五話 お前達にはもったいない!
参った。サブリナがいない。
自宅から出てすぐの所にある畑の様子を見ていると言っていたのに……全く、アイツは何処にいるんだ?
村の者達に話を聞きたい所だが、何故だか今日に限ってあまり外出していないようだし、困った。
だが、そうなると少しおかしいように思う。
この村の何処かでは人々の話し合うような声が、気配が、今も尚感じ取れるというのに。何故一方ではひっそりと静まり返っているんだ。この振れ幅は一体どういう事なのだろう?
……もしや、〝そちら側の人間〟に何かしらの問題があるという事か?そう言えば確か、サブリナも盗賊がこの村に現れるなどと話していたな。
「……一応、行ってみるか」
俺は声のする方へ急いだ。
やはり、探しに来て正解だったようだ。
村の入り口にまでやって来た俺は、ある光景を目の当たりにした事でそれを知った。
サブリナが複数の男達に囲まれていたのだ。
アイツらこそが盗賊であろう。まあ、男達は皆が獣の皮で出来たような上着や腰巻きに身を包み、加えて鼻を突くような血の匂いを漂わせているのだ。むしろそうでない方がおかしいと言えるだろう。
ならば、すぐにでも追い払って……やりたいのは山々だが。今は指名手配同然の身であるこの俺、アルス・アルキミアの顔がこれ以上無関係の者に広まるというのは困りものだ。
本当はサブリナにも、パームさんにも知られたくなかったくらいだからな。
さて、どうしたものか……
などと考えていた時、サブリナを連れて盗賊達が村の外へと歩き始めた。そのまま彼女を、自分達のアジトへと連れて行くつもりなのだろう。
「……悩んでいる時間は無いな。あまり好みじゃあないんだが一応、〝アレ〟だけ付けておくか」
そうして、俺はすぐに渦中へと飛び込んで行った。盗賊達をどうにかするため……いや。
サブリナを救い出すために。
「…………アルス」
「あん?何だってお嬢ちゃん?」
「そいつは男の名前か?」
「ガハハハハ!!だったらすぐに忘れる事だな!!もうお嬢ちゃんは俺達の」
不快な笑みを浮かべている盗賊達に、俺はずんずんと近付いて行くと。
「〝もの〟か?笑わせる。お前達のような乱暴者に彼女はもったいない」
まずはそう、口を挟んだ。
「な、何だおま……がっ!?」
次にサブリナを捕らえていた盗賊の一人を殴り、彼女を取り戻した。俺の拳を受けた盗賊は声もなく崩れ落ちる。
「お前、やりやがったな!!」
「ど、どうしますお頭!?」
「…………」
それを見た男共は叫び、狼狽え始める。どうやら今冷静さを保つ事が出来ているのは、お頭と呼ばれた大男ただ一人のようであった。
だがそれでも吠える複数は無視し、俺はサブリナの目尻に溜まった涙を指で拭い、その頭を撫でてやった。
彼女の勇気を褒め称えるのが先だと思ったからだ。それに、この行為はこれから相手取る事となるであろう者達への挑発も兼ねているのである。
「アルス!!どうして来ちゃったのよ!!早く逃げて!!ここは私が何とか……」
「……はぁ、思った通りだ。サブリナ、お前一人でこの場をどうにかしようとしていたな?」
「え、ええ、そうよ……村の人達も、お父さんも、アルスも……皆が無事なら、それだけで良いから……
さっき、コイツらと約束したのよ。私が行くから、もう村には手を出さないでって……だからアルス、アンタも早く」
「止めておけ、嘘に決まっている。それに、俺の事は気にしなくて良い。言ったろう?どうにかしてやるって。俺がサラマンダーを倒したのをもう忘れたのか?」
「わ、忘れてないけど……でも!!アイツらのボスは魔具を持っているのよ!!だから私、アルスにもしもの事があったらと思って……!!」
「なるほど、そういう事か……でも、本当に大丈夫なんだ。サブリナ、心配してくれてありがとう。
よく頑張ったな……さあ、少し下がっていてくれ。後は俺が何とかするから」
