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四十七話 ドラゴンだなんてもったいない!!

ああもう、五月蝿くて仕方がなかったな……全く、まだ耳がキンキンするぞ。


何せシャルカーニュときたら、俺が治療してやっているというのにその間中ずっと断末魔(?)を響かせていたからな。喧しい事この上無かった。


だが、そんな地獄の時間もこれで漸く終わり……つまり、処置は完了したのだ。当然成功という形でな。


「ほら終わったぞシャルカーニュ。だが、もう暫くの間はここで大人しくしている事だな。


安心しろ、せっかく助けた患者が魔物に襲われたとなると後味が悪いからな。お前が動けるようになるまでは俺もここにいてやるさ……って。


おいシャルカーニュ、お前聞いてるのか?」


だがしかし、シャルカーニュはというと……


「グルルルル……」


闇医者とはいえ、俺は彼女の手術(?)を無事に成し遂げたのだ。本来ならば労いの言葉の一つくらいはあっても良さそうなものだが。


残念ながらそのような事はなく。むしろその真逆で、彼女は先程から延々と俺に対しての威嚇行為を続けているのだった。


全く、叫ぶのを止めたかと思えば途端にこれか……まあコイツの気持ちも分からなくもないが、それでも少し虚しいというか、切ないというか。


というか、別に他の竜のオスに見られたという訳でもないのだし。むしろそこまで怒らなくても良いんじゃないか?


まあ良い。緊急の医療担当である俺と、急患の彼女とのその後には定期検診も経過観察の予約も、何一つ設けられてはいない。そう、付き合いもこれで最後なのだ。


ならば、もう少しだけ我慢してやるとしようか。


それが終わる時とは、それ即ち彼女との別れを意味するのだから。


「グルルルル……」


「……おいシャルカーニュ。分かった、分かったよ。もう俺の話は聞かなくて良い。だが、いい加減俺を威嚇するのはもう止せ、あまり興奮すると傷に響くぞ」


「うるさい、グルルルル……」


「いやもう、本当に止めておけって。俺が悪かったからさ……ボソリ(ったく……何で俺が謝らないといけないんだ……)」




それからまた暫く時は過ぎ、小一時間程は経過しただろうか。


シャルカーニュの具合も大分良くなってきた。そう外見からでもはっきりと確認出来るようになったという所で、俺は街に帰還する事を決めた。


ただまあ、病人への経過観察の時間としては随分と短く、本来それではとても足りぬとは俺自身、理解してこそいるが。


何しろ相手は竜、というか魔物なのだ。それに事実として調子は悪くなさそうであったため、以降は彼女の生命力を信じる事にしたのである。


まあ本音を言えば、シャルカーニュと同様にエスピリカやヒルデガルン姉妹の事も心配だったからな。一刻も早く帰らねばとはかねてより思っていたのだ。


そこで俺は立ち上がり、先程まで背中を預けていた竜へと最後にこう言った。


「シャルカーニュ、お前ならもう大丈夫だろう?俺はそろそろ行かせてもらうよ。


今度こそお別れだなシャルカーニュ。だが、あまり派手な動きはするんじゃないぞ?それと、傷が治ったその時はすぐにこのダンジョンから離れるんだ。


そうでないと、いつまた冒険者がやって来るかも分からないからな。それじゃあ……」


そうしてシャルカーニュに別れの言葉を告げた俺は少し歩いた所で立ち止まり、まず周囲の遠望を始めた。


何分出口も違えば、周りは木々ばかり。どちらに向かえば街に行き着くのか、今のままではさっぱりだからな。


だがしかし、ここより遥か西に木々を見下ろす長身の建造物を幾つか発見した。それを目指して歩けば、そう難儀せず街に辿り着けるであろう。多分な。


そして漸く、俺は彼女を背に歩き始めた。


もう二度と会う事はないであろう、一匹の聡明な雌の竜を背後に……と、したのは間違いないと思うのだが。


何故か、シャルカーニュは俺の前にいた……いや。


何故も何も無い。正しくは彼女が何と、歩き出した俺の前方を塞いでしまったのである。




俺の前途をまるで番人のように塞ぐ彼女。


いや、シャルカーニュは。以前と同様に鎌首をもたげ、まるで蛇のようにした首と頭で俺を見下ろす。


ただし牙は剥いていなければ、目も血走っていない。まず敵意は無いと見て相違ないだろう。


だが、むしろそのせいで。今の彼女の行為には『だとすれば〝何意〟があるのか』、それがさっぱり理解出来ない。


「おい、退いてくれシャルカーニュ。それとも何だ、まだ俺に何か用があるのか?」


そこで声を掛けてみた所、彼女は何とも驚くべき発言をするのだった。


「……国崩し、私も連れて行け」


「何!?お前本気で言ってるのか!?」


こればかりは本当に、本当に驚いた。まさかシャルカーニュが再びの同行を申し出るとは。


しかも今回のそれは多分、旅路を共にするという意味合いであろう。


そこまでは流石にやり過ぎではないだろうか?というか、何でまたそのような……とにかく。


俺はその訳が納得に値するものか、問わずにはいられなかった。


「シャルカーニュ、お前本当にどうしたんだ?まさかとは思うが、これも礼の一つとは言い出さないだろうな?


……まあどちらにせよ、お前はもう俺を気に掛ける必要なんて無いんだぞ?別に何も、俺だって見返りを求めている訳では」


「お前、何か勘違いしているようだな」


「え?それはどういう」


「これは礼でも何でもない。むしろ、お前からして見れば罰とも言えるものだ……お前は。お前は、私の……私の……その……」


「…………もしや、〝大事な場所〟を見たと言いたいのか?」


「なっ!?お、お前!!それを大きな声で言うな!!……ああ、そうだ!!その通りだ!!


だからお前には責任を取ってもらう!!さあ、私も連れて行け!!有無は言わせんぞ!!」


なるほど……どうやらこういう事らしい。


簡単に言えば、シャルカーニュの秘部を意図せずとは言え覗き込んでしまった俺は、その責任を取って彼女を連れて行かなくてはならないと。


そしてそこに、選択の余地は無いと。それがコイツの言い分であるようだ。


…………まあ色々と、こちらからも言いたい事はあるが。


とにかく、まずは結論から述べさせてもらおう。


言い終えると共にその言葉通り、問答無用と言った様子でもう俺に付いて来ようというつもりでいるシャルカーニュ。そんな彼女を前に。


俺はこう答えた。


「なあ、シャルカーニュ」


「どうした?もしや、移動中にまた私の傷口が開くのではないかと心配しているのか?それなら問題無い、もう充分に傷は癒えた」


「いや、そうではなくて。さっきの話なんだがな……悪いが、遠慮させてもらいたい。お前を街に連れて行くつもりはないんだ」

いいね、感想等受け付けておりますので頂けたらとても嬉しいです、もし気に入ったら…で全然構いませんので(´ー`)


投稿頻度はなるべく早めで、投稿し次第活動報告もしています、よろしくお願い致します。

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