六話 お前達にはもったいない! 2
「待たせたな。始めようか」
「ああそうだな、兄ちゃん……それじゃあお前には、俺の女を奪った分と、俺の仲間を殴った分。その罰を受けてもらうぜ!!ガハハハハ!!」
そうして始まった、俺と盗賊の大将との戦い。
それは…………特筆すべきような事は無かった。
『やっと今始まったのに?』、『バトルシーンなのに本当に何も無いの?』などという意見があるのも分かる。
分かるが、仕方ないのだ。それでも無かったのだ。無いものは無いのだ。
だって、相手は確かに強者なんだろうが。相手は『国崩し』こと俺、アルス・アルキミアなのだ。むしろ特筆すべき事が無いくらいで終わったのを褒めてやりたいくらいである。
まあでも、流石にその一言だけでは可哀想かもしれない……それでは、簡単に事の次第を説明するとしようか。
まず、俺は周囲にいた大男の子分達を拳と蹴りによって蹂躙した。
理由は特に無い。ただ五月蝿いと言うだけで、例え加勢した所でそれが脅威とは決してならないからだ。だからまあ、強いて理由を挙げるとすれば『飛ばされる野次が耳障りだったから』となるであろう。
「……な、何!?」
次に、それを見た大男が上記したようにそこで初めて俺に恐怖したらしく、全員を打ちのめしたその隙を狙い……
正確に言えば『それを隙と勘違いし』、懐に忍ばせた魔具を取り出そうとしたのだが。
「ば、化け物が……!!く、喰らえ!!」
「おっと、そうはさせないぞ。ふむ、なるほど……これは『古代の杖』か。あまり質は良くないが、分解すれば『魔力水晶』となって使い道は増える。では有り難く頂戴させてもらおう」
「お、お前何を……な!?つ、杖が!?」
俺は素早くそれを阻止し、それどころか杖を分解して『魔力水晶』にしてやった。
ちなみに、その素材となった杖は後できちんと俺が回収しているぞ。
いやいや『本当は自分が欲しかったから』そうしたんじゃない、もったいないからだ。というか魔力も持たないコイツがそれを持っていた所で、碌に使いこなせないだろうからな。豚に真珠だ。
そして、最後に。
「まだやるか?」
「…………」
一応、まだ続けるのかと大男に問い掛けてみたのだが。彼は俺との実力差を今度こそ理解したらしく、完全に沈黙した……
とまあ、これくらいだろうか。これで戦いは終わりだ。
「隊長!この町も、もう……」
「ああ、殆ど壊滅状態と言っても良いだろうな……仕方ない。次を探そう」
あれから数日が過ぎた。
盗賊達の襲撃もなくなり、パームさんも回復した平和なこの村で俺はまだ生活を続けている。まあ、特に目指す場所も無いしな。
それに、空き家を村人達から自由に使って良いとも言われているのだし……とは言え、だとしても村人視点から見れば俺は居候のような存在だ。
その代わりと言っては何だが、社会奉仕くらいはしなければならないと俺は思っている。誰かにそうしろだの何だのと言われた訳ではないにしろだ。
さて、それじゃあ今日も行こうか。
俺はベッドから起き上がるとすぐに準備し、元空き家という名の現自宅を飛び出した。
自分で言うのもどうかとは思うが、俺は結構村人達のためになっていると思う。
大きな理由としては、錬金術によって村に色々な設備を取り付けた事だ。
村と外部との境には門を設置し。水辺には水車を取り付けておいた。これで村民達は魔物や盗賊の襲撃に怯える必要もなければ、今よりも多少文化的な生活が出来るはずだろう。
他には農具等の修繕もやったし、畑仕事の手伝いなんかもやっていたりする。ただ前者には少量の素材を使用する羽目になってしまったが……まあ、世話になっているのだ。これくらいは良しとしよう。
などと考えながら歩く俺の元に、ある一人の男が近づいて来るのが見えた。
「おはようございますアニキ!!」
「おはよう、ドルガ」
俺がドルガと呼んだその男は、身長は俺よりも頭二つ分は高い。天辺には傷の多い強面と、こちらを見下す大きな二つの眼が備わっている。
