四十四話 命懸けだなんてもったいない!! 2
とにかく、シャルカーニュも何とか静止出来たのだ。では早速だが治療に取り掛かるとしよう。
まずは止血だ……『先に消毒をせねば雑菌が繁殖するのでは?』という意見もあるかもしれんが。
今も尚コイツは血を流し続けているのだ。つまり、事態は一刻を争うためこちらを優先させてもらう。
というか、今からやる処置は消毒も兼ねているからな。まずそもそもとして何ら問題は無く、心配する必要もまた無いのである。
そんな事が出来るのか?と、思うだろうが……フフフ、出来るんだよ。コレを使えばな。
そうして、俺は懐からある物を取り出した……それは。
以前サラマンダーから入手した『火精霊の鱗』だ。
やり方はこうだ。始めはこの鱗に傷を付け、それによって内部から漏れ出た炎を使い患部に焼灼術を施す……という、ごく単純なものである。
まあ要するに、『焼いて塞ぐ&消毒する』という事だな。
……確かに、これは誰が見ても荒療治と言うくらいの処置であるとは俺自身も理解はしている。
とはいえ、俺は医学の知識もあまりなければ回復魔法も使えず、かと言って残された時間は僅かという今の状況では、こうするしか竜を救う方法はないのだ。
そう、これはコイツに対しての当て付けでも何でもないのである。そこだけはどうか分かって欲しい。
それに、今現在シャルカーニュは気絶していてそこまでの痛みを感じないだろうからな。ある程度は躊躇せずに事が行えると言うものだ。
そう考えると、むしろコイツは気絶していてラッキーだったと言えるかもしれないな……まあ、とにかくだ。
俺はシャルカーニュにある傷口のうち、翼と下腹部にあるものを鱗の炎によって焼き、塞ぎ。
「……あ。そうか、コイツ……だったのか……」
そこの止血が完了した事を確認した後、またすぐ『特薬草(大)』。これを患部に貼り付けてやった。
分かるとは思うが一応言っておくと、これはパームさんに治療を施した際にも使ったものだな。ちなみに火精霊の鱗と同様、幾つか採取しておいたのでまだまだ替えはあるぞ。
とは言っても、ここで使うのは数枚程だけどな……と、いう事で。
俺は何とかシャルカーニュの治療を無事完遂させるのであった。
…………いやすまない、語弊があったようだ。
というか語弊ではなく単なる間違いと言うべきだろう。俺の処置は完璧ではなかったのだ。
よくよく見てみると、傷こそ塞いだもののシャルカーニュの翼はもう片方と比べてやや歪なように感じる。
そこから推察するに、他生物なので確実とは言えないがそこが折れているようなのだ。まあ要は骨折だな。
だがしかし、俺には傷は治せても折れた骨までもを再生させられるような技術はない。
さて、どうしたものか…………お!
そうだ。さっき手に入れた〝コレ〟を使うか。後はこれをこうしてと……よし。
そうして今度こそ、俺は竜の治療を何とか成し遂げるのだった。
シャルカーニュが目を覚ましたのは、それから数分後の事であった。
「……ん、んん。わ、私は何を……そ、そうか、私はあの時、国崩しの頭突きを喰らって…………国崩し。
そうだ!!アイツは何処だ!!……って、おい待て国崩し!!お前、何処に行くつもりだ!!」
「あ……め、目が覚めたのかシャルカーニュ?そうかそうか、それは良かったな……」
しかもタイミング悪く、俺がこの場を立ち去ろうとしていたまさにその直前でだ。
はぁ。まさかよりによってこんな時に覚醒するとは。
(まあ望んでそうしたのではないだろうが)
俺がいると、どうせまたコイツは傷口が開くのも気にせず暴れ出すだろうから、さっさとここを移動しようとしていたのだがな。
とはいえ、このまま立ち止まったとて問題が起きるのは確実。そう考えた俺はシャルカーニュに問い掛けられた今でも逃走という選択を変えぬと決め、とにかくと歩き出した。
「じゃあ、俺は行かせてもらうよ。俺がいるとお前の怪我の治りが遅くなるだろうからな……じゃあなシャルカーニュ、治療はしておいたから暫くはあまり動いたりするんじゃないぞ……」
「……おい!待て国崩し!」
だと言うのに、シャルカーニュはしつこく俺を呼び止めてくる。
全く、一体何だと言うんだ。
俺がここに長居したとてコイツの行動は『暴れ出す』か『いつまでもピリピリとしている』かのどちらかに分岐するだけであり。
そして最後にはどの道『争った挙句傷口が開き、再びの治療』という、終点に辿り着くであろう事など容易に予測出来る。
そこには何一つのメリットも無いだろうに……
とはいえ、今無視して立ち去る事を強行すればコイツは逆上し、再び暴走して最終的には同じ末路を辿る事に……と、なるやもしれない。
そこで仕方なしに、俺は返事をした。
「……はぁ、おいシャルカーニュ、お前は一体俺にこれ以上の何をさせたいと言うんだ?
また力比べでもする気か?その体で?だとしたら誰がお前の治療をするというんだ?
分かったらそれくらいにしておいてくれ。じゃあ今度こそ、俺は行くからな……」
それは多少、いや割と苛立ちを隠せないような返答となってしまったが。
まあでも、こちらだって大分譲歩した結果がこれなのだ。ある程度は勘弁してもらいたいものである。
にも関わらず。シャルカーニュはまた口を開き、こう言った。
そしてそれは、思っていた通り逆上したとすぐに分かるような言葉……
「……待て!待ってくれ!
教えてくれ国崩しよ、何故お前は私の傷を治したんだ?私はお前を殺そうとしたんだぞ?」
ではなく、竜はそのような台詞を俺に寄越すのだった。
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