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魔法学校の表事情と裏事情  作者: アウラ
2.赤服白髭おじいさんの見つけ方
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7限目 赤鼻のトナカイはソリを引く

 魔戦が終わり、今日は学校の修了式であり、ちょうど終わった頃だ。


「結局オレが解決した訳じゃないんだよなぁ」


「ぼやいても意味ないよ」


 カナミはご尤もな事を言う。


 あれから目を覚ましたのは保健棟で、である。

 大怪我こそなかったが精神的には傷ついた。


「まさかスモン先生がな……」


 仲の良い先生だっただけに本当に残念な話だ。

 気絶してから起きた後、ハナ姉が来て事を全部話してくれた。その後予感はしていたがボコボコにされた。


「でもハナお姉ちゃんすごいよね。1人で2人も倒しちゃうなんて」


「治癒魔法専門と大規模召喚術使用中の先生だろ? ハナ姉なら倒せなくないんじゃないか?」


 なんでもオレが気絶した後、ハナ姉がエリッセ先生を倒して召喚中のスモン先生も倒したらしい。絶対にハナ姉と魔法ありで戦いたくない。

 現れた巨大怪物はセルシアの実験として扱われて注意指導と始末書で終わったらしい。誰かが根回ししたのだろうな。


「とにかくわたしはシロンくんがこうして元気で何より!」


 カナミは笑顔で言う。


「オレの気も知らないで何言ってるんだか……」


 オレはそんなカナミに呆れて返事をする。


「ところでねぇ知ってる?」


 カナミが話題を変えてくる。


「何を?」


「修了式の日にね、赤い服を着た白い髭のおじいさんが大きな袋を背負って学校を歩いてるんだって」


 伝説の人物を模した人は今日が活動日らしい。


「それでね、出会うと好きな物をもらえるんだよぉ!」


 カナミの好きな物、それは……


「シロンくん! ケーキを貰おう!!」


 結局このオチになるのか。だがオレは笑う。


「わかったよ」


 こうして赤服白髭おじいさんを探す事になる。とは言ってもオレはその正体が誰かを知っているから当たりをつける事は出来る。


「どこにいるかなぁ」


 カナミはもう赤服白髭ケーキの事で頭が埋まっているようだ。


「さぁね」


 取り敢えず職員室とかそっちに行ってみようかと思う。


 思えばスモン先生とエリッセ先生はどんな関係だったのだろうか。

 ハナ姉はスモン先生がエリッセ先生にべた惚れしていたとか言っていた。

 スモン先生の家族関係がどうなっているかは知らないが少なくとも白髭おじいさんと栗色の長髪美人とでは不釣合いと言うか成り立たないと思う。もちろんエリッセ先生の趣味が常人と違う可能性も否定出来ないから何も言えない。


「いないよぉ」


 スモン先生は魔戦最終日に逮捕、エリッセ先生は魔戦の翌日に退職しているから2人とも魔戦が終わってからいないのだ。

 事件とはあまり関係のない事だがそう言う事はやはり気になる。


 それに謎は多い。

 リボンの解除キーの入手経路やエリッセ先生の妹さんについて。

 解除キーは今でもスラム階側とコンタクト出来れば手に入れられるだろう。だが妹さんについては王宮を疑わなければならない。

 どちらにせよ手の出しようのない問題だ。


「次どこに行けばいいかなぁ」


 そもそもオレに見つからなかったらあの2人は事が上手くいったのではないのだろうか。オレを使おうとして使いきれなかった節がある。

 オレが知らなければ魔戦から戻ってきたら学校がない、と言う状況になるからだ。何もオレを証人にしなくていい筈だ。

 そこら辺、おかしい気がする。


(まるで止めて欲しいかったようじゃないか)


