五十一話 説明だなんてもったいない!?
翌朝、いつものようにサブリナよりも早く起きた俺は彼女と共に身支度を整えた後、一人食堂へと向かっていた。
何せ、帰宅した後にすぐ夕食を取り、そしてまたすぐにベッドへ直行したからな。昨日の疲れも何処へやら、まさしく元気一杯であるのだ。
……当然、そう出来た理由はある。
シャルカーニュの件も。エスピリカがいた訳も。姉妹はあの後どのようにして帰宅したのかも。全てを放り投げ今日を無事、迎える事が出来た理由はきちんとあるのだ。
とはいえ、それだけでは言葉足らずが過ぎるというもの……そこで今から一つずつ説明していくとしよう。
ではまず最初に、シャルカーニュの事を話すとしようか。
コイツはただ単純に、俺がヨルダに交渉してみた所……
「何、一人や二人増えた所で変わりないさ。むしろ大歓迎だ。竜が我が下に付くというなら実に心強いではないか!」
などと言って、彼女はあっさりと竜の居候を承諾してしまったのだ。
……以上である。
ちなみに、そんなシャルカーニュは今俺達の隣の部屋にいるぞ。
恐らくは『放っておけばずっと眠っている』タイプと思われる彼女だが、今はサブリナが起こしに行っているので問題なしだ。きっと朝食の時間には食堂に姿を現す事だろう。
とにかく、そういう訳だから万事丸く収ま……る、かと言われるとそうでもない。
彼女は何度も言っているが指名手配かつ、討伐依頼まで出されている魔物。だから、そう出来るはずがないのだ……という事で。
俺はヨルダに全てを打ち明け、そして彼女と相談した上で集会所にシャルカーニュの存在を報告すると決めた。
ただし討伐したと嘘を吐くのでも、竜を集会所に突き出すのでもない。
彼女を捕獲したと知らせ伝えるのだ。
そうすれば討伐でなくとも対象を無力化したという事から依頼を成功扱いにしてもらえるだろうし。
それに何より、お屋敷の主人様であるヨルダからの報告であるのだ。そうとなればいくら相手が集会所であろうと邪険には扱えぬだろうからな。
(まあ、報告しに行くのはその従者ことこの俺と妹君のユーデリアなのだが)
まあ、それは朝食の後に俺達で行うとして……お次は。
ヨルダとユーデリア……は、姉の方が負傷していたという事もあってか、普通にこちらへと帰って来たそうで。
要するに、特にこれと言って伝える事柄がないので次はエスピリカの話に移ろう。
……結論から言うと、彼女は許されたらしい。
アダレスやミゲルを攻撃し、ヨルダを裏切ってさえもだ。
正直、その話にはこの俺もかなり驚かされたが。まあ、そこには色々と込み入った事情があったようでな……今から一つ一つ説明していくとしよう。
まず先の話についてだが、その『許した』というのはヨルダがだ。そう、彼女がエスピリカの所業を全て水に流したのである。
と言うのも、どうやらヨルダ自身当事者という訳でもないのにまだその事を気にしていたらしく、「私にも落ち度はあった」と言い、彼女を無罪放免としたそうなのだ。
ただ正直、その件について俺は、ヨルダには何の罪もないと思っているんだがな……恐らくだが、真面目な彼女だからこそ無関係でもないとはいえ、そのような話に。
いや、〝無関係でもない〟から胸を痛めていた、という事なのかもしれないな。
とにかく。そうしてヨルダとエスピリカは和解し、離業術師は使用人に戻ったのである。
……シャルカーニュの問題と同様、こちらもそれだけでは済まないにも関わらずな。
そうだ。それだと『では他ギルドの者達を攻撃した事についての罰はどうなるのだ』との疑問が解決とはならず、漂うままとなってしまうはずだ。
だがしかし、それすらも即座に解決してしまっていたのである……と、言うのも。
実はダンジョンを脱出した後、エスピリカはある場所へと皆を誘導し、連れて行ったらしいのだが。
何と、以前行方不明となったはずのヨルダの元いたギルドメンバー全員が、以前見たゴーレムのような姿となってそこにいたんだそうだ。
(ただし、あくまでもそのような姿に錬成されたと言うだけで皆無事であったようだ)
まあ要するに、エスピリカは自首すると決めた後に、彼等の事も全て白状したという訳だな。
とにかく。それで皆は驚き、慌て、だが後に大歓喜し。その波に呑まれて有耶無耶となり。
エスピリカは特に何の処罰もされず、というかそんな事をしている場合ではないとして放り出されたとか……と、そのような理由で彼女は今ここにいるらしい。
とはいえ、どうやら小耳に挟んだ所によるとだな……実際はそうでもなく。
(まあ当たり前だが)
何やら『ヨルダがとある条件を呑んだから』だとか。
『本気を出せばこの街を壊滅させられる程の実力者であるエスピリカを怒らせると危険だから放置した』だとか……等々。
そのように、表向きには決して口に出す事の出来ない事情があるとか、ないとか……とにかく、そういう事であるんだそうだ。
話はこれで以上となる。
まあつまる所、『俺はもう少しヨルダとエスピリカを恐れた方が良いのかもしれない』という事に全ては集約されるという訳だな。(?)
だから俺はそれ以上は何も聞かず、聞こうともせず。ただ一介の従者として彼女のため働くとしよう。
だが、まずはその前の腹ごしらえとして食事を取らねばな。
俺はまた、食堂へと歩き出して行った。
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