四十二話 失念だなんてもったいない!!
ええと何だったか……そうだ、あれだ!
コイツ、シャルカーニュだ!!
それも確か、『従竜兵器シャルカーニュ』とかいう名前で呼ばれていたヤツだな。
なるほど、そうかそうか。思い出せてスッキリしたぞ……って、待てよ?ドラゴン?
もしかするとコイツ、例の指名手配だという竜なのではないか??
いや、きっとそうだ。というか、よくよくと考えてみれば俺は〝そっち〟も忘れていたんだな。
まあでも、これで二つあったような気がした使命のうち、最後の一つを漸く記憶から掘り起こす事が出来たのだから良しとしよう……などと思案していると。
「すぐに立ち去れ人間!!それ以上近付けば命は無いと思え!!」
目前の竜、シャルカーニュは俺に気が付いてしまったらしく、裂けんばかりに大口を開け怒号を放ってきた。
まあつい先程、五月蝿くしてしまったからな。そうもなるだろう……は、ともかくとして。
コイツ、魔物には珍しく人語をも操れるようだ。だとすれば理解もまた可能であろう。
という事はつまり、話し合いも出来るはずであるのだ。それだけで終われば戦わずに済む……
そこで、俺はシャルカーニュに語り掛けてみる事とした。
「待ってくれシャルカーニュ!俺は単なる好奇心などでお前の元に来た訳ではない!
実は、俺の他にもここには複数の冒険者達がいてな。だからこの奥にいる者が彼等に危害を加えるような存在ではないかと確かめに来ただけなんだ!
事が済めば、俺はすぐに立ち去」
……が。どうやら少し発言に思慮が足らなかったらしい。
「待て!!お前、何故私の名を知っている!?やはりこの私を討ちに来た冒険者だな!?」
「……え?い、いや違うぞ!!そうではないんだ!!そうではなくてだな」
「ならさっさと答えろ!!お前は何故私の名を知っているんだ!?」
俺がその名を告げた事に反応した竜はまるで蛇のように鎌首をもたげ。そして今にも獲物を噛み殺さんとばかりに牙を剥き、睨みを効かせ、この俺を激しく威圧するのだった。
……しまったな。まあ確かに、コイツからして見れば俺は棲家へとやって来た単なる不審者。
しかも名前まで知っているときた。これが人相手ならばストーカー呼ばわりされていても何らおかしくはない。
とは言え、もう口に出してしまったのだ。これ以上誤魔化し、嘘を重ねた所でどうせバレてしまうのがオチと言うもの。
ならここは、ひとまず素直に本当の事を話してみるとするか。
俺はシャルカーニュの問い掛けに対し、こう続けた。
「ええと、それはだな……コホン。
知っているも何も、お前の主人が言っていただろう?名前は確か、『何たらマルチネス伯爵』とかだったか?……とにかく、奴から聞いたのだからな。むしろ知っていて当然だ」
「何?…………という事は、まさか。お前、あの時私と戦った『国崩し』か?」
「ん?あ、ああ、お前の方こそよく覚えていたな。そうだ、俺こそが『国崩し』ことアルス・アルキミアだ」
……しかし、ここでもまた俺は失敗し、シャルカーニュにとっての地雷を踏み抜いてしまったようで。
「……フフ、フフフ、フハハハハハハ!!そうか!!お前があの『国崩し』か!!ならば丁度良い……もう、お前が私を討ちに来た冒険者かどうかなど関係ない!!」
「え……?お、おいシャルカーニュ!それはどういう意味」
「国崩し!!ここで会ったが百年目だ!!その首今度こそシャルカーニュが跳ね飛ばしてくれる!!」
俺の名を聞いた途端に竜は暴れ出し。
やはりと言うべきか、俺は第二の戦いの渦に巻き込まれるのであった。
こうなりたくはなかったからこそ、話し合いでどうにかしようとしていたのだが……とにかく。
こうして、第二の戦いが幕を開けた。
「ウォオオオオ!!くたばれ国崩しよ!!この仇敵よ!!」
とうとう、俺を敵と認識したシャルカーニュは棲家より這い出し、その牙で我が身を裂こうと迫り来る。
「結局、こうなってしまうのか……」
とは言え、むざむざとやられたいがためにここに来た訳ではない。
俺はシャルカーニュの顎に手を当て、竜の噛み付きを何とか防いで見せた。
だが相手は竜だ。いくらの俺のレベルが高かろうとも流石に力負けしてしまう……
「……ん?」
かと、思いきや。
確かに序盤の勢いは凄まじく、そのままの形でシャルカーニュに押された俺は約数十メートル程後退させられてはいたが。
しかし、以降は力が拮抗したのか後進は途絶え。いや、むしろ相手側のパワーが弱まってきているのかもしれない。
いつの間にやらこの力比べ、今では俺の方が優勢となっているのだった。
妙だ。先も言ったが相手は竜、それは本来ならばもっともっと手強く、ましてや〝俺以外の〟非戦闘職が肉弾戦を挑んで良いような存在では決してないはずなのだが。
今は力のぶつかり合いでさえ俺の方が圧倒しているという始末。これは一体、どういう事なのだろう?
……そういえば、コイツの塒からは強烈な血の匂いがしていたんだったな。
残渣の無い口内を見るに、コイツ自身は捕食行為をしていないようだし。
まさか、あれは捕えた獲物なんかではなく、コイツの……
「…………ヴヴヴヴゥ!!」
次の瞬間、まるで俺の予測を真実たらしめるかのように、その証拠を差し出すかのようにして。
竜が唸り声を上げた。
その声は低く悲しく。奴が苦痛の最中にいるであろう事など容易く感じ取れる……そして。
そこで俺は、ある事を確信した。
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