 結局解決したが真相はわからずに終わってしまった。


「シロンくん!!」


「なんだよさっきから」


 聞こえてはいたが考えをまとめるのに集中させて欲しい。


「どこに行けばケーキ食べれる?」


「……」


 目的はケーキ一筋、赤服白髭おじいさんなんてどうでも良さそうだ。


「特別棟じゃないか?」


 オレ達は特別棟の召喚術書庫室に向かう。

 案の定、ハーラ先生はいる。


「失礼します」


「赤服白髭のおじいさんだぁ! ケーキ! ケーキ!」


「け、ケーキはあったかのう……。ほれ、これでどうだい?」


 おじいさん口調に思わず笑ってしまう。


「ありがとだよ!」


 カナミは大喜びしてその場で食べ始める。


「シロン、調子はどうだね?」


「2人も先生がいなくなりましたから……」


「そうか……。まぁこの冬はゆったりしたまえ」


「はい」


「これはプレゼントだ」


 そう言ってハーラ先生はオレにとても小さな薬瓶をくれる。


「これは一角獣の角を粉状にしたものだ」


「消えないって事は……」


 召喚体は一部だとしても魔力が尽きれば消える。召喚術が第五型式と言われる所以だ。


「本物の一角獣の角の粉だ」


 幻獣と言われる存在でもいると言えばいる。かなり特殊な状況だから一概に説明出来ないけど。


「ちなみにこれだけで家が建つ」


「うわ……」


 すさまじい物をプレゼントされたようだ。


「まぁシロンは命の恩人だからな」


「大切にします」


「困ったら遠慮なく使いなさい。絶対に1人は助けられる薬だ」


「はい」


 ここで1つ思い出す。


「ハーラ先生」


「なんだ?」


「専門でなくとも専門並みに魔法が出来る人ってこの学校にたくさんいるんですか?」


「まぁスモン先生がそうだったようにいなくはないな。珍しい」


 ハーラ先生は付け髭をなぞりながら答える。


「ありがとうございます。失礼しました」


 こうしてオレとカナミは特別棟を後にする。

 カナミはさっきのケーキで満足したようだ。今日は奢らなくて済む。


 上を見ると赤服白髭おじいさんが赤鼻のトナカイに乗って空を走っている。


(先生、赤鼻のトナカイはソリを引くんです……)






 さらに日は経ち真冬の真冬だ。

 オレはとっくに実家に戻って2ヶ月に渡る冬休みを満喫している。

 冬は寒すぎて活動出来ないから学校はないのだ。次は冬明け、春からだ。


「シロン様にお客様です」


 メイトナス家に仕えるメイドがオレに伝える。


「誰?」


「エリッセと伝えてもらえばわかると仰っていました」


「え……? ちょっと行ってくる!」


 寒すぎて外に出れないと行ったがこの場合、出ざるを得ない。


「客間にお呼びいたしましょうか?」


「その必要はないです」


 急いで極寒に耐えれる服装になって玄関を抜けて門へと辿り着く。


「お待たせして申し訳ありません」


「いえ、いいわ」


 エリッセ先生はいつもの微笑みでオレに挨拶をする。


「中に入れる訳にはいかないので厳しいと思いますけど外でもいいですか?」


「外の方が人がいなくていいわ」


 指名手配はされていなくても行方不明者として捜索されているためエリッセ先生は絶賛逃亡中である。見つかればこの前の一件がバレてしまい今度は捕まる。

 それにエリッセ先生を家に招き入れる義理はないと自分でも思う。


 向かった先は花園フラワーパラダイスだ。


「前から思ってたんですけどスモン先生とはどんな関係だったんですか?」


「あら、まず1番にそれなの? どうして私がシロン君のところを訪ねたとか訊かないの?」


「ボクの予想では――」


 オレはエリッセ先生の言葉を無視して話す。


「エリッセ先生がスモン先生をたぶらかしたのではないかと思ってるんです」


 ハナ姉の話からでしかわからないが明らか一方的なもののように感じた。少なくともエリッセ先生がスモン先生を好きだと思っているようには思えない。


「そうね、その通りよ。私がスモン先生を体で誘ったわ」


「どうして……」


「学校を破壊すれば妹を開放すると言ってくれた人がいるの。私が壊しても釈放されたあの子を誰が引き取るのかしら。だから私が直接する事は出来ないわ」


「だからスモン先生を使った……」


「えぇそう。たまたま私はスモン先生が第一型式以外にも召喚術に長けている事を知っていたわ。ハーラ先生には申し訳ないけどスモン先生が実行してくれるには捕まるリスクを最小限にする必要があったの」


