三十八話 誤解だなんてもったいない!!
もしかすると、ひょっとするとだ。
先程、戦いは終わったなどと口にしながらも、その実まだ何一つとしてきちんと終了してはいないではないか!!地上の混乱はどうするつもりだ!?
等々、気にする声があるかもしれない。何処かから上がるかもしれない。
だが心配無用、異議は全くもって不要なのである。
何故そこまできっぱりと言い切れるのか?……フッ、そんなの決まっているだろう?
そのような不平不満など容易に跳ね除けてしまう程、我が弟子エスピリカは優秀であるのだから。
とは言え、それだけでは今度は『納得いかぬ!!もっとちゃんと説明しろ!!』などと叫ぶ声が出そうなので。ここからは戦闘を終えた彼女と俺のその後をざっくりと話していくとしようか。
誰の希望かは俺の知る所ではないにしろ、とにかくお望み通りにな。
まず先も言ったように、争いを止めた俺達はすぐに地上へ降り立つと。
直後、彼女はゴーレム達を操り、俺は単身で動き魔物達の殲滅を始めた。最早何の遠慮もいらぬのだ、本気も本気、全力でな。
すると……やはり野に生きる獣、野生の勘がそうさせたのだろうか。
魔物は俺達が戦いに介入した事を知った途端、散り散りとなって逃げ出して行った。
そう、あの魔物達による百鬼夜行は呆気なくも、そうして瞬く間に幕を下ろしたのだ。
その首謀者(?)であるユーデリアとその姉、ヨルダのみをこの場に残して……
そして最後に、俺は姉妹の無事を確認し。エスピリカも後始末として、鎧武者も含めた全てのゴーレム達を元の素材、元の人間へと戻した所で。
今回の騒動は無事に収まったという訳だな。
……おっと。忘れかけていたが、俺が回収した浮揚石もちゃんとその際にエスピリカへと返還しているぞ。
それに加え、接地直前にマジックバックへ収納しておいた残り二つの浮揚石も合わせてな。
「じゅうなな、じゅうはち、じゅうきゅう……あれぇ?お師匠様、浮揚石が一つ足りないのですがご存知ありませんかぁ?」
「え、ええと、それは……い、一度入手したとなると、どうにも手放すのが惜しいというか、もったいないというか……じゃなくて!!
こ、これはお前へのまず第一の罰として俺が没収したんだ!!お前は反省せねばならない身なのだからな……わ、分かったかエスピリカ?」
「確かに、仰る通りですねぇ……流石お師匠様!!この不肖エスピリカ、その処罰甘んじてお受け致します!!」
……上記のやり取りに関して、何か言いたい事がある者はいないか……?
よし、いないようだな。
とにかく、とにかくこうして事態は収束したのだ。
だがしかし、俺の方には後もう一つ……あれ?二つだったような気もするが……まあ良い。
俺には後もう一つ、果たすべき使命がある。
それはユーデリアの誤解を解く事だ。
あ……いや、誤解ではないか。まあどちらにせよ、俺には彼女の不信感をどうにか払拭せねばならないという重大な任務が残されているのだ。
とはいえ、ユーデリアにとって今の俺は単なる大犯罪者。そう易々と出来るとは思えないが……しかし。
元はと言えば俺のせいなのだ。ならば彼女にはこの俺自身からしっかりと説明せねばならないというものであろう。
それでダメならその時はその時だ。それもまた彼女が持つべき選択の一つであり、逆恨みなど決して出来るものでもない。
最悪もし拒絶され、屋敷を追い出されたら。それはそれで、また放浪の旅に戻るのも良いかもしれないな……
これから我が愛弟子が背負うものと同様、それが俺に課せられた罪の償いになるというのならば。
という事で何とか考えも纏り、ユーデリアに全てを打ち明けると決めた俺は。アダレスとミゲルの介抱をエスピリカに任せ、隅に座り込む姉妹に近付いて行った。
俺の接近を知り、四つの瞳がこちらへと向けられる。
すると、俺よりも先にヨルダが口を開いた。
「……アルス、お前のお陰で助かった。礼を言わせてくれ。私一人ではどうにもならなかっただろうからな……」
「ヨ、ヨルダ……別に、俺は何も」
「そう謙遜するな。お前がエスピリカを止めたのはここからでもしっかりと見えていたぞ。
それに何より、私はお前を信じていたのだからな。お前なら必ず無事に戻って来ると、お前ならきっと奴に勝利してくれると……ありがとうアルス、お前がいてくれて本当に良かった」
どうやら姉の方はこの一件についても、俺の失言についても何ら気にしてはいないようだ。
四つのうち二つである視線が何処か温かいように感じたのも、今にして思えばそれを伝えようとしていたからなのであろう。
だが一方で、残る二つの眼はと言うと……
そこには酷く怯えた、以前のような雰囲気は決してないようだが。それでも、その中には隠し切れぬ程の不安がある……と、容易に分かるような色に染められているのだった。
……これ以上彼女に近づけば、無理に話そうとすれば、余計に恐怖心を与えてしまうかもしれない。
ならいっその事、このまま消えた方が幾分かはマシかもしれないな。それが彼女のためというのならば尚更にだ。
決意したというのに、ユーデリアの目を覗き込むうち次第に心が揺らぎ始め。俺は恥ずかしくも、どうにも口火を切れずにいた……の、だが。
まるで姉妹で競うかのようにして、またもや俺よりも先に話し出したのはユーデリアだった。
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