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追放された王太子と公爵令嬢が冒険者になる話  作者: 埴輪庭
第三章

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第66話 起点

下記URLはHTMLで作成した内容をクラウドフレアにデプロイしたものです。まあ雰囲気を出すために作成しました。


(0412NEW)第66話のヴィジュアルノベル

https://hiyoku-ep66.pages.dev/

 

第65話のヴィジュアルノベル

https://hiyoku-episode65.pages.dev/


第64話のヴィジュアルノベル

https://hiyoku-episode64.pages.dev/


ファタ・マ・サノー男爵による辺境魔獣生態誌

https://hiyoku-majuu-zukan.pages.dev/


イーノ・タランタッカ著「大陸記」

https://hiyoku-tairiku-ki.pages.dev/


第63話のヴィジュアルノベル

https://hiyoku-episode63.pages.dev/


キャイバーラ・ヘンケン著「調和論」

https://chouwaron.pages.dev/


南街道の旅のしおり(マルディンから帝都)

https://hiyoku-shiori.pages.dev/


ウェザリオ王国史観

https://weatherio-historia.pages.dev/


フランシス・セラ・アンブルームによる万粒論

https://manryuuron.pages.dev/



 ◆


 門だけで首が痛くなるとフェルディスは言っていたが、シャールは流石にそれは誇張だろうと思っていた。


 誇張ではなかった。帝都の南大門は、シャールがこれまでに見たどんな建造物よりも大きい。白い石の柱が左右にそびえ、その頂きに鷲の紋章を戴いたアーチが架かっている。門の高さはゆうに五階分はあるだろう。門扉は開け放たれたままで人と馬車と荷車が絶え間なく出入りしており、巨大な獣が息をしているかのような光景であった。


 フォルカの渡しを越えてから二日。


 帝国の舗装街道はルッツが誇った通りの見事な出来で、石畳の隙間なく敷き詰められた道を馬車は揺れもせずに走る。


 道中ヴォルフとエルザが終始同行してくれたことは幸いだった。エルザとセフィラは薬草の話が尽きぬ様子で車上で語り合い、ヴォルフはシャールの隣で時おり「あの丘の地層は面白い」だの「あの川底の石は鉄鉱の近さを示しとる」だのと呟く。老学者の目には風景が地質図として映るらしい。


 門の脇に里程標が立っている。


 白い大理石の角柱だ。南街道で幾つも見てきた帝国規格の石柱と形は同じだが材が違う。四面に刻まれた文字と鷲の紋章には金の象嵌が施されていた。


「帝都まで零レグア」


 セフィラが角柱に歩み寄り指でその刻字をなぞった。


「ルッツさんが仰っていたのはこれですわね。帝国のすべての距離の起点」


「ああ。ここから始まるわけだ」


 ◆


 シャールが二人分のロート銀貨を差し出すと、門番は退屈そうに受け取って顎でしゃくった。


 門をくぐると音が変わる。


 石畳を打つ無数の靴音と蹄の音が建物の壁に跳ね返り、低い唸りのように耳の底へ沈んでくる。荷車の車輪が石を軋ませ、遠くでは鍛冶の鎚が鉄を叩いている。その上を売り子の声が泡のように浮いては消えていった。


 ラスフェルの雑踏とは質が違う。あちらは人の声が主旋律だったが帝都では石が、鉄が音色を奏でている。


 大通りは馬車が三台並んで通れるほどの幅があった。


 石壁の建物は三階建てが標準で、要所には四階五階のものがそびえていた。一階部分には商店が軒を連ね、仕立屋に武具屋に両替商に食糧品店と品揃えはどれも豊かだ。ラスフェルはおろか、ウェザリオ王国の王都より発展している様にシャールには見えた。


 通りを行き交う人々の顔ぶれもが多彩だ。商人と職人と兵士。学者のローブを纏う者に武装した冒険者。やけに耳が尖っている陶磁器の様な白い肌の麗人もいれば、褐色の肌の見上げる様な偉丈夫までいる。さながら人種のるつぼといった所か。


「何というか──圧倒されてしまいますわね」


「ああ……」


 二人は十分な教育を受けてきたはずだが、この時の語彙力は貧弱と言わざるを得なかった。まあ無理もない、故郷であるウェザリオとはあらゆる点でスケールが違っていたのだ。勿論古めかしいウェザリオ王都にも良い点は沢山あるし、帝都とて誰もかれもが繁栄を享受できるというわけではあるまい。この世界のどこにでも光と闇はあり、それは帝都も例外ではないと理屈ではわかっている。


