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魔法学校の表事情と裏事情  作者: アウラ
5.明日来る春の嵐を避ける方法
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5限目 空が青い理由を知ってますか~?(その3)

 大講堂――その名の通り学校で1番大きい講堂であり、集会や式の際はここを使う。


「そろそろ来ると思いますから~よろしくお願いしま~す」


 リア会長とキオ副会長はステージの方で作業をしに行く。


「私様はあちらの方をやりますわ」


「じゃあ僕は向こうをやるっす」


「アクィナは2年だから誰かといた方がいいだろう」


「そうですわね。ではあなたがやりなさいな」


 オレが提案するとすぐさまノトさんはオレに押し付ける。


「まぁいいけど」


「ではあなたはここを任せますわ」


「お願いしますっす」


 そう言ってノトさんとイリューは各自の担当場所へ行く。


「シロンさんってリア会長と同じくらいすごいんですか?」


 2人きりになった瞬間いきなり質問してきた。


「同じではないよ。足元にも及ばないって」


「でもリア会長の魔法を解呪したと言うのは……」


「あぁ、その事ね。それは本当だけど手加減ありだからなぁ」


「あ、やっぱり」


「やっぱり?」


 ノトさんと同じく疑っていたのだろうか。或いは気付いていたのだろうか。


「なんか昨日のシロンさんってこうムォーって感じでしたから」


「なんだよ、そのムォーって」


「ムォーはムォーですよ」


 もしかしたらこの子、アホの子かもしれない。

 おそらくは“何か言いた気な”と言う意味で使ってるのだろう。


「だとしたらリア会長は別の点でピンときたのかもしれませんね」


「ん?」


 ボソリと言ったアクィナの一言にオレは反応する。


「なんでもありません。あ、来ましたよ」


 その後オレ達は着席を誘導する作業へと入る。






「お疲れ様で~す」


 作業が終わりリア会長の元へ言って完了の旨を伝える。


「僕も終わりましたっす」


「お疲れです~」


「ではステージ端で待機していてくれ。リアも」


「わかったわ~。みんな付いて来てくださ~い」


「「はい」」


「あれ、ノトさんは?」


 居ない事に気付いた。


「彼女はまだやってるのではないでしょ~か~」


 彼女の性格を考えれば今どうなっているかを察した。


「ちょっとオレ行ってきていいですか?」


「まだ時間もありますし~、大丈夫ですよ~」


「失礼します」


 オレは小走りでノトさんが担当したところへ行く。


「ちょっと! あなた方はここに座りなさい。立ってると目障りですの。そこ! 喧しいですわ。静かに出来ないの?」


 ノトさんは案の定一言多く言いながら誘導していた。そのような物言いでは従うものも従わない。


 オレは溜め息をついてから指示を出す。


「そこの人、こっちです。混雑防止の為によろしくお願いします」


「ちょっと、あなたに頼んだ覚えはありませんわよ」


「時間掛かってるようだから手伝ってるんだからいいだろ」


「よくありませんわ。私様の仕事を奪うおつもりですの?」


「殆ど終わってない人がそんな事言うなよ。はい、そこに座ってください」


「これは私様の仕事なのですわ。あなたにとやかく言われる筋合いはございませんわ。そこの方々、1列前ですわ。後ろの方が困っているのがわかりませんの?」


「2人でやれば早く終るだろ? もう2つ奥の方に座ってください」


「2度も言わせないでもらえません事? これは私様の仕事なのですわ。そこであってますわ。ご協力感謝しますわ」


「だからさ――あ、違いますそこは違うクラスの席ですよ」


 とうとう言い合いをする余裕がなくなり誘導に専念せざるを得ない状況になる。


「そろそろ始まるので静かにしてくださいません事?」


「まもなく始まりますのでお静かに願います」


 しばらくしてようやく終わったところでノトさんがオレを睨む。


「なんだよ」


「あまり人様の仕事を奪わないでもらいたいですわ。正直言って迷惑ですの」


「だけどあのままだと終わらなかったと思うけどな」


「それは……」


 頭のいいノトさんだからわかっていたのだろう。


「で、でも感謝はしませんわ」


 負けを認めたのか怒って集合場所へ向かって行ってしまった。


「感謝されるためにした訳ではないがな」


 ノトさんの後を追いながらそう呟く。


「お疲れっす」


