三十五話 メイドだなんてもったいない!? 6
そ、そうだったな。
ユーデリアはつい先程になって初めて、俺が国崩しであると知った……というか、俺が知らせてしまったのだ。
逃げるも何もそのような者の指示の下、それも身を任せるというのを不安がるあまりに混乱し、彼女は逃げ出して行ってしまったのだろう。
エスピリカではなくこの俺からな……まあ、その気持ちは充分に理解出来る。
しかし、だからと言ってその選択は誤ったものには変わりがない。
後からついて行くとはいえ、彼女がダンジョン内部を単身で駆けるというのはあまりにも危険が過ぎるというものだ。
兎にも角にも、今は急いでユーデリアの跡を追わなければ。
そうして俺達が一歩踏み出した、次の瞬間。
「逃がすものですかぁ!!うりゃあ!!」
……先に生じた一瞬の隙を突かれてしまい。
エスピリカが出口へと向け放り投げた幾つものゴーレム、それによって道は閉ざされてしまったのだ。
「そ、そんな!?……ユーデリア!!ユーデリア!!」
「クソッ……ヨルダ、構えろ!!今はとにかく戦うんだ!!死にたくなければな!!」
そしてとうとう、俺達は否応無くして戦いに巻き込まれてゆく……
あれから数分が経過しただろうか。
俺はヨルダと共に、今も尚増え続けるゴーレム達と戦いを繰り広げている。
だが、しかし。
「ハァ、ハァ、今ので数匹はやったか……良し!!道が出来た!!ヨルダ、俺が前に立つからお前は」
「待てアルス!!気を付けろ!!〝さっきの奴〟がすぐ側にいるぞ!!」
「何!?しまっ」
突然にもそこで爆撃を受けた俺は、何とか直撃は免れたものの直後に起きた爆風に煽られ、ヨルダと共に壁際へと押し戻されてしまう。
「アルス!!怪我はないか!?……すまない、私のせいで……」
「気にするなヨルダ、それよりも今は自分の身を守る事だけを考えるんだ」
そこからも分かるように、状況は芳しくなかった。
何が原因かと言われると、面倒な事に幾つもある。敵側は勿論として、こちら側にも複数だ。
口には出さないが、こちら側の問題としては特にヨルダが大きい。彼女はユーデリアが心配で堪らないらしく、動きが随分と悪いのだ。本来のものとはかけ離れているとすら言える程に。
しかもその上、どうやら彼女は特製キメラゴーレムに拘束されていた際に腕を痛めてしまったようで……とにかく、今は俺が守りつつ戦わねばならぬような状況にあるのだ。
とは言え、障壁はそればかりではない。
当然、エスピリカもそうだ。正直最初は甘く見ていたが、彼女の成長は想像以上のものであったと今の俺にははっきりと分かる。
そして、それは例の妙技、『少女術師の錬成祭』によって確信させられた。
以前のそれは確か、ただ単にひたすら魔法生物を錬成し続けるといっただけものであったはずなのだが。今回はまるで違う、全くの別物と化しているのだ。
その点をもう少し詳しく説明すると、『今回、彼女の生み出した魔法生物には個性(?)がある』と言えるだろう。
その中で最も厄介なものはヨルダが〝さっきの奴〟と呼んだ、全体的に丸みを帯びた赤黒いゴーレムだ。
このゴーレムにはどうやら爆薬のような物が仕込まれているらしく、何かしらの衝撃によってすぐに爆破してしまうのである。
そう、先程のように……攻撃を起因としてならばまだ対策出来るだけマシなのだが、ちょっとした刺激でもすぐに爆発してしまうのが困りものだ。
こちらはそれに注意しながら、ヨルダとそしてあの特製キメラゴーレムの動向にも意識を傾けねばならないのだから。実質アダレスとミゲルは人質も同然、彼等が爆撃に巻き込まれては元も子もないからな。
と言うか、まずそもそもとしてゴーレム達の戦闘能力が総じて高いように思える。
まあ、これは恐らくエスピリカ……創造主である錬金術師の技の練度、彼女のレベル等がそうさせているのだろうが。
いずれにせよ、今の俺達が窮地に立たされている事には変わりなかった。
「ハァ、ハァ……これは、どうしたものかな」
呟いてみたが状況が一変する訳もなく、ただひたすらに、かつそれでいて目まぐるしく時は過ぎゆくのみ……いや。
一方はまるで蟻の大群のように数を増すゴーレム。もう一方は次第に体力が削られてゆくのを感じつつも動くしかない俺達……むしろただ過ぎるばかりか、時が経つ程に戦況は悪化の一途を辿っていた。
……今回ばかりは、流石の俺もマズいかもしれない。一刻も早く何か良い策を考えなければ。
そう、思っていた時であった。正直まさかとは思った。いや、想像だにしていなかった。
まさか逆転に向けた一縷の望みが、先程姿を消したはずの彼女によって齎されるとは。
「ん?……なあアルス、何やら出口の方が騒がしくはないか?」
最初に予兆に気が付いたのはヨルダだった。彼女が今は戦闘中だと言うのにも関わらず、そういって俺に語り掛けてきたのだ。
「何?……ああ、確かに大きな物音が響いているようだな」
そこで耳を澄ましてみた所、俺にも分かった。何やら大音量で、それも沢山の物音が蠢くように発せられているという事実が。
察するに、ダンジョン内部に棲まう魔物の群れが移動していると言った所だろうか?
だが、今はそんな事を気にしている場合では無い。なので俺がヨルダを諌め、再び戦いに集中せんとした、まさにその時だった。
「だがヨルダ、今は……ん?」
「〜!!〜!!」
今度は人の叫びのようなものが聞こえたかと思えば。それは徐々に大きく、よりはっきりと聞き取れるようになり、そして。
「ギャ〜!!誰か〜!!」
「「ユ、ユーデリア!?」」
数多のゴーレム達を蹴散らしつつ、大量の魔物達を引き連れたユーデリアが戦場へと帰還したのは。
……この光景、見るのは本日二度目となる。
でも、まあそりゃあそうだろうな。行きでも似たような事になっていたのだから、より魔物の多いダンジョン最奥付近でこうならないはずがない。
しかしユーデリアめ、また余計な事をしてくれたものだ。ただでさえ苦戦していた戦闘が、これではまるで混沌とすら呼べるものに……いや!
これはむしろ、好機かもしれない。
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