ただし、そんな見た目とは裏腹に態度は随分と柔和であり、その男は今ニコニコとしながら俺へと手を伸ばしていた。
「アニキ!!お荷物お持ちしますよ!!」
「あ、あぁ……ありがとう」
どうやら、その手は俺の荷物を肩代わりするため差し出されていたようだ。
……そうだ。以前も似たような人物の紹介をした事からも分かる通り。
コイツはあの、盗賊の元親玉である。
実はあの戦いの後、この男は部下と共に俺へと弟子入りを志願してきたのだ。
何でも敗北した彼等の傷を手当てし、「もう二度とこの村に足を踏み入れなければ命までは取らない、さっさと行け」と発言した俺に感銘を受け、との事らしい。
特にドルガは「アニキと呼ばせて下さい」とまで言ってきたくらいだ。
とは言え、俺に弟子を取るつもりもなければこの村から出るつもりもまだなく、そうとなればこの村の住民もきっと反対するだろう……と、思っていたのだが。
住民達は皆があの時、恐怖しながらも盗賊を追い返そうと密かに準備していたようで。
(物静かなのもそれが原因だったらしい)
そんな彼等の準備を〝良い意味で〟お釈迦にした俺の頼みならばと、盗賊達が村にいる事を快諾してしまったのだ。
別に、俺本人が頼んだワケではないというのに……どれもこれもドルガが「アニキと一緒にいたいんです!どうかお願いします!」なんて言うからだ、全く。
まあ、コイツらも村の手伝いをしているのだし。それにもう過ぎた事なのだから良いとして。
とにかく、ドルガがここにいるのにはそのような理由があるのだ。弟子入りはまだ認めたつもりはないが。
とは言え、今だけはいなくても構わないんだけどな。
いや、別に何も嫌がって突き放そうとしているのではない。現在、俺は村の入り口付近にて錬成の真っ最中であるからだ。
だから簡単に言えば、『今はいてもいなくても全く問題無い』からだな。
まあ、少しでも俺の役に立とうと背後で飲み水やら何やらの準備をしてくれているから何も言わないが……
ちなみに、そんな錬成の目的はと言うと。
以前使用した鑑定眼鏡と、ドルガの持っていた魔力水晶とを組み合わせてとある物を作るつもりなのである。
そして、それを置くための台座は既に錬成済みだ。
後は素材同士を取り出して、ここをこうして、と……
「よし、完成だ……悪くないな」
仕上がりにも満足した俺は、そのとある物を台座へと設置した。
「流石アニキ!!……でも、これって一体何なんですかい?」
背後のドルガが顔を覗かせそう言う。まあ確かに、コイツ……
いや、コイツでなくとも『ある物』としか分からないのだから、そりゃあ聞きたくもなるよな。なら教えてやるとしよう。
「コイツは『鑑定水晶』だよ。人や魔物が近くを通れば、対象のステータスがここに表示される。不審者なんかの早期発見に繋がるかと思ってな、ここに設置する事にしたんだ」
「へえ。何だかよく分かりませんが、流石アニキです!!」
そうか、ドルガにはちと難しい話だったか。
まあ、特別な施設でも何でもないようなこの場所で、気軽にステータスが見られるという事自体が珍しいのだから。そうなるのもある意味当然か。
「……ありがとう。じゃあそろそろ昼飯にしようか。ええと、家に食材は残ってたっけな……」
「あ、アニキ!お昼ならサブリナさんが作って待ってるって言ってましたよ!」
「ああ、そう言えばアイツそんな事言ってたっけな……よし、それじゃあサブリナの家に行こうか」
「はいアニキ!」
と、いう事で俺はそれ以上何も言わず、ドルガと共にサブリナの待つ家へと向かい始めた。
「隊長!村です!近くに村がありました!それも襲撃の跡が無い、人の住む村です!」
「そうか、漸く見つかったか……よし!そこに案内してくれ!」
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