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King of Light  作者: 蒼井七海
プロローグ
1/89

光と闇の定(さだめ)

 赤い空の下で、真っ黒い影がゆらゆらと揺れる。

「――来たのね、エイン」

 何もかもがなくなった大地で、君は艶やかに笑った。

 思い出の時代と、なんら変わらないように。

 穢れを知らぬ、無垢な少女のように。

 君に、俺は問うた。その問いに、君は答えなかった。

 答えぬままに、君はほほ笑み続ける。

 ほほ笑んだまま、しなやかな両腕を掲げた。

 だから俺は、君に剣を向けた。


「どうしてここへ来たの?」

 あなたの静かな問いは、私の胸を強く突いた。

 大好きだった、翡翠色。

 昏い光を湛えたあなたの両目を見つめ、私は唇を引き結ぶ。

「僕は、あなたを巻き込みたくなかった」

 そう言うあなたの声は、今にも泣きだしそうな子どものようで。それがまた、私の体の奥にある何かを揺さぶった。

 でも、だからこそ――ここで引き下がるわけにはいかない。

 だから私は、あなたに五指を向ける。


 土煙が立ち昇り、怒号と轟音に満たされた大地。そのただ中で、彼女は口の端を吊り上げた。

「本当に出てくるなんて。お馬鹿な天使様ね」

 鮮やかな花のような声が紡ぐのは、彼への言葉だ。

 わかりやすい嘲弄。それに対し、彼は肩をすくめる。

「俺もそう思う。けどこうするよりほかにないんだよ、どのみち」

 彼女はくすくすと笑う。非の打ちどころがない、ゆえに不気味な美貌を、彼はいつもの調子で見つめ返した。

「それに、『馬鹿な天使様』はお互い様だろ?」

 そうして広げた手のひらに、白い光が灯る。


 時は流れ、血は続き、力は継がれる。

 そしてそのたびに、戦いは繰り返された。

 いつから定められたことなのか――その答えを持っているのは、きっと始まりの二人だけだ。


「わたしは、終わらせたいのです」

 差し出される白い手。

 ほほ笑みもしない少女。

「そのために、壊さなければならない」

 その言葉にどう応じるのが正しいのか、『俺』にはまるでわからない。


 幾星霜、続いた争いの果て。

 運命の鎖の先っぽに触れた『俺たち』は――果たして何を選び取るべきなのだろう。

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