四十五話 世を去るだなんてもったいない!!
何を言うかと思えばコイツ、また随分とありきたりな台詞を……いや。
今のはコイツ自身の実体験から生まれたものであるのだ。というか、魔物が文や絵物語を読むとは考えられない。
……なるほど、今の発言をベタなものだと感じていたのは俺だけだったようだな。
まあ良い。聞かれた以上答えるまでだ。そうしなければ今度こそ、コイツは逆上するかもしれないんだからな。
「前にも似たような事は言ったが。俺は、俺は自分のした行いによって誰かが傷付き、苦しんだと知った……シャルカーニュ、それがお前だった。
だから俺は、そのような者を見捨てられなかったと言うだけだ」
「…………」
「というか。まずそもそもとして、あのままだとお前はじきに死んでいただろうからな。どの道治療はするつもりだった。
知性を持ち、人語をも操るドラゴン……そのように貴重な魔物が一匹とはいえ、この世から去ると言うのはあまりにももったいない。お前もそうは思わないか?
まあ、理由としてはこれくらいだ……もう良いか?弟子が心配でな、だからそろそろこのダンジョンを抜け出したいのだが……」
「……もう一つ教えてくれ。私の翼の事だ。
これは以前、人間達にやられてしまったものでな。骨が折れているのか飛行は愚か、畳むのにも難儀していたのだが……
今ではすっかりと痛みが引いている。飛ぶ事さえ出来そうだ。これは一体どういう事なのだ?まさかとは思うが、これもお前が治療したというのか?」
シャルカーニュは続けてそう言った。
まあ確かに、自身が何をされたのかというのは患者にとって最も気になる所……なのかもしれない。
加えてそれが、我々人間に例えると手足のように重要な部位となれば尚更にだ。
では、それも話してやるとするか……ああそうだ。忘れていたがそれには注意すべき点もあるのだからな。
ならば尚の事、説明くらいはしておいてやらねばなるまい。
「ああ、その通りだ。だが俺には折れた骨までは治せなくてな。だから……
俺の仮面に使われていたスライムリキッドと竜の骨、それと一つだけ所持していた我が弟子の発明品、『浮揚石』を素材として作った薬をお前の翼に塗っておいたんだ。
名付けるとすれば、そうだな……『飛行薬(外用剤)』と言った所か。
これは竜の骨にある骨塩等の成分によって傷と骨折、両方の早期回復を促すものだ。しかもお前と同族の骨だ。その期間はより短いものとなるだろう。
スライムリキッドはまあ、お前の折れた翼部分の骨にその成分を浸透させるため、薬を液状化させる必要があってな。それで使ったというだけなんだが。
まあ良い。それで最後に、浮揚石についてだが……こちらにも素材に加え入れた理由があるんだ。
これは文字通り浮遊……つまり『風』に似た種の魔力が中にある事が分かってな。
一時的な飛行の補助をする目的として薬に混ぜてみたんだ。恐らくお前の言うように、今ならば実際に飛ぶ事も可能だろう……フフフ、分かったかシャルカーニュ?
これは単に傷を治すだけでなく、完治までお前の手助けとなるような効能さえ持ち合わせているんだ……どうだ、凄いだろう?俺の自信作だ。
ただし!あくまでも補助は補助だ。それを良しとして翼を酷使し続ければ痛みは戻り、最悪の場合お前は二度と空を飛ぶ事が出来なくなるだろう。
それが分かったらお前はとにかく安静にしているんだ。それと、何処かで魔物の骨か枝でも拾って翼を固定しておけ。
そこまで作るとなると、他の素材まで使わないといけなくならから流石にもったいな……じゃなくて、お節介が過ぎるだろうからな」
「……そうか」
よし、これで伝えるべき事柄は全て話し終えた。
何だかシャルカーニュも落ち着いたようだし。では予定通り、このダンジョンから脱出するとしようか……いや。
その前に俺からももう一つ。ある事を話しておこう。
「最後に、もう一つだけ言わせてくれ。
シャルカーニュ……色々とすまなかったな。俺と戦った後、お前がそこまで苦労していたとは知らなかった。
だが、俺もあの時は戦うしかなかったんだ……そこにはお前に対する悪意も、お前を貶めるような意図も一切として無い。それだけは分かってくれ。
……それだけだ。じゃあ、今度こそ俺は行くからな」
何だか、言っておかなければならないような気がしてな……とにかく。
そうして謝罪を終えた俺は、今回こそはとダンジョンを脱出すべく歩き出した。
のだが。
「待て、国崩し」
本日二度目となる足止めを、またこの竜から喰らってしまった。
「……ああもう!さっきから何だって言うんだ!?説明はさっきしただろう!?これ以上俺に何をしろと」
「お前、仲間がいるというのに単身なのは、何かその者達と共にいる事が出来ない理由があるんだろう?
……私は外へと繋がる道を幾つか知っている。教えてやるからもう少しそこで待っていろ」
しかし、シャルカーニュは礼のつもりだろうか。
どうやらコイツは、俺に抜け道を教えてくれるつもりでいるらしい……そして、それを聞いた俺は。
「…………分かった。ただし、もう暴れたりするなよ?」
やや乗り気ではなかったものの、とにかく。竜の提案を受け入れるのであった。
まあその時にはもう、俺を逃さんとしたシャルカーニュが服に噛み付いたまま離れようとしなかったからな……破れては困るからこそ、渋々ながらもそうしたのだ。
いや、そうするしかなかったのだ。
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