五十話 不仲だなんてもったいない!!
二つ目?ああそうか、言い忘れていたな。
それは、あれだ。俺が甲冑を彼女の使い易いようなサイズへと手直しし遂に再出発が出来たという、まさにその時だった。
それはシャルカーニュのある一言から始まったものだ。
そうだ、彼女の一言からだ。当時は互いにやや険悪といったくらいで、まだ無言ではなかったのだからな。
……その時までは。
「だがそれにしても国崩しよ、お前はなかなか度胸のある奴だな。
私があまり人の肉を好まぬタチだったから良いものの、そうでなければお前は喰われていたかもしれないんだぞ?もしそうだったらお前、あの時どうするつもりだったんだ?」
それは単なる質問であった。
というか、疑問だ。彼女は接近し、その存在が何であるかに気が付いたその時でも尚、立ち去ろうとしなかった俺を不思議がってそう聞いてきたのだろう。
それに対して、俺は素直にこう答えた……はず、だったのだが。
「いや、お前あの時普通に襲い掛かって来たじゃないか……ではなくて。まあ、大抵の魔物なら素手でもどうにかなるからな。
それに、お前の口内を見た時に気付いたんだ。食べカスの一つも見当たらない、つまり何かを捕食した形跡がないという事をな。
だとすれば、それが捕食者側の生物かそうでないかなどはもう関係のない話だ。そこから推察するに、ソイツは最早そう出来ぬ程に弱っているか、それとも草食かのどちらかだろうからな」
どうやらそれがマズかったらしく。
「な!?……お、お前!!私の秘部を盗み見ただけでなくそんな所まで見ていたというのか!?私に何の断りもなく!!
やっぱり貴様は変態だ!!人間如きが竜に一体、何という感情を抱いているんだ!!お前どうかしているぞ!!」
とうとうシャルカーニュは本格的に怒り始めてしまい、そして。
「だから、違うと言っているだろう!!お前いい加減にしろよ!?どうかしているのはお前の方だ!!さっきから妙な話ばかりして、俺なんかよりよっぽどおかしいぞ!!」
俺も俺で言い返した事で場の空気は最悪となり、そこからは本当に終始無言でいたという訳だな。
……はぁ、全く。何だか思い出しただけでどっと疲れが出てしまったようにすら感じる。
というか、まずそもそもとしてコイツと一緒にいるのが疲れるんだよな……
なんだかんだと言いつつも、漸くヨルダの屋敷が見えてきた。
「おお!!あそこがお前の屋敷か!!国崩し、着いたらまずは私を寝室に案内しろ!!腹は一杯になったからな!!次は睡眠だ!!」
「色々と間違えてるぞシャルカーニュ。あの屋敷は俺のものじゃないし、というかまず主人に受け入れてもらえるかどうかが先だろう……」
ちなみに、道中に少ない手持ちながらも色々と食わせてやったお陰か、シャルカーニュの機嫌はすっかりと戻っているぞ。
それによって俺にのし掛かる、多少のストレスは軽減されたのは間違いないだろうな……
(それと、小銭も減ったので重量的にも軽く……)
とはいえ、いつの間にやらもう日が傾きかけている。彼女の言うようにそろそろ戻って仮眠だけでもしたいものだ。
そうでないと、今度は身体的なストレスがやって来るだろうし……とはいえ。
問題はここからなのだ。ヨルダが彼女の存在をどう受け止めるか、そしてヨルダはどうしているのか。
とにかく、戻ってみない事には何も分からないし、始まらないと言えよう。
俺達は坂道を歩き、随分と久しくも感じるような我が家……ではなく、我が主人の屋敷へと歩を進めて行った。
そうして、遂に現自宅へと辿り着いた俺は。
「じゃあ、開けるぞ……」
これから起こる何かを案じ、緊張に身を強張らせながらもその扉を開けた……すると。
「……おお、アルス!!やっと戻って来たのだな!!」
「もう!!遅かったじゃないの先生!!私達なかなか先生が戻って来ないから探しに行こうとしていたのよ!!……でも良かった!!おかえり先生!!」
「お師匠様……!!よくぞご無事で……!!」
「お、おかえりなさいアルス!!……ボソリ(私だって、ああいう風にアイツを抱きしめたかったのに……)」
その先に待っていたのは予想外にも。
ヨルダ、ユーデリア、サブリナ……そして何故か、いるはずのないエスピリカという。一部からの軽い不満を交えた俺を迎える言葉と、皆からの抱擁であった。
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