四十六話 〇〇だなんてもったいない!!
「もし、そこの貴女。確かミアリーと言いましたか?」
「!?エ、エスピリカさ……じゃなくて、エスピリカ!な、何?私に何か用?……ですか?」
「最後に一つだけ頼みがあります。無事にこのダンジョンを抜け出口に辿り着いたら。その時はまず街ではなく、〝ある場所〟に向かって欲しいのです。
行き先は私が指示します。勿論、拘束はしたままで構いませんから……」
「え……な、何言ってるのよ!?貴女みたいな人の言う事なんて聞ける訳」
「アタシは、貴女をギルドマスターの元に案内して差し上げると言っているのですよぉ?」
「…………え?」
ふう、ようやっと出口に辿り着いた。
とはいえ、竜隠しの岩屋へと足を踏み入れた、あの場所とここでは景色が違う……が。それで良いのだ。
それ即ち、別の出口があると話したシャルカーニュの言葉は正しかったという証明であるのだからな。
……などと言った事からも分かるように。
あれから数十分程度の時間を要したものの、何とか俺達は無事ダンジョンを脱出する事が出来たという訳だ。
そう、俺単体ではない。俺〝達〟だ。
何せ俺の後ろには、シャルカーニュがいるのだから。
……勘違いしないでくれ。無理矢理引いて来たりしたのではない。
コイツ自ら先導を引き受けたからこそ、今の俺達があるのだ。むしろ俺は何度も止めたんだぞ?
ちなみに、コイツが少々の時間を俺にくれと言ってきたのも。脱出に約数十分掛かったのもそのせいである。
前者はシャルカーニュが体力を回復させるために。後者はだとしてもコイツの傷は癒えていないがために……だな。
だがそれにしても、本当に律儀な竜だ。恐らくは治療の礼としてそうしているのだろうが。
しかし、わざわざそこまでしなくとも良かったと言うのに……
「シャルカーニュ、ここまで来ればもう大丈夫だ。ありがとう、お前は一刻も早く棲家に戻り安静にしていると良い」
「ああ、ではそうさせてもらおう。国崩しよ、これで借りは返したからな……」
だが本人、ではなく本竜も漸く役目を終えた事を悟ったらしく、シャルカーニュは巣穴に戻ろうと踵を返した。
「……うぅ!!」
が、どうやら下腹部の傷口が開いてしまったようで。途端に竜は身を縮め、その場に蹲る。
「あ……全く、だからあれ程止めておけと言ったものを……大丈夫かシャルカーニュ?
…………ダメそうだな。
仕方がない。おいシャルカーニュ、そこの甲冑を取って傷口をよく見せてくれ。もう一度手当てしてやる」
そこでやむを得ず、俺は治療のためシャルカーニュの下腹部に手を伸ばす……のだが。
「や、やめろ!!お前、自分が何をしているのか分かっているのか!?」
何故だかシャルカーニュにはそれを拒否され。竜は俺から患部を守るためと更に丸く、まるで球体のようになってしまった。
コイツ、何がしたいと言うのだ……もしかすると、〝アレ〟を気にしているのか?
いやいや、そんなはずはないか。コイツは竜、まさか人間と同じ感性を持っているという訳でも無いだろうに。
「……おいシャルカーニュ、何してるんだ。ふざけている場合じゃないぞ。いいから早く甲冑を外して傷口をこっちに見せろ」
「や、やめろ触るな!!触るなと言っているだろう!!いくら人間と言えどもお前は男なんだ!!そのような事を出来るはずがないだろう!?」
「…………もしかしてお前、恥ずかしいのか?」
「あ……あ、当たり前だろう!?」
「……そうか」
なるほど、コイツとの会話で分かった。どうやら、俺が『そんなはずはない』と考慮もしなかったはずの予測が当たっていたという事に。
実は治療の際にたまたま見てしまい、そこで気が付いたのだが。
…………コイツ、メスであるのだ。
だからシャルカーニュは俺に、人間で言えば臍より下……その先を見られる事を拒んでいるという訳なのである。
治療せねばならない箇所は、そこにあるにも関わらずな。
とはいえ、コイツは怪我人。対して医者……ではないが、今処置が可能なのは俺しかいない。そんな事を言ってなどはいられないのだ。
「シャルカーニュ、お前の気持ちはよく分かった……だが今は治療が最優先だ。外せ」
「ダメだ!!それだけは出来な」
「いいから外せ。というか、俺は一度そうしているんだぞ?二度も三度も同じようなものだろ。さあ早く外せ、こんな所で死ぬのはお前だって嫌だろう?」
「な!?……お、お前!!私が気絶している間に何を」
「俺が何かしたってか?……ああしたさ、治療をな!!っていうか、それ以外してる訳ないだろうが!!
いいからさっさと甲冑を外せシャルカーニュ!!これ以上俺の言う事が聞けないのなら無理矢理にでも外させてもらうぞ!!」
「それは……って、お、おい止めろ!!触るな!!や、やめ…………やめろ────!!」
俺が治療を施す最中。シャルカーニュの断末魔(?)はいつまでも、いつまでも続いていた。
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