二十七話 介入だなんてもったいない!! 2
「……なあミアリー」
「え?なあにミゲル?急に話しかけてきたりして、何なの?」
「ずっと気になってたんだけどよ、凄腕の冒険者って誰だったんだ?オレ、お前らが依頼を受注してた時は王都の方にいただろ?だから結局まだ知らねえんだよな」
「ああそれ?アンタも知ってるくらいの超大物よ?でも、妙な話よね……確か、受付嬢はその人が一緒にいたからあの子に依頼したって言ってたけど、実際会ってみれば本人の姿なんて何処にもないし……」
「だ・か・ら!その超大物は誰だって聞いてんだよ!勿体ぶらずにさっさと教えてくれよ!?」
「もう、相変わらずせっかちなんだから……まあ良いわ、教えてあげる。その冒険者の名前はね……
『離業術師』エスピリカ・ベブライエン。
錬金術師の中ではあの『国崩し』に次ぐ実力者だっていう超大物冒険者、アンタも一度は聞いた事あるでしょ?」
「うわマジかよ!?でもソイツって確か、死んだっていう噂があったような……?」
「ムヒヒ……」
「ん?……おい、誰だテメェ!?まさかさっきの奴等の仲間じゃねえだろうなぁ!?」
「ねえアダレス、あれって……」
「ああミアリー、間違いない。あの者は……」
「ムヒヒ……邪魔者であるアナタ達には、今から〝アレ〟を誘き寄せるためのエサとなってもらいましょう。ですがその代わり、礼としてお伝えしておきますよ。
ご名答です、アナタ達の言うエスピリカとはこのアタシですよぉ……ムヒヒ」
今現在、竜隠しの岩屋で起きている事など露知らず。俺はただヨルダのする話に耳を傾けていた。
「……あれは二年前、私がまだギルドに所属していた頃。
当時の私は仲間と共に国から素材収集の依頼を受け、ある場所の最奥を目指していたんだ。
そして、その場所とは……竜隠しの岩屋。
そう、この場所だ。そこで事件は起きた……とは言っても、あの時の私は酷く焦っていたせいか記憶が断片的なのだが……とにかく、話そう。
最奥、そこにあったのは既に何者かの手によって倒され死骸となっていた巨大なドラゴン……私達は混乱しつつも、目標であるその鱗を手に街へ戻ろうと踵を返した。
だが、背後に何者かの気配を感じ振り返ると……その途端、次々と皆が倒れていった。正直何が起こったのか今でも分からない。
しかし襲われていたのは確かなはずだ。それに気付いた私はすぐに逃げ出した……仲間を助けようなどとは考える暇もなかったよ。
私達を狙った者は間違いなく、こちらが束になっても敵わない程の実力を持っていただろうからな……
その後、何とか街へと逃げ帰った私はすぐさまこの事を国に報告した。
だが私が所属していたのは、国内でも有数のギルド……そのメンバーが瞬く間にやられたなどと知れれば、世間に混乱を招くと危惧したのだろう。
国はその事を隠蔽し、その口止めとして私に莫大な報酬を寄越した……それを足掛かりとして、私はあの屋敷を手に入れたのだ。
そうだ。恥ずかしい話だが、今の私があるのは武勲を立てたからではない。それは仲間の犠牲の上に成り立ったものだ。
つまり、私は国からの提案を受け入れてしまったんだよ……アルスよ、笑いたければ遠慮無く笑ってくれ。
いくら当時の私が金に困窮していたとは言え、仲間を見捨ててしまったという事実には変わりないんだからな……」
そこで一度ヨルダは話すのを止め、俺と視線を合わせた。
察するに俺からの返答を待っているのだろう。どのようにして、どう非難されるのかと恐々とした様子で。
そうするつもりなど、こちらには微塵も無いと言うのに。
「せ、先生!!お姉様を責めないであげて!!確かに事実としてはそうなのかもだけど……でも、お姉様は私の事を想ってそうしたのよ!!
あの頃の私達は、お父様とお母様が流行病でこの世を去ってしまったばかりで、その日食べるものにも困るような有様だったわ……だから仕方なかったのよ!!」
そして彼女に続き、ユーデリアも声を上げる。そのような過去を語った姉を擁護するために。
「二人共落ち着いてくれ、俺は誰も責めるつもりなどない。安心しろ、これまで共に過ごして来た日々を思えば、お前達が悪人でないという事はすぐに分かるさ」
それを聞いた途端、二人は安堵の表情を浮かべる。
俺から何を言われるかと、余程不安だったのだろうな。とはいえ、ユーデリアはともかくとしても、ヨルダは俺の雇い主であるのだ。
だったら雇用主権限(?)で揉み消してしまえば良いものを……いや、俺が信頼している彼女達だからこそ、そうするつもりは端から無かったという訳か。
まあ最も、俺もまたそんな事を彼女達へと直接に言うつもりはないが。
ふっ、お互い難儀なものだな……まあ良い。何だかむず痒いような気分になりそうなのでこの話はここまでとして、話を本題に戻すとしようか。
俺が舵を切らねば、この空気がいつまでも続きそうだからな。
「だからヨルダ、お前は何も心配せずに話を続けてくれ」
「あ、ああ、そうだったな。すまない、これも伝えておかねばと思うあまりに話が逸れてしまった……ええと、それでだな。
そうして事件は公にならなかったのだが、即ち犯人も闇に包まれたままだ。あれから行方知れずとなった仲間達と共にな。
とは言え、あれ以来この場所で何かが起きたという噂も無く、不審な人物が出たという話もない。しかし、だからと言って油断して良い訳がないだろう?
だから私はお前達を止めに来たんだ。もう二度とあのような事を繰り返さないためにも。
これで私の話は終わりだ。アルス、ユーデリア。それが分かったらどうかこれ以上の無茶はしないと私に誓ってくれ、頼む」
そうして今度こそ、ヨルダは口を閉じた。
「ありがとうヨルダ。全て話してくれた事感謝する。それに、お前の言いたい事も良く分かったよ」
対して俺は彼女に礼を告げた後、頷いて見せた。
あの三人を完全に許したかと言われれば嘘になるが、それでもヨルダの想いを無下にするつもりはない。したくはない。
だからこそ、俺は彼女の願いに同意の姿勢を見せ、つまりはそれを聞き入れたのだ。またそこからも分かるように、ここで俺達の役目は終了となる。
討伐依頼をキャンセルしたとなれば、ユーデリアのこれからのギルド探しにどう影響するかは未知数(勿論悪い意味で)だが、それでもだ。
という事で、この件についてはこれで本当に終わり……と、言いたい所だが。
俺の中には新たにもう一つ、心に引っ掛かる〝ある点〟が生じてしまっていた。
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