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魔法学校の表事情と裏事情  作者: アウラ
5.明日来る春の嵐を避ける方法
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5限目 空が青い理由を知ってますか~?(その2)

 あれから無事門限に間に合う事が出来た。カナミがへとへとになっていたのは言うまでもない。


「今日は起こさなくていいか」


 寝ているシガルは起こさないでオレは着替えて朝食を摂りに部屋を出る。


 戻って来てもまだ寝ていたのでいつ起きるのか授業に間に合う時間まで部屋にいたが、一向に起きず部屋を出る際に叩き起こしておいた。






「あ、シロンくんおはよ」


「おはよう」


 早速カナミが挨拶をする。

 そして一瞬だけ睨むサイフォン。


 これから毎朝この一連の展開をやらなければならないのか。

 あ、もう1つあったな。


「今日は遅いのねシロン」


「おはようフェル」


 フェルには毎朝絡まれているように思う。


「おはよう」


「遅かったのはただルームメイトと巫山戯ていたからだ」


「ふーん」


 フェルは訊いてきた割には興味がないと言った感じで席に戻っていった。


「シロンくんとフェルさんの関係ってなんか不思議」


「同感だ」


 転校初日にオレとは知り合いだったと周りに見せてるからだろうか、まだ慣れない学校生活を支える役の役をオレにさせているのだろう。


「あまり巻き込まないで欲しいのだがな。面倒だ」


「またそればっかり」


 ただでさえセルマスクと言う厄介事を引き受けてしまったのだからこれ以上面倒な事になりたくないのだ。


「でもシロンくん、セルマスクに入ったんだよね。どうして?」


 思ったそばからカナミから質問がくる。


「……条件的敗北」


「よくわからない」


「オレもよくわからないのだけどな」


 思い返せば今回の一連の流れは全てリア会長の掌の上での事であった。


 真意は依然としてわからないが、オレを試した結果何かが合格してセルマスクに入れたのである。

 彼女なりにはオレの意思を尊重したつもりなのだろうけど、どう転んでも断る選択肢はなかったと思う。


「シロンくんってなんだかんだ言ってお人好しだもんね」


「……うるせぇ」


 カナミは的を射た答えを何の躊躇いもなく言う。


「そこがシロンくんのいいところ」


「ところでカナミは今年も風紀委員なのか?」


「あ、話逸らした」


「いいだろ!」


 昨日今日と言いカナミがやけに積極的である。理由は考えない。


「全てはケーキのため」


「前はケーキ嫌いだったくせして今はケーキ好きなんだな」


 風紀委員の特典の1つに学校内のカフェのケーキが貰える。他にも成績特典があるがカナミは成績より甘味の方を優先するようだ。


「気にしない気にしない。あ、シロンくん今年もよろしくね」


「……」


 今年も手伝わされるようだ。


 授業の開始を知らせるチャイムが鳴る。

 それと同時に教室から先生が入ってくる。


「よし、授業を始めようか」


 見た事のない先生であった。

 長身で山吹色の長髪を後ろで一括りにしたメガネを掛けた男のオレから見てもイケメンである。


「あぁ、このクラスでの授業は初めてだったね。ボクはネフカス、前任の治癒魔法学の先生の後釜ってやつだね。ここに来る前までは魔術病院にいたからエキスパートだとは自負してるよ。ボクは自己紹介が苦手であまりぺちゃくちゃ喋れないんだけど質問があったら答えるけど、あるかな?」


「「はいはい!!」」


 世の常なのか、こうもイケメンだと女子と言うのは騒ぐもののようだ。


「じゃあそこの窓側のお嬢さんから」


「あ、あの、ネフカス先生は結婚してますか?」


(頬を赤くしながら訊く質問がそれかよ)