そうしてサブリナを退避させた俺は、大男の前に立った。
身長は俺よりも頭二つ分は高い。天辺には傷の多い強面と、こちらを見下す大きな二つの眼。
その態度は威風堂々、傲岸不遜。そんな様子の大男は、俺を前にして漸く口を開いた。
「……よう、妙な眼鏡の兄ちゃん。ガールフレンドとの話は終わったか?」
ふむ、どうやらコイツ、俺達が話し終えるのをわざわざ待ってくれていたようだ。
その余裕は自信からか、はたまた懐に隠した魔具のせいか……それは分からないが、『礼儀正しいから』でない事だけはまず間違いないだろう。
「妙な眼鏡じゃない。これは鑑定眼鏡だ」
「鑑定眼鏡?」
ああ、それと言い忘れていたが。大男が『妙な眼鏡の兄ちゃん』などと俺を呼んだ通り、今の俺は鑑定眼鏡なるものを装着しているぞ。
これは俺が以前に錬金して作ったものであり、その名が示すようにこの眼鏡を通して他者のステータスなんかを知る事が出来るのだ。
まあ、今はただ顔を隠すと言う目的で付けているだけなんだがな……ちなみに、大男のステータスはと言うと。
[ Lv ]34
[ 体力 ]2700
[ 魔 力 ]0
[ 攻撃力 ]368
[ 防御力 ]191
[ 俊敏性 ]445
このようなものだった。
確かに言うだけあってなかなか強い。これならば人の上に立ち、自信満々げな態度でいるのにも充分頷ける。
が、あくまでもただ〝それだけ〟だ。別にだからと言って俺が臆する事は無いし、というか有り得ない。コイツよりも上なんて、幾らでもいるのだからな。
俺はまた一歩、大男の前に踏み出した。
「ま、んなモンどうでも良いけどよぉ……どうすんだ?人の女を奪っておいて、タダで済むとは思ってねえよなぁ?」
「だから、サブリナはお前みたいな奴にはもったいないとさっき言っただろう?……断じて、お前のものなんかじゃない!!」
それを皮切りに、間も無く戦いは幕を開けるだろう。
「アルス!!気を付けて!!」
「ああ、分かってるよサブリナ。だが……はぁ、やっぱり外すかコレ。視界が狭まるから戦闘の時は付けたくないんだよなぁ……
それに、よくよく考えてみればコイツらが俺を知ってる可能性なんてむしろ少ない……サブリナ、悪いがこれを預かっておいてくれ」
だがその前に、やはりあまり好みでは無いモノを付けて戦うというのには不安が残ると思い、俺は。
外した鑑定眼鏡をサブリナへと放り、今度こそ戦いへと身を投じる……
「え、あ……い、良いのアルス?これ、付けなくても……」
「ああ、代わりに付けておくと良い。そうすればきっと、少しは不安が解消されるはずだ」
サブリナは俺の言う事を聞き、素直にそれを覗き込む……すると。
「……!!」
眼鏡越しに俺を見たのだろう。彼女は声を出せずに驚愕していた……
でもまあ、そうなるだろうな。何せ、俺のステータスはとてもつまらない。
確か、最後に見た時は……
[ Lv ]99
[ 体力 ]9999
[ 魔 力 ]999
[ 攻撃力 ]995
[ 防御力 ]991
[ 俊敏性 ]999
これくらいだっただろうか。
あの時から変化していないのであれば、彼女もまたこの俺の九ばかり並んだ面白くもなくとも無いステータスを確認した事だろう。
一応言っておくと、攻撃と防御だけ低いのは俺の専門外だからだ。何てったって俺は錬金術師。本来は戦闘向きではない非力な存在であるのだからな。
ああそれと、ついでにもう一つ言っておくが。
俺は先程、『コイツよりも上なんて、幾らでもいるのだからな』のような台詞を心中にて吐いたと思うが。
それには勿論、俺自身も含まれているぞ。つまりタダでは済まないのは、どちらかと言えば大男の方であるのだ。
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