 しかし。


 それでも。


 この時ばかりは帝国の威光とやらに、二人の視界はやや焼かれてしまっていた。


 ◆


「さてと」


 ヴォルフが足を止めたのは大通りから東に分かれる通りの角だった。石畳の色がわずかに変わっている。通りの奥に尖塔が幾つか覗いていた。


「儂らはこちらだよ。学院はあの尖塔のあたりでね」


「三日間、お世話になりました」


 シャールが頭を下げた。セフィラも深く頭を下げる。


「ところでお若いの。帝都の宿はもう決めておるかね」


「いえ。ギルドの近くで適当な所を」


「ギルドの辺りはね、坑夫向けの安宿が多くて壁が薄い。夜も騒がしいよ。お連れさんには向かんだろう」


「あなた。紹介するならさっさとなさいな」


 エルザが脇腹を肘で突く。ヴォルフが肋骨を押さえて身を捩じった。


「儂の教え子がやっている宿があるんだ。学院の北通りにある赤楡亭(あかにれてい)という」


「学者や学院のお客さまがよく使う宿ですよ。静かで清潔で食事もおいしいの」


 エルザが補った。


「値は多少張るがね」


 ヴォルフが大通りの脇の石段に腰を下ろした。懐から便箋と携帯の筆記具を取り出し膝の上で紙を広げる。


「紹介状があれば融通も利くだろう。船では世話になったしのう。貫き鳥を追い払ってくれて助かったよ」


「それだけじゃないですよ」


 エルザが言い添えた。丸い眼鏡の奥の目がセフィラに向いている。


「お嬢さんの学問への姿勢を見ていたらね、つい手を差し伸べたくなるの。老人の道楽だと思ってちょうだいな」


 ヴォルフが二通を書き上げて差し出す。


「こちらが赤楡亭宛て。もう一通は学院書庫だ。エルザが約束していた分だね」


「書庫のほうは第二書庫と第三書庫の両方に通るようにしておきましたよ。司書に見せればすぐに入れます」


「ありがとうございます」


 セフィラが両手で紹介状を受け取る。


「何かあったら儂の名前を出しなさい。ヴォルフ・ヘッセンで通る。書庫の司書には顔が利くからね」


「重ねてありがとうございます」


 ヴォルフがゆっくりと立ち上がり棒を突いた。


「帝都は広いが悪い街じゃないよ。悪い人間はいるが──ま、それはどこも同じだろう。ではまた会おう」


「ええ。お世話になりました」


 二人の後ろ姿が学院区の通りに小さくなり、やがて人の流れに紛れて見えなくなる。


 ◆


 赤楡亭は学院の北通りの東寄りにあった。


 石造りの三階建てだ。入口の脇に大きな楡の木が枝を広げている。春の若葉が芽吹き始めたところで秋にはこれが赤く染まるのだろう。看板は木札が一枚あるだけで飾り気がない。客を呼ぶ必要のない宿は看板に金をかけないものである。


 扉を開けると帳場に恰幅のいい男が立っていた。


「お泊まりですか」


「ヴォルフ・ヘッセン殿の紹介なのだが──」


 シャールが紹介状を差し出す。男は目を通し、一つ二つとうなずく。


「ヘッセン先生のご紹介でしたか。ミミズがのたくっているようなこの酷い……余りにも酷い筆跡は間違いありません。早速お部屋をご用意いたしますよ。お値段もまあ据え置きで──」


 提示された額は想像していたよりずっと安い。というより、ラスフェルの宿より安いくらいだ。


「ちなみに、もし紹介状がなければどれくらいの宿代になったのだろうか」


 シャールが興味本位で尋ねると、男はにやっと笑って「知らない方が良いでしょう」とだけ答える。


 シャールとセフィラは顔を見合わせるばかりだった。


 ◆


 案内されたのは三階の角部屋である。


 まず、広い。白い漆喰の壁に木の調度品が配され窓が二面ある。南の窓からは帝都の屋根並みが見渡せる。赤い瓦と白い石壁が夕陽に照らされて橙色に輝いていた。東の窓には学院の尖塔が視界をまっすぐに貫いている。