 皆と合流してからイリューが労いの声を掛ける。


「別のところが疲れた気がする……」


 主に精神面である。


「ノト先輩の噂は時々聞くっす」


 おそらくあの性格の事だろう。


「オレも知ってるんだけどなぁ」


「でもどうして自分から手伝うなんて言ったっすか?」


「どうして? どうしてだろう……。放っておいたら面倒な事になりそうだからじゃないか?」


「なるほど」


 手伝わないで放置していたらトラブルにでもなっていたのではないだろうか、と思う。結局それを処理するのはオレ達であって、手伝うにしろ手伝わないにしろ面倒なのだ。

 どっちが面倒でないかと言ったら手伝う方であるのだが。


「シロン先輩って見た目に反してお人好しっすか?」


「なんだよ、見た目に反してって」


「えー、なんかこう、眠そうな目をしてると言うっすか……」


「失礼なやつだな」


 眠そうなのは呪いのせいであって性格によるものではない筈だ。


「会長副会長やノト先輩にアクィナは有名っすけどシロン先輩は昨日まで全然知らなかったっすから」


「まぁ……な」


 オレ以外のセルマスクメンバーは全員異常な程に優秀であってオレが劣等ではないと思う。


「あ、もしかして友達いないって感じっすか?」


「え!?」


「それならどんなにすごくても有名になったりしないっすもんね」


「それは……違うんじゃないか?」


 だ、断じて友達いない族ではない筈だ。


「でも会長の魔法を解呪したって話じゃないっすか」


 どれだけ会長達の言葉を真に受けているんだ。半分嘘だと言うのに。


「いや、あれは――


「はいは~い。お喋りはそこまでです~。そろそろ始めますよ~」


 リア会長が会話を中断させる。


 そのタイミングでの中断はどう考えたってオレに真実を話させないつもりのようだ。


 昨日のリア会長と話をした通り、オレが「あれはリア会長は手を抜いた魔法だった」と話したら周りは過大評価していた事に気付きオレの評価を大きく下げるだろう。

 そうすればリア会長は反論として「実はシロン君は無意識で解呪出来る」とか言うのだろう。


 結果的にそうなれば安定した評価になるのだがあまり自分の手の内を知られたくないし、やはりそれは過大評価である気がする。


 オレ達は舞台袖に用意された椅子に座る。


「これより王立セルシア魔法学校生徒会――セルマスクの就任式を始めます」


 キオ副会長の言葉により生徒たちは静かになる。

 それだけカリスマ性が高く統率力に優れるのだ。


「では、生徒会会長――リアベルナより挨拶があります」


「じゃ、いってきま~す」


 小声でそう言ってリア会長は壇上へ向かう。


 腰まで伸びる黒髪を払うその姿をやはりこの学校の生徒のトップに相応しいその実力を表す雰囲気がある。

 尤もオレはこの人が性悪である事を知っているのだが。


「みなさ~んこんにちわ~。昨年も会長でしたが~、今年もやります~」


 声だけ聞いてる身としてはカリスマも何もないのだが、その奥に秘められた自信は皆を惹き付ける。


「昨年のセルマスクのメンバーは~、副会長ともう1人を除いて卒業してしまわれましたから~、3人新たに加わっていただきました~。紹介は後でするとしまして~、まずはこの学校の現状をお伝えしようと思いま~す」


 ん? 今何か変な事言ってなかったであろうか。


「紹介?」


「紹介されるなんて畏れ多いっす!」


「ズバーンって1人で挨拶すると思いました」


 何か嫌な汗が出るのだが……。


「それでは~、まずは~、シロン君を紹介します~」


「何故オレからなんだよ!」


「年齢順じゃないっすか?」


「はやく行きなさって」


 ノトさんに押されてオレは壇上に立つリア会長の元へ行く。


「では挨拶をお願いしま~す」


 そう言ってリア会長は立ち位置を譲る。


 手元に小さな魔法陣がありこれに魔力を流す事で拡声器として働く。

 オレはこれに手を当てる。


「6年A組のシロンと言います。右も左もわからない身ですが精一杯努めさせていただいきます」


 無難な挨拶が1番だろう。

 しかし案の定ざわめき始める。


「と言う感じに~、すこ~し真面目過ぎる人なので~す」


 リア会長が茶化すがあまり変化はない。

 それもその筈であって、やはりセルマスクにトップレベルでない実力者がいると言うのは学校史上殆ど例がないのだ。


「皆さんは~、彼がA組である事に驚いているのかもしれませんが~、私は~彼には伸び代があると見込んでいま~す。つまりですね~、彼は~、シロン君は近いうち才覚を現すと思ってます~」