 と、心の中で突っ込みながらネフカス先生を見る。


「残念ながらまだ未婚だよ。家族にはそろそろいい相手を見つけろって言われるんだけどね。他にはあるかな? あ、そこの1番後ろのお嬢さん」


「好きな人のタイプはなんですか!?」


 最早突っ込む気もない。


「困ったな。素敵な女性、としか答えられないな」


「好きな食べ物はなんですか?」


「どこに住んでるんですか?」


「お昼一緒に食べませんか?」


 ついに質疑応答の型式が崩れ質問攻めとなる。最後のは質問ではないような気はするが。


 いよいよどうでもよくなってオレはカナミの方を見る。


「~♪」


 仮にも授業中だと言うのに鼻歌を歌いながらケーキの絵を描いている。


(さっきケーキの話をしたからだろうな)


 ちなみにサイフォンは寝ている。


 フェルの方を見てみれば、フェルも興味がないのか教科書を読んでいる。


(そう言うものなのか)


 何がとは言わないがそれが道理であるならばオレも従おう。


 即ち寝る。






 昼休みである。


「よし、昼だ。行くか!」


 我ながら珍しく授業終了前はしっかり起きていた。


「どこに行くの?」


「例によってセルマスクの打ち合わせ」


「あ、お昼終わったら集会だもんね」


「そう言う事」


「最近シロンくんとお昼食べてない……」


 あからさまにしょぼくれるカナミ。


「明日は大丈夫だと思うんだけどな」


「約束」


 すぐさま指切りのポーズになるカナミである。


「約束は出来ないな。明日も昼に集まるのかもしれない」


 あれ? そう考えるとセルマスクって思ったより忙しいのかもしれない。


「約束」


「……今言ったよな?」


「約束」


 頑なにカナミは同じ言葉を言い続ける。


「あーわかったよ。約束する」


 そうやってオレは折れるのである。


「指切りげんまん」


「じゃあ行ってくる」


「明日」


「わかってるって」


 しつこ過ぎるカナミに苦笑しながらオレは教室を出る。


 すると――


「しーろーろーん!!」


「げっ!」


 オレは即座に走り出す。


 理由は2つ。

 捕まったら死ぬ。

 もし生きてても遅刻してリア会長達に何言われるかたまったものではない。


「廊下は走っちゃいけないって習わなかったー?」


「ハナ姉にだけは言われたくないって!」


 後ろから追いかけてくる金色の災害ゴールデンディザスター――ハナ姉。


(取り敢えず生徒会室に着けば勝ちである)


 学校内の魔法の使用は禁止されていない。もちろん度が過ぎればダメであるが身体強化魔法くらいはありである。


 曲がり角を曲がったところでオレは身体強化魔法を両足に掛けてさらなる加速をする。人がそこそこいるがこれくらいなら避けつつ走れる。


「そっちがその気なら!」


 調度ハナ姉も曲がり角を曲がり直線の廊下となったところで加速する。


「嘘だろ!?」


 考えてみればおかしい事でもない。魔法なしで人間辞めてるぐらいに加速しているのだ。それが魔法というブースターがあれば想像は難くない。


 だがそのような事を考える余裕がない程にハナ姉は加速してオレに迫る。


(右手でオレを掴む)


 そう確信してオレは進行方向左に避けるとそこにはハナ姉の右腕があった。


「あ、避けるの禁止!」


「禁止じゃねーよ!」


 加速が終了して速度が安定したところで階段を登る――と言うより跳ぶ。

 踊り場まで一歩で登り、手すりで方向転換し再び跳ぶ。


(このまま直進すれば生徒会室だ……!)


 しかし安心は出来なかった。


 オレは急ブレーキを掛ける。


「うっそだー!」


 呆れてそれ以外何も言えない。


「甘いよ、しろろん」


 何故かハナ姉に抜かされていた。

 正確にはオレの目の前にハナ姉が降ってきた。


「どうやって……?」


 検討はつく。だが俄に信じ難いのだ。


「どうやってって、踊り場の壁を蹴ってそのまま天井走ってしろろんを跳び越えただけだよ」


「壁キック……天井走りって……」


 本当にこの人は人間なのだろうか?


「さぁ諦めてお姉ちゃんと遊ぼ?」


「断る!」


 オレは限界までに身体強化を施してハナ姉のサイドを抜けようとする。


「あたしを通り抜けようだなんて2年早いんじゃない?」


 重心を右に傾けて左に加速する。

 いずれもフェイントである。


「右も左もダメなら上だー!」


 オレは跳躍する。


「だと思ったよ」


 既にハナ姉は両手を挙げて跳び上がっていた。

 このままではオレは間違いなく捕まる。


 だからオレは右手を下げて跳んだのだ。


拘束魔法(バインド)!)