「濡れ衣を着せてどうにかなると思ってたんですか?」


 やり口が最低である。


「思ってたわ。シロン君がいなければね」


「あの時、寮で誰かに見られるようにしたんじゃないんですか?」


 予想ではオレを証人にしようとした、である。


「違うわ、あの時はスモン先生にご褒美……と言えばいいかしら、それを与えていた最中だったの」


 寮裏で何をしているんだ……。

 エリッセ先生に憧れを持っている男子生徒がこれを聞いたらどうなるのだろうな。


「それは見つかったら焦りますね」


 咄嗟の判断でオレに攻撃してしまった。幸いにも第一型式ではなく召喚術でしたからオレを利用する事にしたのか。


「ホント、最大のミスね」


「大きなミスはそれだけではないですよ」


「え?」


「利用出来ないと思ってもオレを殺さずそれでも利用しようと思っていた事です」


「フフ、そうかもしれないわね」


 エリッセ先生は少し驚いたように笑う。


「結局は人殺しなんて私には出来ないのよ」


「簡単に人を殺すような奴は人じゃなく悪鬼ですよ」


 誰もいない学校を壊すのだってそうだ。この人は本当は善人なのだ。ただある人を救うために自分を捻じ曲げている。


「今日はね、シロン君にプレゼントを持って来たの」


「はい?」


「まずはこれよ」


 渡されたのは茶葉である。


「覚えてる? あの時のおいしいお茶よ」


「毒は入ってないでしょうね……」


「入ってないわよ、失礼ね」


 エリッセ先生だったらやりかねない気がする。


「それとこれは私の形見として」


 エリッセ先生はペンダントを外してオレに付ける。


「先生……」


「私は諦めてはいないわよ。妹を助けるために戦い続けるつもりよ。今度は私も汚れる覚悟でね」


 誰かを助けるためにそこまで出来るのだろうか。間違えているとわかってても出来るものなのだろうか。


「あなたにもわかるわ。いつか本当に守りたいと願える人を見つける」


 エリッセ先生はそんなオレの心を見透かしたように言う。


「それとこれは魔戦で勝ったご褒美よ。本当はBクラスのみんなにプレゼントする筈だったんだけど」


 そう言ってエリッセ先生はオレの頬にキスをする。


「え……!?」


「きっと今度こそ会う事は2度とない筈よ」


 頭の中が真っ白になってはいるが元に戻そうとする。


「し、シガルがご褒美貰えなくて残念がってましたよ」


 話を戻すあたり混乱しているのがよくわかる。


「あげたくてももう出来ないわね。Bクラスのあの子達も立派になって欲しいわ」


 エリッセ先生は残念そうに言いながらも微笑んでいる。


「そろそろ行くわ。寒い中付き合わせてごめんね」


「いえ……」


 極寒の雪空の中、痛みを催す風が吹く。


「それじゃあね」


 それはエリッセ先生がよくする大人の微笑みではなく、少女がするような笑みだった。


「次もあなたの邪魔をします」


 エリッセ先生は何も言わずに去って行く。

 栗色の長髪がなびく。

 吹雪ですぐに姿が見えなくなる。

――負けないわ

 そんな声が響いた気がしたのは決して勘違いではないのだろう。


 オレは頬を押さえながらエリッセ先生の後を追うように花園を後にして実家へと向かう。もちろんエリッセ先生に会う事はない。


「次こそ勝つ」


 オレは誰に言う訳でもなく一人つぶやく。


「はっくしょん」


 それにしても寒い。風邪を引かないためにも急いで帰ろう。

第2章完結です。

今回のサブタイトルは色が共通点でした。

それにしても……新緑の疾風さん、一体何者なんだー!?(笑


ハナ視点ですが彼女は本来は考えるのが苦手なので知ってる事や考えついた事は語りません。

シロン君だけが無駄に細かく考えているのです。

理屈的ですね(笑


第3章は3月末時点ではプロットが完成してません。

シロン君にも見せ場がそろそろあってもいいのですが彼、かなりのハンデを背負って戦ってますからね(笑


学校も始まるためしばらく期間が開きますが、次章もお読みいただけると至福です。

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