 今度はどよめきである。

 それも仕方ないであろう。オレはあの天下のリアベルナ生徒会長に認められた男、と言う認識になってしまったのだから。


 オレ自身、昨日のように半分嘘のあの茶番の繰り返しになると思っていたのに、蓋を開けてみればオレが反論する事の出来ないリア会長の評価であり驚いている。


「シロン君ありがと~ございました~。ではイリュー君ど~ぞ~」


 そう言ってオレを下がらせて舞台袖の席に座る。


「リア様から随分と評価されてますわね」


 帰るなりノトさんに文句を言われる。


「オレに言わないでリア会長に言って欲しい」


「そのような事出来る訳がないですわ」


 尊敬するリア会長に不満を言うようなものだから言えないのだろう。


「とにかくオレがどうの言える立場じゃないしオレ自信も訊きたいんだ」


「そう……なのですか。わかりましたわ」


 何を納得したかわからないがオレに文句を言う気はなくなったようだ。






 就任式が終わりその後の授業も終わり放課後になった。


 就任式はオレの挨拶以外全て難なく済んだ。


 その後もオレの周りの人の対応――カナミとフェル、ついでにサイフォンの3人だけだが――は変化する事もなかった。

 とは言っても他多数の人からの目はすごかった。


「で、どうしてオレが呼ばれたんです? 今日の放課後は何もなくて明日の放課後に来てくれって言ってましたけど」


 場所は生徒会室。

 就任式の片付けが済んで次の集合の話をしていた時である。何故かオレだけ今ここに来いと言われた。

 その時にノトさんにど突かれたのは言うまでもない。


「そうですね~、シロン君は私達に訊きたい事があってこのセルマスクに入ったのではないんですか~?」


「訊くなら今の内であろう。答えられる範囲で答えるつもりだ」


 一昨日と同じくソファーのある応接モードの生徒会室である。昨日今日のようなU字に座る会議モードを2人はいちいち変えているのであろうか。

 その事をまず訊いてみた。


「まず最初に訊く事がそれなんですか~」


「君は案外変なところがあるのだな」


 大笑いされてしまった。


「シロン君の言いたいのはこう言う事ですよね~」


 そう言って立ってから手を叩く。すると――


「うわっ!」


 突然ソファーが消えてオレは尻餅をつく。


「痛……え?」


 目を疑った。


「ま、こう言う事だ」


 キオ副会長消える寸前で立っていたようで何ともないようだ。


「こう言う事って、突然ソファーが消えて長机や椅子が現れるんですか……」


「昔のセルマスクにいた人達が悪戯が好き~……と言うか(くつろ)げる場所が欲しかったんでしょうね~」


「全く何言ってるかわからないんですけど」


「リアの代わりに私が説明するしかないな」


 そう言って今度はキオ副会長が手を叩く。


「おお!」


 そうすると今度は会議モードから応接モードへ代わる。そしてオレ達はソファーに座る。


「この通り予め仕組んだ召喚術(サモン)によって交互に現れるようにしている。召喚術で非生物も呼び出せるのは知っているだろう?」


「はい。ですが……」


「君の言いたい事もわかる。この部屋にソファーや机、椅子がある間は魔力を消費する」


 召喚術は使用中の間、使用者の魔力を常に消費し続ける。

 だから家具に召喚術を使うの事にコストが吊り合わないのだ。


「でも~、消費魔力はあまりないのですよ~」


「え?」


「どうやらその当時のセルマスクメンバーが召喚術が得意な事以外にも魔力の節約に長けた人でもあったらしいのだ」


 そう言ってキオ副会長は床を指さす。


「よく見てもあまりよくわからないだろうが、かなり緻密な魔法陣が書いてあるのだ。天井や壁、窓にまで書いてある。尤も無色であるから魔力の流れだけでしか判断出来ないが」


「ははは……」


 笑うしかない。

 これらの家具は普遍的なものであるから本来の召喚術における消費魔力はそこまで多くない。とは言っても日常的に使う量にしては依然として多い。


 しかし当時のセルマスクの人はこの召喚術を意図的にレベルを下げて消費魔力を減らし、さらに部屋中に魔法陣を書く事で1日中召喚し続けるまでにしたのだ。

 それを行う召喚術や魔法陣に対する知識はかなりのものであり天才と呼ばれるものなのであろう。


「そうは言っても~、欠点はあるんですよ~」


「術式と言うのは時間とともに劣化するものだからな。魔法陣の経年劣化は毎年修復しなければならない」


「しなくても構わないのですが~、1度味をしめると中々便利なんですよね~」


「でしょうね」


 はっきり言って発明である。

 恐ろしいものが生徒会室にあったものだ。


「では~、本題に入りましょうか~」


 仕切り直しと言わんばかりにリア会長はお茶を飲む。


「そうですね」


 オレもお茶を飲んでカップを置き、リア会長とキオ副会長を真っ直ぐ見つめる。


「魔法と殺意の関係について教えて下さい」

キオ「次回、説明回」

リア「よろしくお願いしま〜す」

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