怖くてできません……。今はまだそっとしておきましょう……。


 今回はこの辺で! それでは第11話でまた会いましょう! 

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