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疾風のランドルフ  作者: 紫生サラ
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第三話 ランドルフと「とろとろ」なお話<ひだまり童話館へお出かけ作品>

企画・ひだまり童話館「とろとろな話」参加作品

 俺の名は疾風のランドルフ。またの名を白猫のポン太。小さなボスのボディーガード。

 今日もボスのとなりが俺の指定席。

「うー、うー!」

 ……。

 おや? ランドルフさん?

「うー、あー!」

 ……。

 小さなランドルフさんのボスは手を伸ばして体をゆさゆさ。そのとなりでランドルフさんは長いしっぽをパタパタ、ピョンピョン。

 ねぇ、ランドルフさんってば!

 ちっ、なんだよ。

 まあ、何ということでしょう。ランドルフさんは不機嫌です。

 別に不機嫌じゃない。

 でも、ランドルフさん、ずいぶんしっぽが落ち着かないみたいですよ。

 ……。

 ランドルフさんは小さなボスのとなりでそわそわしながらボスを見守っているではありませんか。どうやら、ボスはボスママがさっきテーブルの上に置いた赤いバラの花が気になるようです。

 とても立派でキレイな花は、柔らかくて、いい匂いがしそうです。ボスは手にとってみたくて、とろうとろうと小さな手を伸ばしますが、まだお座りができるようになったばかりのボスに少し難しいみたい。

 ランドルフさんが取ってあげればいいのに。

 ……。

 なんでランドルフさんが取ってあげないんですか? あなたのボスが困っていますよ。

 うるさいなっ! ボスが自分で取るっていっているんだ。だから、これでいいんだ。

 そう言いながら、ランドルフさんはしっぽをイライラ、パタパタさせました。

 本当は取ってあげたいのですね?

 ふんっ。当たり前だ。でも、今はボスがやりたがっている、だから見守るときなのさ。

「うーうー」

 ボスは手を伸ばしたままコロンと倒れてしまいました。するとボスの顔がみるみる曇り、今にもほっぺに雨が降りそう。

 ランドルフさんはボスのほっぺが濡れる前に、ボスのふにふにしたほっぺをペロッと舐めました。すると、ボスの機嫌はとたんによくなり、お日様さまに向かって咲くお花みたいに笑いました。

 ランドルフさんも一安心。

「あー」

 手をふってよろこんでいたボスは気をとりなおしてもう一度、バラに目を向けました。

 もう、バラをとるだけなのに一苦労ですね。ねぇ、ランドルフさん?

 これでいいのさ。俺がやればすぐだけど、ボスのこのゆっくりとした時間の中には、いろいろなものが詰まっているんだ。だから、これでいい。

 小さなボスは今度は横になりながら手を伸ばします。まだハイハイがうまくないのです。動かないで手を伸ばすだけ。でも、それでは少しもバラとの距離は縮まりません。

 動かないとお花に手が届かないということを、ボスは今、学んでいるのですね?

 ああ。当たり前を一つづつ知るんだ。最初はみんな当たり前じゃないからな。

「あっ、ボシュにポン太のあにゅき! 何をしているんでしゅか?」

 ちょうどボスパパと散歩から帰って来たテリーが、ランドルフさんとボスを見つけてトタトタとかけてきました。ボスパパを散歩に連れて行ったのでテリーはとても機嫌がよかったのです。

「今、ボスがそのバラの花をとろうとしていたんだ……」

 ランドルフさんが言ったので、テリーはピョコンと耳を立てました。

「なんだ、ボスがうまく取れなくてとろとろしているなら、僕がとってあげましゅよ」

「いや……」

 ランドルフさんが言う間もなく、テリーはひょいとバラをくわえて小さなボスのところに持ってきてあげました。

「……」

 ボスはテリーが持ってきたバラを見て、不思議そうな顔をしましたが、すぐに笑顔になりました。

「テリー!」

「ふわっ?」

 その光景を見ていたボスママはテリーの頭を撫でてテリーのことを褒めました。

「テリー、優しいのね! バラを上げるなんて」

「あれ? 僕、褒められてましゅ? なんで?」

 テリーにはわけがわかりませんでしたが、しっぽを振って喜びました。

 ランドルフさん、ボスも喜んでいますよ。そんな顔をしないで。

 ふん。

 ランドルフさん? 

 ボスは喜んだだけさ。満足はできなかった。

「あにゅき! 僕なんだか褒められ……はぶっ!?」

 ランドルフさんは、長いしっぽでテリーの鼻をペシリとしました。テリーは思わず尻もちをつき、首を傾げます。

「あれ? 僕、怒られてましゅ? なんで?」

「もう、ポン太は、テリーをいじめないの!」

 ランドルフさんはボスママから怒られました。 

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