二十八話 無茶だなんてもったいない!!
「ミゲル、ごめん!!」
「良いから行け、ミアリー!!お前は一刻も早く応援を呼んで来るんだ!!さあ早く!!」
「ムヒヒ……」
「ハァ、ハァ……アダレスはやられちまったが、これですぐに助けがやって来るはずだ!!
どうだ『離業術師』さんよぉ!!これでアンタもおしまいだ!!超大物ってのも大した事ねえなぁ!!まさか化物じみた実力のアンタが、格下相手に一人取り逃すなんて失態を」
「いいえ、予定通りですよぉ。だって、アナタ達はエサなんですからねぇ?
それと、アナタがまだ〝そこに立っていられるのも〟ですよぉ?……ムヒヒ」
「ど、どういう意味だ!?」
「だってアタシ、最初に見た時からアナタを真正面から完膚なきまでに叩きのめすって決めてたんですもの。
大した実力もないクセに偉そうで、どうせ『オレは他の奴等とは違う』とでも思ってるんでしょう?そういうの、大っ嫌いなんですよぉ。
まるで、昔のアタシを見ているようで……ああ、反吐が出ちゃいそうですぅ〜……ムヒヒ」
ヨルダの話。あれのお陰で随分と沢山の情報を入手出来た。
彼女が屋敷を持つに至った理由も。俺の元いたギルドの者達がそのような事件に巻き込まれたのだという事も。そして、彼女が〝例の一件〟の当事者であったという事も。
だが、まだ話を終える事は出来ない。もう一つ、もう一つだけ気になる点があるのだ。
ヨルダは事が起こったのを〝二年前〟だと言った。しかもその場所は『竜隠しの岩屋』だ、名前通り竜の住むダンジョンのな。
当時の俺はこの山地の洞穴にそんな異名があるとは全く知らなかったが……しかし。
もしかするとそれは、俺の弟子が姿を消したあのダンジョンと同じなのではないだろうか?
妙な一致に、俺はどうしてもそう考えずにはいられなかった。そしてとうとう、口を開いた。
真実を確かめるために。
「すまないヨルダ、もう一つ……」
「ところで、さっきからずっと気になってたんだけど、お姉様はどうして私達がここにいるって分かったの?」
……そのはずだったのだが、ユーデリアに先を越されてしまった。
まあでも、それは俺も気になっていた所だ。確かに彼女がここに来た訳はまだ聞いていないからな。という事で、文句は言わずにここは黙っておくとしよう。
すると、ヨルダは背後を振り返りつつこう言い。
「ん?ああ、それはだな。ここにいる使用人が教えてくれたんだ。そうだアルス、お前にも紹介しておこ…………おや?いない……ど、何処だ!?何処に行った!?」
直後に焦った様子でキョロキョロとし始めた。
「そういえば、お前の後ろに女の使用人が一人いたな……それが、いなくなってしまったというのか?」
「あ、ああ、どうやらそのようだ……だが、一体何処に行ってしまったというんだ……?」
「まさか、竜隠しの岩屋に入っちゃったんじゃ……!?お姉様、先生!!こうなったら私達も探しに」
「待てユーデリア!!まだそう決まった訳ではない!!まずそもそもとしてあの者は聡明だ。そのような無謀を、それも独断で行うとは思えない。まずは近場を探すぞ!!お前達も手伝ってくれ!!」
そうしてひとまずはと、俺も姉妹と共に使用人の捜索を開始した……その時だった。
竜隠しの岩屋から、傷付いた一人の女が飛び出して来たのは。
残念ながらそれは探し人の女使用人ではなく、例の三人の中にいた白魔導士、ミアリーであった。
しかしそうでなくとも、負傷したその姿に唯ならぬ気配を感じた俺達は彼女へと駆け寄る。
「あ、貴女は……ヨルダさん!!良かった、貴女も来ていたのね!!」
そんな白魔導士はヨルダの顔を見た途端、僅かに口元を綻ばせ彼女に抱き付いた。
「ミ、ミアリー!!そうか、お前も討伐依頼に……大丈夫か!?怪我をしているのか!?」
「心配ないわ、殆どは擦り傷よ」
「なら良かった。とにかく一度座れ、安静にしているんだ」
そうして地に腰を下ろした直後、彼女の目元からは雫が溢れ落ちる。
余程、安心したようだな。というかこの二人、どうやら見知った間柄であるらしい。
が、今は……いや、今〝も〟黙っておくとしよう。
何故ならば、ここはそんな質問をすべきタイミングでもなければ、俺は聞くに適した者という訳でもないからだ。
適任なのはそう、ヨルダである。
「さあ、聞かせてくれミアリー、中で何があった?」
すると、やはりと言うべきかそんなヨルダから寄越された問い掛けを聞き、ミアリーは声を震わせつつも話し出した。
「実は、中で他の冒険者に襲われたの……ソイツ、かなりの実力者よ……それで、アダレスはやられてしまったんだけど、ミゲルはまだ戦ってる……お願いヨルダさん!!二人を助けて!!」
なるほど、大体の事情は分かった。
察するに、大方まだ姿を現していなかった『合同討伐作戦協力者』の中の何者かが、手柄を独占しようと奇襲を仕掛けて来た……と、言った所であるのだろう、多分。
しかも、それは実力者ときている。ならばヨルダだけでは心配だ。俺も行くとしよう。
まだ彼女から突撃の指示はされていないが、ミアリーとの関係上ヨルダは必ずそうするだろうからな。
そんな未来など、既に予測済みであるのだ。
「ミアリー、話は分かった。だが相手が強者となると、街に応援を呼びに行く方が賢明か……いや、そんな事を言っている時間はないな。
……よし。ミアリー、後は私に任せてくれ。アルス、ユーデリア!お前達はこの者の介抱を」
「待てヨルダ。一人では危険過ぎる、俺も行こう。それに、この周辺には人の気配が無い……俺達の探している使用人もそこにいる可能性が高いからな」
「だ、だがアルス……お前は……」
「こちらには無茶をするなと言うのに、お前は自身の発言を無視するというのか?では俺が同じ事をしても、最早今のお前にそれを止める権利は無いと言えるだろうな……だからヨルダ、お前が何を言おうとも俺はついて行くぞ」
「な!?……フフフ、そうきたか……降参だ、同行を認めるとしよう。だがアルス、いくらお前と言えども油断するなよ?」
「当然だ、俺を誰だと思っている……まあ、そういう事だ。ユーデリア!!お前は彼女を頼むぞ!!」
「えぇ!?ちょ、ちょっとお姉様!?先生!?そんな〜!?」
という訳で、無事共に行く事を許可された俺は。
ヨルダと共に『竜隠しの岩屋』へと遂に足を踏み入れるのであった。
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