二十六話 介入だなんてもったいない!!
「よし、もうすぐマガル丘陵だ!!後はここを真っ直ぐ東に行けば!!……エスピリカ!!準備は出来ているか!?」
「えぇ、準備万端ですよぉヨルダ様……ムヒヒ」
例の三人組に心無い言葉を浴びせ掛けられた後、そのままダンジョン前に取り残されてしまった俺達であったが。
「うぅ……っていうか、アダレスさんさっき凄腕の冒険者がどうとか言ってたけど……あれってどういう意味かしら?……あぁダメダメ!!思い出したらまた腹が立って来たわ……!!」
「さあな。ところでユーデリア、そろそろ立てそうか?」
「え?ええ、まあ、体調の方は何ともないからね。っていうか先生、これからどうするの?ま、まさか、あの三人の跡を追うとか言い出したりしないわよね……?」
「いや、そのまさかだ」
「えぇ!?本気で言ってる!?」
漸くユーデリアも落ち着いてきたという所で、遅ればせながらも遂に行動を開始すべく立ち上がった。
とは言っても、その行動とは三人の跡を追うという何の捻りもないようなものであるがな。
「ああ、本気も本気だ。さあ行くぞユーデリア、アイツらに先を越される前にな」
「ちょ、ちょっと待って……ねえ、先生ってば!!正気なの!?ミゲルさんの言ってた事、忘れた訳じゃないでしょ!?あの人、私達がついて来たら殺すって……」
だが、ユーデリアはそうと知った途端に動きを止め、俺の指示に抗う姿勢を見せた。
完全に怯え切っているな、可哀想に。まあ、格上の者にあそこまで突き放されてしまったのだ、その気持ちは充分に分かる……が。
「入り口が一本道なんだから仕方ないだろう?……安心しろ、これ程大きな洞穴なんだ。きっと中は入り組んでいて迷路のようになっているだろう。なら、俺達はそれを使って先回りすれば良いというだけの話さ」
「で、でも……!!」
「分かっている、それでももし奴等と鉢合わせたらと不安なんだろう?……それも気にするな。そうなった場合は俺がどうにかする。
…………悪いなユーデリア、俺もまだまだ子供なのかもしれない。
あそこまで言われてしまっては、流石に黙っていられなくてな……!!」
前述した通り理由はある。だからこそ動くのだ。
ただしその理由とは、我が事ながらまた随分と幼稚ではあるがな……とは言え。
俺にだってある僅かなプライド、それに火を付けたのはあの三人であるのだ。だから、例えそれが傲慢なのだろうと、自惚れだろうと。
こうなればもう、奴等よりも先に依頼を達成してやらねばならないのだ。
何故ならば、そう……怒りに燃えるこの自尊心を慰めてやる方法など、他にありはしないのだから!!
「だ、だけど……!!」
「ユーデリア、俺が信じられないか?」
「いや、そういう訳じゃないけど…………ああもう、分かったわよ!!その代わり頼んだわよ先生!!もし何かあった時は必ず私を守ってよね!?」
「勿論だ、さあ行こう」
さて、ではユーデリアも説得出来た所でそろそろ行動に移すとしようか。
という事で俺は彼女の手を引き、ダンジョンへと足を踏み入れ……ようとしていたのだが。
「待てお前達!!そうはさせんぞ!!」
あの三人とはまた別の、もう一人の者によって俺達は再び行く手を阻まれてしまう。
そして、その人物とは……ヨルダだ。
彼女が使用人を引き連れ、俺達の前へと姿を現したのだ。
「ん?今度は誰だ……って、お、お前は!?」
「お、お姉様!?どうしてここに!?」
まさか、ヨルダに邪魔され……じゃなくて、彼女に介入されるとは夢にも思わなかった。
しかし、本当にどうしてなんだろう?何処かで情報が漏洩した、または漏らしたような記憶は無い。誓ってそうだと言える。
でもまあ、ただ一つ確かな事があるとすれば……それは、『俺達は今危機的状況にある』という事であろう。
「どうしてここにいるだと?それはこっちの台詞だ!!……さあお前達。私にも納得出来るようきちんと説明してもらうぞ……?」
何て言ってる場合じゃないぞ、これは。
実際として怒気を纏っているヨルダに叱られ……いや、それだけで済めばまだ良いが。
最悪の場合、解雇されてしまうかもしれないな。何せ俺達の所業が主殿にバレてしまったのだから。
兎にも角にも、説明しろという命令が出されたのだ。
そこで俺達は事の次第を彼女へと説明した……すると。
「なるほど、そういう事か……アルスよ。お前にも言いたい事は幾つかあるが……まあ、お前は何も知らぬようだし、今回は見逃すとしよう。
問題はお前だユーデリア!!お前は〝ここがどんな場所なのか〟知っているはずだろう!?なのに何故こんな事を……!!」
「ご、ごめんなさいお姉様……で、でも、詳しく話したりしたら先生にも反対されそうだったし、それに、あの話は……」
「言い訳をするな!!全く、お前は自分が何をしようとしていたのか分かっているのか!?」
などと言うように、結果として俺は解雇も、落雷も回避出来たようだ。ユーデリアという名の避雷針のお陰でな。
だが、何だろう。姉妹の会話を聞いていると、ここは単なる危険だけが棲まう場所ではないように思えてくる……少し気になるな。
そこで、俺はその疑問を口に出してみる事とした。
「なあ、一つ良いか?」
「ん?どうしたんだアルス?今はユーデリアにこの場所がどれだけ危険かというのを話しているんだ、悪いが話なら後にしてくれると……」
「いや、実はその事についてなんだが。さっきからお前達の話を聞いているとどうにも気になってしまってな……
お前達の言うそれは、単なる危険ではなく何か含みがあるように感じる。良ければ俺にも詳しく教えてくれないか?ここで何かあったというのか?」
そして、それを聞いたヨルダは。
「……まあ、お前も色々と打ち明けてくれたんだ。ならば私も話しておくとしようか」
顔に影を落としながらも、そう言って頷いてくれた。
そうしてヨルダは語り始め、俺は耳を傾ける。
……それが原因だろうか。
その時にはもう、ヨルダの背後にいた使用人が姿を消していたという事実に、俺達は誰一人として気が付かなかった。
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