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正当な狂気  作者: 紗華
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警察署にて…

…警察署に着いた。

家を出て、此処に着くまで大変だった…。


家を出たとたんに、マスコミ関係者が待ち伏せしていて、いきなりのインタビュー…。


「今回の事件について一言お願いします」

マイクを突き付け無理矢理コメントを求める。


何も答えないままマスコミの前を通り越した。

携帯にも何回か着信があった。

会社から…通夜と葬儀はいつやるのか?

妻の親から…詳しいことわかった?

友人から…事件は本当?


警察から…早く来て下さい。



周りの人々がうっとうしく感じた……




警察署に入り、昨夜と同じく受付で名前を告げる。

昨夜とは違う刑事が現れ、僕を奥に案内した。


奥の部屋に入り、刑事がゆっくり喋りだす…

「え〜検死の結果、死因が解りました。それでちょっとお聞きしたいのですが…」


そう言いながら立ち上がり、奥にある机の上に置いてあった青いファイルを持ってきた。



そしてファイルを見ながら、

「あの〜奥さんなんですが、心臓になにか病気とかありましたか?」


突然、変なコトを聞かれ

「えっ?心臓ですか?」

僕は刑事に聞き直した。


刑事は

「そうです。心臓です。過去に手術したとか弱っかったとか、奥さんから聞いたことありませんか?」

ともう一度聞いてきた。


僕は変な質問に頭を傾げながら、過去を思い出す。


…そういえば、妻本人から聞いたことはなかったが、結婚して間もない頃に妻の母親から、妻が小学生の頃、心臓が弱くて運動が出来なかったと聞いた事があった…。


そしてその事を刑事に話した。


刑事は納得した表情で話しだした。

「これでこっちも納得しました。それでは検死の結果をお伝えします。まずお子様ですが、当初の見解どおりナイフによる刺殺で間違いありませんでした。それで奥様なんですが、目立った外傷はなく我々警察の方でも、死因がなかなか解らなかったのですが、首と胸部に火傷みたいな小さな跡がありまして…、それがスタンガンによるものと判断し、死因としてはそのスタンガンによるショック死とみてます」


…スタンガン?

…ショック死?

頭の中が混乱した。


刑事は続けて話す

「あと、事件の状況を話せる範囲で話します。今回、車の中や事件現場で争った跡もないので、犯人は最初にスタンガンにて奥さんを気絶させ、それから衣服を脱がしたと考えられます。一旦、奥さんの意識が戻ってしまい、犯人はもう一度気絶させようと胸部にスタンガンを押し当て作動させたと思われます。そして、その時のショックによって奥さんは死亡したと思われます。

お子さんについては、奥さんと同じくスタンガンで気絶させられ、そのあとナイフで刺されたと考えられます。」


…なんとなく事件の状況が頭に浮かんだ…


部屋のドアが急にバタンッと開いた。

そして別の刑事が部屋に入ってきた…昨夜の刑事だ。そして軽く会釈して話しだす…

「え〜昨夜はど〜も…。ここからは私が話しますね。」

昨日とは違う軽い口調だ。

「…死因や簡単な事件の状況は、もうお聞きしたと思います。

今回の事件は激しい雨の為に、事件現場の状態が悪く、捜査がやりにくい状況です。犯人に繋がる物証も見つかってませんし、車の中にも何も残ってません。」

まだ事件の捜査が全く進んでないらしい…。

刑事は一度部屋を出て、ビニールに入ったバッグを持ってきた。

「奥様の所持品のバッグです。無くなってる物がないか確認をお願いします」


そう言って僕の前にバッグを置いた…。

確かに妻が普段使っているバッグだ。


僕はバッグを開けて、中身を確認した。


…まず財布。中身は1万7千円。あと免許証とカード類。いつもの財布の中身と変わらない。


…次にポーチ。化粧道具が入っている。これもいつもと変わらない。


…そして銀行の封筒。中身を確認すると、7万円入っている。たぶん妻が銀行から引き出した金だろう。


特に盗られた物はなさそうだった。

刑事にそのことを告げる。


刑事は解っていた様子で

「やっぱり何も盗られてないようですね…。所持品に荒らされた形跡がなかったので確認をお願いしました。

これで警察としても、物盗り目的での犯行の可能性が少ないと判断し、暴行目的の犯行と怨恨による犯行の2点に絞って捜査ができます。」


…怨恨?

妻は人に怨まれるような人間ではない。

すると、やっぱり暴行目的なのか?


…暴行目的…そして殺害…。

僕の中に、まだ見ぬ犯人に憎しみという感情が湧いてきた…。



刑事は

「…事件の一連の流れと話せる範囲の情報は以上です。ご協力ありがとうございます。…またいろいろとお話を伺うことがあると思いますが、その時はご協力お願いします。」

そう言うと部屋を出て行った。


刑事と入れ替えに女性警官が入ってきた。

「こちらが遺体と遺留品の引き取りの手続きの書類になります。この欄にご記入お願いします。」

女性警官は書類を僕の前に置き、書類を指差しながら説明した。


…めんどくさい…

そう思いながら、書類を記入する。

…11月4日…妻の誕生日を記入。


…11月4日…妻の命日を記入。

30分位で書類に記入が終わった。



すべての手続きが終わり部屋を出る。

さっきの刑事が小走りで僕の前に駆け寄って来た…そして

「さっき言い忘れたんでお伝えしておきます。検死の結果で、奥さんの体から体液は発見されてないです。良かったですね」

と、言ってきた。

…えっ?

突然で意味が解らなかった。


理解してない僕の顔を見てもう一度、

「つまり、奥さんは犯人に姦られてないって事です。警察としては犯人の体液があった方が捜査しやすいですが…」


…そうか…妻は姦られてない…でもそれがなんなんだろう…殺された事実は変わらない…


僕は一言、

「…はぁ、そうですか…」

と漏らした。


刑事は、

「…あれ?驚かないんですか?」

と不思議そうに僕の顔を見た。

そして時計を気にしながら最後に

「奥さん、姦られてなくて良かったですね」

と笑顔で言って小走りで居なくなった。


刑事が言った…

「良かった」…という言葉…


なにが…

「良かった」…のだろう?


本当にそう思っているなら、あの刑事はバカだ…



僕は警察署を後にし、通夜と葬儀の準備の為、走り回った…

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