 魔法は発動してハナ姉に――ではなく右手と床を結びつける。

 これによりオレは急速に落下する。


「え……?」


「右でも左でもない。かと言って上でもない。答えは下だ!!」


 着地してすぐさま加速してスライディングで抜ける。


 宙に浮いたハナ姉ではオレを捕まえるのは不可能だ。

 通り際に黄色が視界に写ったのは気のせいにしておこう。


「じゃあオレはセルマスクの打ち合わせあるから!」


 そうしてオレは生徒会室に入る。

 部屋の中にはノトさんがいた。


「あら、誰かと思えばあなたでしたのね」


「オレで悪かったな」


 来て早々悪態をつかれた。


「あなた、私様にお茶を淹れてきてください」


「は?」


「2度も言わせないで欲しいですわ」


「なんでオレが」


「あなたの序列は5位。3位の私様に尽くすのは当然の事でしょう?」


 理不尽である。

 大体昨日から思っていたが“私様”とはなんだ。正しい一人称なのか?


「早くしてもらえません事?」


「……わかったよ」


 現状オレはこの金髪ドリルツインテより下の立場である。

 仕事で命令されるのは仕方なくても下僕的扱いには流石のオレでも怒る。

 だがまだ2日目なのである。ここでオレが不満を言って軋轢を生むのはよくない。

 結局全体的な流れを円滑にするべくオレが折れたのだ。


 男貴族であるからと言ってお茶を淹れられなくはない。もちろん女中などその手の人達と比べたら雲泥の差だが。


「はいよ」


「感謝しますわ」


 どうやら最低限の礼儀ぐらいはあるようだ。なかったら文句が言えたものではあるのだが。


 どうもノトさんはギリギリ正当性のある事を言って反論させない人なのかもしれない。


「まぁまぁですわね」


「別にいいだろう」


 しばらくしてイリューとアクィナが来る。


「こんにちはっす」


「こんにちは」


「こんにちはですわ」


「よう」


 何故ノトさんはオレの場合だけ態度が違うのだ。いや、わかるけど。


「会長達はまだっすか?」


「どうしたんだろうな」


「ノトさんは何か知ってますか?」


「知りませんわ」


 これまたしばらくしてノトさんがお茶を飲み干した辺りで最後の2人がやって来る。


「ごめんなさ~い。別件で遅れちゃいました~」


「事前に連絡を入れるべきだったなすまない」


「リア様方が謝る必要はございませんわ」


「そうっすよ」


「早くシャキーンとやりましょうよ」


 3人からフォローが入る。

 流石、慕われてるだけある。


「そうですね~。ではこの後の流れを説明しましょ~」


「どうせ私なのだろ?」


「もちろんそうよ~」


「はぁ」


 溜め息をつく苦労人キオ副会長。


「では説明するぞ。この後大講堂に全校生徒集まる。君達には混雑が起きないよう上手く誘導してなるべく速やかに全員の着席を完了させて欲しい。その後、私が進行として会を進める。しばらくしたら壇上で適当に短く自己紹介してもらう。会が終わり次第会場の片付けをして終了だ」


「思ったより地味っすね」


 昨日リア会長が言った就任式の準備から片付けまでをするだけである。


「いつも派手に行動してる訳ではないのですよ~」


「陰に日向に活動してるのですわ」


「そうなんっすか」


「就任式は~、私がセルマスクの一員になったけど文句あるか~って言うものなので~、がんばってくださ~い」


「「「………」」」


 オレやイリュー、アクィナの男組は黙る。


 要はセルマスクに入りたかった人に喧嘩を売るのだ。


「全校生徒が納得しなければ活動に支障をきたすのでな」


「そうは言われても……」


「ま~嘘ですけどね~」


「「「え!?」」」


「それでは行きましょ~」


 終始振り回されてオレ達は大講堂へ向かう。

ゴールデンディザスター・ハナ

何だこの厨ニ臭は……!

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