 寝台はラスフェルの宿の倍はあるだろう。机と椅子と衣装箱が壁際に並ぶ。簡素だが隅々まで手の行き届いた部屋だ。


「湯殿は奥でございます。お申しつけいただければ湯を用意いたします。お食事は一階の食堂にて朝夕二食でございます」


 男が退室した。


 セフィラは真っ先に南の窓へ歩み寄る。


「随分とよいお部屋ですわね」


「ヴォルフ殿の名前の力だろう」


「ええ。でもこの眺めはお部屋の力ですわ」


 シャールは荷を床に置き寝台の端に腰を下ろした。肩から重さが抜けた途端に五日分の疲労がまとめて押し寄せてくる。


「帝都ですわね」


「ああ」


「帝都ですわ」


「二度言ったぞ」


「二度言いたかったのですもの」


 セフィラは窓辺で微笑んでいる。夕陽が亜麻色の髪を金に染めていた。

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自作の長編と短編を宣伝。長編は大体ブクマ1000~1500くらいのやつ。短編は直近二ヶ月で書いたやつをポイント降順に。

【長編】

アステールの血を引く者は魔術に優れる事甚だしく、特にハイン・セラ・アステールはアステール史上もっとも強大な魔力を誇る麒麟児であった。
"本来の歴史" では彼は傲慢で邪悪な典型的悪役貴族であったのだが、並行世界では一味違う。
いや、二味違う。
一味目は、彼が極度のマザコンだという点だ。
平行世界のハインもまた本来の歴史のハインと同様に邪悪なのだが、母への愛が魔と邪を覆い隠す。
勇者も聖女も元婚約者も、彼にとってはどうでもいいことだ。
ハインはただ母と静かに安らかに暮らしたいだけで、それを邪魔する者全てが彼の敵である。
では二味目はといえば、それは彼が本来の歴史のハインよりも遙かに強大な魔力を有し、遙かに強大な魔術を操るという点だ。
愛する母に格好いい姿を見せたいがために努力を重ねた天才──ハインに不可能はない。
「悪役令息はママがちゅき」

幼い頃、家に居場所を感じられなかった「僕」は、母の再婚相手のサダフミおじさんに厳しく当たられながらも、村はずれのお山で出会った不思議な「お姉さん」と時間を共に過ごしていた。
背が高く、赤い瞳を持つ彼女は何も語らず「ぽぽぽ」という言葉しか発しないが、「僕」にとっては唯一の心の拠り所だった。
しかし村の神主によって「僕が魅入られ始めている」と言われ、「僕」は故郷を離れることになる。
あれから10年。
都会で暮らす高校生となった「僕」は、いまだ"お姉さん"との思い出を捨てきれずにいた。
そんなある夕暮れ、突如あたりが異常に暗く染まり、"異常領域"という怪現象に巻き込まれてしまう。
鳥の羽を持ち、半ば白骨化した赤ん坊を抱えた女の怪物に襲われ、絶体絶命の危機に陥ったとき。
──目の前に現れたのは"お姉さん"だった。
「お姉さんと僕」

ライカード王国魔導部隊所属の魔導散兵である君は迷宮の調査探索中、怪しげなポータルを起動させてしまう。
気付いた時には一切見覚えのない風景が広がっていた。
迷宮であることは間違いないが、壁の質感、床の質感、空気の味なにもかもが違う。
未知の迷宮に飛ばされてしまったということなのだろうか。
君はいぶかしみながらも探索をすすめていく。
やがて出口が見えた。
踏み固められた街道、そよぐ木々、風。
なにより道の先にある都市はライカードのものではなかった。
そこは迷宮都市アヴァロン。
君はそこで冒険者として過ごすこととなる。
祖国ライカードへの帰還を夢見ながら
「ダンジョン仕草」

宇宙開拓時代の西暦3889年、ろくでなしの青年…君はとある大勝負に敗北する。
要するに賭けで負けたのだ。
しかし君には金もなければ家もない。
哀れ君は人身売買のブローカー経由で人体実験に参加し、サイバネ手術を受けることに。
体は機械化され、神経は拡張されるも、存在の違和感ともいうべき感覚に苦しむ事になる。
「人間に戻りたい!」
君はそう願い、再度の手術を受けるべく金を稼ぐことにした。
君が目をつけたのは「惑星開拓事業団」だ。
危険な惑星調査の仕事は金になる。
命の危険もあるが、なに、機械の体がなんとかしてくれるさと君は軽く考える。
「★★ろくでなしSpace Journey★★(連載版)」

