二十四話 協力者だなんてもったいない!!
先駆けたユーデリアのせいで身を隠す意味がなくなり、俺もまた彼女と同様、洞穴前に立つ複数人の者達への接触を決めた。ただし。
「……はぁ」
自身よりも先に草藪を抜けた溜め息からも分かるように。仕方なく、やむを得ずそうしているというだけなのだが……まあ、とにかく。
俺はおもむろに立ち上がるとそのまま草藪を出、一歩、また一歩と彼女に追随するかのように脚を動かし始める。
自身の左目へと、〝ある細工〟をしながら。
そんな俺は亀であり、一方のユーデリアは兎と言った所だろうか。
事実、脱兎が如く全力疾走を見せた彼女は既にあの者達の前へと辿り着いており、それどころか談笑さえしていた。
もしや、彼女の知り合いか何かだったか?
いやでも、どうやら歓喜しているのはユーデリアだけのようだし。
それにあの者達の方はと言うと、そんな彼女とは真逆にその対応、立ち居姿などに何処か冷たい印象を受ける。
もっと言えば、彼女を邪険にしているかのようだ。だとすれば最初の予測は間違いである可能性が高いだろう。
だがそれにしても、その態度はあんまりではないだろうか……数瞬、そう思いはしたが。
まあ確かに、あの者達からして見れば何者かがいきなり近付いて来たかと思えば、そのまま興奮気味に何やら語り始めているのだ。
なら、そうなるのもある種当然と言えるのかもな。むしろ危害を加える者達でないと知れただけまだマシであろう。
「先生先生!!早く早く!!」
のそのそと歩く俺を見、痺れを切らしたのかユーデリアがこちらへと手招きを始めた。
俺はもう、すぐそこにいると言うのに……という事で俺は彼女の召集を無視し、一切として速度を変えぬままに歩き続けた。
「ごめんね先生!!私焦っててすっかり伝えるのを忘れちゃってたんだけど……今回の依頼は対象が指名手配って事もあってね、他のギルドの人達とも合同で討伐を進める話になっていたの。
で、それがこの御三方ってわけ!!しかもこちらの方々はあの有名なギルド『魔倒千』のメンバーでもある凄腕の冒険者さん達なの!!ほらほら、先生も握手してもらうなら今のうちよ!!」
「握手するかどうかはともかく……ユーデリア、今度からそういう事は忘れずにもっと早く伝えておいてくれ」
彼等の正体も、俺からの不満も以上だ。つまりはそういう事であったらしい。
だからこの者達は一応、俺達の仲間という訳だな……というか、さっきも言ったがそういう大事な話はもっと先にしておいて欲しかったぞ、ユーデリアよ。
まあ良い。では素性も判明した所で俺も自己紹介くらいはしておくとするか。
ただ、それに使用するのは偽名だし、何なら顔に仮面を付けたままではあるけどな。
とは言ったものの、偽名を考えていなかった。
ええと、そうだな……
「俺も彼女と共に今回の討伐依頼に参加する…………ユリス、『ユリス・ヒルデミア』だ。三人共、よろしく頼む」
ま、こんなんで良いだろう。
ちなみに言うと、この偽名は俺の本名『アルス・アルキミア』と、その生徒『ユーデリア・ヒルデガルン』を適当に混ぜ合わせた事によって作られているぞ。
制作期間は脅威の二秒である。とは言え何を隠そう、俺は錬金術師なんだからな。こんな錬成(?)など朝飯前なのだ。
「えっ、ユリス?先生何言って……ふぐっ!?」
そしてその直後、余計なお喋りをしようとしたユーデリアは俺がしっかりと口止めしておいた。時間が無かったので物理的に。
すると、俺の語りに応えるためと冒険者の一人が口を開いた。
「俺はギルド魔倒千、サブマスターのアダレス・ザイルマン。職業は剣士だ」
銀の頭髪と紅色の瞳、長身の体躯を包む鎧は頭髪と同様のシルバーに輝いている。年齢は俺よりも上であるのは確実であろう。
と、そのような姿形をしたこのアダレスという名の男は自身をサブマスターと言った。
ふむ、ギルドの幹部、それも右腕的存在がわざわざ現場に出向いて来るとは。ならば、今回の討伐対象はそれ程の相手と見て相違ないだろうな。
まあ指名手配されているのだし、ある程度予測はしていたが……それはともかくとして。
どれどれ、コイツのステータスは……
[ Lv ]38
[ 体力 ]3045
[ 魔 力 ]240
[ 攻撃力 ]311
[ 防御力 ]320
[ 俊敏性 ]478
レベルにしては攻守共に優れており、それはあのヨルダにも見劣りしない程。と、言った所か。
おお、これは確かになかなかのものだ。サブマスターの称号は伊達ではないようだな。
ああそうそう。言い忘れていたが、今の俺はあの鑑定眼鏡に更なる錬成を加え、その上で眼球に貼り付けられる程小型化した名付けるとすれば『鑑定透鏡』を左目に付けているので相手のステータスを可視化出来るのである。
(俺が『自身の左目へと、〝ある細工〟をしながら』と言ったあの時に装着したのだ)
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