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三十六話 メイドだなんてもったいない!? 7

「ギャ〜!!誰か〜!!」


「「ユ、ユーデリア!?」」


ゴーレム達を蹴散らし、戦場に舞い降りた。いや、舞い戻って来たのはユーデリアであった。


しかも、またもや大量の魔物を引き連れて……その様はまるで彼等の首領ドンのようだ。


そうして始まったのは『少女術師の錬成祭(エスピリカーニバル)』と、名付けるならば『新米術師の百鬼夜行(ユーデリア・パレード)』との激突。


それはドラゴンが、サラマンダーが、多種多様な魔物達がゴーレムを焼き払い、切り捨て、噛み砕き。あとこれはどうでも良いが大きなスライムがもそもそと天井を這い回り。


「な、ななな何ですかこの魔物達はぁ!?ひ、ひとまず反撃しなさいキメラゴーレム達!!さあ早く!!反撃!!しろ!!」


一方で、突然の敵襲にエスピリカ率いるゴーレム達は動揺しつつも応戦するという……


(ゴーレム達は魔法生物だ。本当に動揺していたかどうかは分からないが)


まさにカオス。彼女が戦場へと真に招いたのは混沌であった。


全く、ユーデリアには困ったものだ。だって二回目だぞ?それもあろう事か、またこんな時に……と、いつもならば説教は免れなかった所だが。


今回だけは許してやるとしよう。


何故ならば、彼女がもたらしたこの混迷は。俺たちにとってむしろ好機、チャンスとなり得るのだから。


「ヨルダ、悪いがユーデリアは任せた。お前は妹を守る事だけに集中してくれ」


「ア、アルス?……それは構わないが、お前はどうするつもりだ?まさか、まだ戦おうというのか?……こんな状況でそれは無茶だ!!それよりもユーデリアを連れてすぐに逃げた方が」


「大丈夫だ、勝算はある。いや、舞い込んで来たと言った方が良いか……ユーデリアのお陰でな」




「アルス、無茶だけはするなよ!?信じているからな!!」


そう言い、ユーデリアの元へと駆け出して行ったヨルダの背を見届けた後、俺は周囲を見回す事を始めた。


幸いにも、魔物達の襲来に対応すべくゴーレム達の注意は殆どそちらに向けられているからな。


つまり、こちらへの攻撃は手薄となっているからこそ落ち着いて状況の確認が可能なのである……まあ、それはともかくとして。


「あぁもう!!魔物達コイツら奥地を縄張りとしているせいか肝が据わってますねぇ……


アタシがいてもなかなか逃げようとしません……キメラゴーレム達!!もっとしっかりしなさい!!さっさとコイツらをここから追い出すんですよぉ!!」


エスピリカに目を遣ると、やはりと言うべきか彼女は未だ困惑を隠し切れずにいた。


……いや、なかなか思い通りにならぬ展開を前にし、『困惑を導火線として怒りに火が付こうとしている』と言った方が正しいだろうか。


そして、それ即ち冷静さを欠いているという事と同義。つまりは隙が出来るのも時間の問題という訳だ。


というか、もう間も無くそれは訪れるだろう……そんなもの、〝アレ〟を見れば一瞬にして理解出来た。


ちなみに俺の言った〝アレ〟とは、天井にいるスライムの事だ。


恐らく奴の動向に気が付いているのは今現在、物見遊山さながらに周囲をキョロキョロとしている俺だけであろうが……


何故だかあのスライム、他の何でもなくエスピリカのみに興味を示しているらしく、天井に貼り付いてからというものひたすらに彼女を目指して移動を続けているのだ。


また、もうじきあのプルプルは彼女の頭上へと到達する……だからそう、あのスライムがエスピリカへと向けて落下する可能性は高く、その瞬間がチャンスという訳だ。


ま、俺の予想が正しければの話だがな。


とは言え、例えそうならずとも「エスピリカ!上にスライムがいるぞ!」などと言えばそれだけで充分、奴は彼女の気を引く仕掛けとなってくれるだろう。


だがそれにしても、あれ程苦戦していたはずの彼女をスライム一つでどうにか出来るとは思いもしなかった……


(まだ出来ると決まった訳ではないが)


ありがとうスライムよ、さっきはどうでも良いなどと言ってすまなかったな。


……と、俺が耳を持たぬ相手に声も無く礼を告げている時であった。


好機という、スライムの形を成して訪れたそれが。遂にエスピリカへと向け落下したのは。




そうなるかもしれぬと、ある程度の予想はしていたが。まさか、これ程までに上手く事が運ぶとは思わなかった……何せ、スライムが俺の予想通りエスピリカへと突撃を開始したのだから。


とは言えその動きは非常に緩慢であり、それはまるで瓶より垂らされた蜂蜜が如くゆっくりと、ゆっくりとした速度で彼女との距離を縮めてゆく。


正直、もどかしくはあった。だがしかし、ここで事を急げば全てが台無しになってしまう。


不意に訪れた好機。敢えて観察に費やしたこの時間。それに何より、あのスライムの努力(?)を無駄にしたくはなかった。


俺はただひたすら、獲物を狙う狩人のように『打倒エスピリカ』へと繋がるであろう絶好の機会を待ち続ける……じれったいと、もうやってしまえと叫ぶもう一人の自分を何とか押し止めながら。


そうして待つ事何と数十秒。だらりと垂れた粘液の塊がエスピリカの頬をぬるりと撫ぜた。


そう。漸くその時がやって来たのだ。


「んん?何ですかぁ、この気持ち悪いのは……って。ぎゃぁあああああ!!ス、スライム!?


こら止めろ!!こっちに来るな!!止まれ!!止まりなさいぃ〜!!こらぁ〜!!」


すると、これまた見込み通り……いや、それ以上の反応でエスピリカは慌てふためき。スライムを押して叩いて、何とかそれを退けようと必死の様子である。


だがしかし。触れはするようだし、スライムそのものが嫌という訳でもないだろうに。


では一体何故、彼女はあそこまで取り乱しているのだろう?


もしかすると、奴が来ると邪魔という以上に何か困る事柄があるのだろうか?……まあ良い、とにかくだ。


……これならいける!


「よし、今だ!!」


そこに勝機を見出した俺は側にいた魔物を蹴り、跳ねるように上へ飛んだ。


エスピリカへと敗北をくれてやるため。

いいね、感想等受け付けておりますので頂けたらとても嬉しいです、もし気に入ったら…で全然構いませんので(´ー`)


投稿頻度はなるべく早めで、投稿し次第活動報告もしています、よろしくお願い致します。

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