【短編】

剣士カイトは勇者アルヴィンから追放を告げられた。
そして──!!!!!!
「意識高い系勇者パーティから追放された俺の末路」

「愛している」——その言葉と共に、母の刃が私を貫いた。
過保護な母に命を奪われた絵里が転生したのは、乙女ゲームのような異世界。
伯爵家の令嬢エリスとして第二の人生を歩み始めた彼女を待っていたのは、お約束の婚約破棄だった。
「愛の温度」

ヘルナロウ王国では今、婚約破棄が流行していた。
頭の悪い婚約破棄は最悪である。
当事者たちだけではなく、周囲の者たちや国そのものにも被害を与えるのだ。
ヘルナロウ王国もまた、アホな婚約破棄のせいで被害を被っていた──国家予算の一割を吹き飛ばすほどの大被害である。
「この女は我が妹をいじめた」
「前世が聖女の令嬢に心を奪われた」
貴族の子息たちは次々と愚かな理由で婚約者を糾弾し、その度に決闘、自害、領地間の経済断絶といった惨事が続発する。
頭を抱えるのは宰相グラモン侯爵。
就任一年で彼の白髪は三倍に増えた。
国王も手をこまねくばかりだったが、王妃ヘルザベスがある提案を持ちかける。
──「令嬢たちに、正しい謀略を教えましょう」
講師は「影の女公爵」と恐れられる王妃の姉クロエを筆頭に、王国屈指の策謀家たちである。
「婚約破棄亡国論」

死者三十人超──熊が人を喰い荒らすA県で、知事・熊殺三太夫は「これは戦争だ」と宣言した。
だが都会からは「熊を殺すな」の大合唱。
現場を知らぬ理想主義者たちに知事はとある決断を迫る。
「熊が来る!」

世話焼き雑用メンバーを追放するいつもの話。
「いつもの追放もの」

太平洋戦争架空戦記。
「白い悪魔」

夕暮れの駅のホーム、今にも線路へ吸い込まれそうな女性に男は全力で体当たりを食らわせた。
男の名前は藤巻俊一。
いわゆる、「ぶつかりおじさん」である。
「感電」

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しかしそんな彼でも、さすがに国のあり方についていけないとへこたれてしまった!
その結果──
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一方の母もまた、幼少期から実父に性的虐待を受けてきたトラウマを抱えていた。
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かつて「人形のように退屈」とテリオンに婚約破棄された彼女は、実家公爵家による苛烈な『再教育』を経て、毒を以て毒を制す冷徹な謀略家へと変貌を遂げていた。
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冒険者パーティ『碧空の翼』の荷物持ちバジルは醜く無能な中年男だ。
そんなある日、彼は仲間に囮として森に捨てられた。
絶望の淵で彼が手にしたのは、若き美女へと変貌する奇跡の力であった。
復讐を誓ったバジルは美貌の魔術師「ジル」となり、かつて自分を見下した男たちの前に現れる。
何も知らない男たちは、かつて蔑んだ男とも知らず、彼女の愛を求めて争い、堕ちていく。
「無能な中年男、男をたぶらかす魔女となり、自分を捨てたパーティメンバーに地獄を見せる」

帝都ティランの会員制サロン「銀枝亭」に集った五人の貴族たち。
話題は庶民の間で流行する「婚約破棄譚」への痛烈な批判だった。
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呪いの動画を見てしまった。
私は一週間後に死ぬらしい。
でも大丈夫(?)。
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妻を癌で亡くして以来、男は自分が生きているのか死んでいるのかすら判然としないような日々を送っていた。
だが故人をAIで再現するサービスを知り、膨大な写真やメール、声の記録を入力して亡き妻を蘇らせる。
画面越しに再開した会話は空虚だった日常を少しずつ温かく満たしていく、が。
「電影」

ある日を境に、日本中で不可解な事故死が激増した。
一人でいると死亡率が跳ね上がる異常事態。
国民すべての運が急激に悪化したのだ。
かつて「他人と関わるな」が常識だった社会は一変し、人々は見知らぬ者同士で命を預け合うようになった。
「運の尽き」

あるところに女の子がいました。
女の子はもう死にます。
「光り、きらきら」

「私たち四人は対等なの」──女の提案で始まったのは、三人の男が一人の女を共有する異常な日々だった。
弁護士の真司は漁師の啓二、バーテンダーの了と共に、愛する妻・莉子と暮らしている。
かつては嫉妬に狂い、互いに殺意すら抱いた男たち。
しかし奔放な妻に振り回され、同じ苦しみを共有するうちに、敵同士だったはずの三人の間には奇妙な連帯感が芽生え始める。
「オープンマリッジ」
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