四十話 お別れだなんてもったいない!!
はぁ、何だか先が思いやられるな……とはいえ、少なくとも今だけはこれで良いのかもしれない。
まあ、何かしらのトラブルがやって来るのが今になるか、後になるかというだけの話かもしれぬが。望むとすれば後者なのは言うまでもないのだ。
だとすれば今は道中に問題が起きぬ事を祈りつつ、出口を目指すのが賢明と言えるだろうな。多分。
という決断に至ったため俺は身支度を整え、ひとまずはここを抜け出すべく三人と共に歩き出そうとした。
……まさに、その時だった。
俺達のいるダンジョン最奥部。この場所に歩み寄る者達の存在を知ったのは。
「お師匠様、誰か来ます。私の後ろに隠れて下さいまし」
俺の次に、こちらへと近付きつつある者達の気配に気が付いたのはエスピリカだった。
「……おや?何だか足音が聞こえるような……いや、間違いない、これは靴音だ。それも複数の……そこに誰かいるのか?」
そして三番手にはヨルダが。
「え?どうしたの皆?」
ユーデリアは、まあ良いとして。それ以外の皆も何者かの存在をしっかりと把握したようだ。
だがそれにしても、こんな所にまでやって来るのは一体何処の誰であるというのだろうか?
当たり前ながらここはダンジョン。加えてここは最奥だ。援軍だとしても、敵だとしても、それはある程度の実力者と見て間違いは無いだろう。
……もしや、例の『手柄を独占しようとしている冒険者』か何かか?
あれはてっきり、エスピリカの仕業とばかり思っていたが。実はそうでなく実在しており、今の今まで身を隠していたそのような者達がこちらへとやって来ている……と、いうのは俺の予想ではあるが。
まあ、考えられなくもないな。だとすれば一応、次なる戦闘に備えておくべきか。
そうして俺は身構え、まだ見ぬ者達が姿を現すのを待ち続けた……すると。
「お待たせヨルダさん!!助けを呼んで来たわ……って、あら?も、もしかして、もう終わってたりするのかしら……?」
まず最奥へと先陣を切りやって来たのは、あのアダレスやミゲルと共にいた白魔導士、ミアリーであった。
その後彼女に続きぞろぞろと、冒険者であろう複数の者達が入り込んで来る……
「と、とにかく、まずは皆の回復が先ね!!第ニ部隊はアダレスとミゲルをお願い!!ヨルダさん達の方は私達第一部隊が何とかするわ!!」
ミアリーは俺達に目もくれず、口早に皆へそう指示を出すと自身もまた負傷者の手当てを始めた。
なるほど、あの時手負いだったとは言え彼女は回復の専門家であるのだ。
察するに、俺達がダンジョンへと突入した後に彼女は自身の傷を治療し、そのまま助けを呼びに行ったという事なのであろう。流石、三人で竜隠しの岩屋に乗り込もうとしただけはあると言った所か。
とにかく、助かった。これだけの人数がいれば、俺とエスピリカの負担も軽減されるだろうからな。
ん?待てよ?…………しまった!!
そうだ。ここにはエスピリカがいるじゃないか。
もしかするとこれは吉報などではなく。その真逆の凶報、つまりは非常にマズい事態へと繋がる前兆なのかもしれない。
何せ、ミアリーが援軍を呼ぶに至った理由である、『彼女等三人が他の冒険者に襲われた』という一件。その犯人は我が愛弟子であるのだ。
そしてそれ即ち、ミアリーはエスピリカの顔、もしくは名前までもを覚えている可能性が高い。
とは言え、今でこそ彼女は治療に集中していて気が付いていないようだが……しかし、同じダンジョンの同じ場所に、時を同じくして共に立っているのだ。見つかるのは時間の問題であろう。
もしそうなれば、その時は第二の争いが巻き起こるのはほぼ確実……こうしてはいられない。
今すぐに彼女を隠す……のは難しいだろうし、急いで仮面や服を錬成して変装させた方が良いか?
だが、最早互いに目の届く位置にいるのだ。そんな事をしては余計に怪しまれてしまうかもしれない。
でもやらなければ……いやでも、やっぱりやらない方が良いのか?
う〜ん、参った。やるべきか、やらざるべきか……と、とにかく!何か行動しなければ!
そうして腹を決めた俺は、エスピリカを自身の背後へと回るよう促した……のだが。
「よく聞けエスピリカ、ひとまず今は俺の背中に隠れて」
「いいえお師匠様、その必要はありません」
何故だかエスピリカにそれを拒否されてしまい。彼女はその場に佇んだままでいるのだった。
そして、そんな彼女の瞳の奥には。何やら決意のようなものが輝いて見える……
「な、何故だエスピリカ!?何故言う事を聞かない!?このままでは見つかってしまうぞ!?もしそうなれば争いは避けられぬだろうし、最悪の場合お前は捕まり、憲兵に突き出されてしまうかもしれないんだぞ!?」
それから数秒の後、エスピリカは困惑する俺をまるで諭すようにして語り始めた。
「それで良いのですお師匠様、私は咎人です。お師匠様も仰ったようにその罪を償わなければなりません。
それにどの道、アタシの居場所はお屋敷にはもうありません。アタシはヨルダ様を裏切ったのです。今はアタシに対してあまり負の感情の無い妹様が気を引いてくださっているようですが、屋敷に戻れば必ずや厳正な処罰が下される事でしょう。
そして、もう一つ……アタシにはまだやり残した事があります。その役目を果たすためには、アタシがここにいなければならないのです。
ですがお師匠様、そんなアタシと一緒にいてはアナタ様も疑われてしまいます……とは言っても、アナタ様はきっとアタシを見捨てはしないのでしょうね。
……ですから、ここでお別れです」
するとそこで、エスピリカは突然にも俺の腹部に手を当て。
そうする事で俺に〝何か〟を押し付けるようにしたまま、再び話しを続ける。
「お、おいエスピリカ!?お前何を」
「お師匠様、今からアタシの言う事をよく聞いて下さい。アナタ様はアタシによって精巧に作られた人型ゴーレムです。アタシは今から降伏しますが、その前に手駒であるアナタ様を破壊します。
ですが、本当にそうする訳ではありません。破壊したかのように見せかけるために、この『ボムゴーレムの欠片』を使ってアナタ様を吹き飛ばします。
……大丈夫ですよお師匠様、あくまでも欠片ですからそこまでの威力はありません。それに、アナタ様ならばまず死ぬ事はありませんでしょうから。
その後、ほとぼりが冷めた頃にアナタ様はこのダンジョンを脱出して下さい……
……お師匠様、短い間でしたがアナタ様とまたお会い出来て嬉しかったです」
そして、彼女が話し終えた直後。
「ま、待て!!エスピリカ……!!」
「エスピリカは本当に、本当に幸せでした」
目の前で起きた爆風。それによって俺は彼女と選択の余地無くして切り離される事となった。
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