十九話 指導だなんてもったいない!! 2
アトリエで起きた一件。
あれから教育係とその生徒という間柄となった俺とユーデリアの、指導とそしてギルド探しの日々は幕を開けた。
その後数日間。俺達の錬金術修行、ではなく授業と。街での練り歩きは昼夜を問わずして続けられた。
授業は朝食前と夕食前に小一時間程、基礎的な部分から始めた。ユーデリアの知識が偏っていたからだ。
「ねえ、そう言えばアンタ……じゃなくて先生。戦闘経験は大事だってこの前言ってたけれど、それって大体どのくらいとかいう基準はあるのかしら?」
「先生はやめろと言っているだろう……まあ良い。ええとそうだな、大まかに言えば『自身の作った武器でゴブリンを二、三匹、それも単身で撃破可能』なくらいと言った所だろうか。まあ、これは俺の私見だがな」
「えぇ……そ、それって本気で言ってる?」
「ああ、それも〝最低限〟このくらいだぞ」
「…………」
そんな授業風景はと言うと、こんな具合である。
彼女は錬金術の知識自体はまあそこそこであるが、一方でギルドや戦闘と言った関連の事柄となるとからっきしだったからな。まずはそこからだ。
そして、それが終わると俺達は街へと繰り出した。
当然ギルド探しのため、ついでに一応補足しておくと朝食の後に、それも俺の方は変装をしてな。
屋敷から続く長い坂の終わりにあるこの街は『リゾルセン』という、異国での〝資源〟と言うような意味の言葉由来の名が付けられており。
そこは北、西の二方を森と山に囲まれた自然豊かな街でこそあるが決して過疎地という訳ではなく。むしろ王都との距離がそこまで離れていない事もあってか物資に富んだ、人流の絶えないまさに資源豊富な豊穣の土地であった。
(にも関わらず、以前この街を俺は『王都から若干離れている』と言ったが、別に嘘を吐いた訳ではないぞ。若干離れているという事はつまり、そこまで離れていないという事でもあるのだからな)
そしてそれ即ち、そんな資源と人々とを脅かす存在である魔物や賊には予め対策がされているという事と同義。
だとすればこの街のギルドは殆ど機能していないか、もしくはそれ自体が治安維持等の目的で公職化していて所属そのものに難儀する可能性が高いと言えるだろう。
などと考えていた、俺の予測は正しかった。
「な、何でよ……どうしてなの……どうして!!どうして何処のギルドも私を雇ってくれないのよ〜!!」
「まあまあユーデリア、ひとまず落ち着け。と言うか、俺にまで注目が集まると困るんだよ……」
「でも〜!!」
そう……上記のユーデリアと俺との会話からも分かるように、彼女のギルド探しは困難を極めていたのだ。
何せ前述したような理由に加え、彼女は知識はともかくとしても技能、実戦経験の不足が否めないような状態であるのだからな。
そのせいで、なかなか彼女を雇ってくれるようなギルドを見つけられなかったのだ。やはりと言うべきか……
ちなみに、そんなユーデリア・ヒルデガルンのステータスはと言うと。
[ Lv ]17
[ 体力 ]1153
[ 魔 力 ]94
[ 攻撃力 ]84
[ 防御力 ]70
[ 俊敏性 ]60
とまあ、このような具合である。
もう一つちなみに言うと、これは俺が予備として所持している幾つかの鑑定眼鏡のうちの一つで確認したから間違いはないはずだ。
はっきり言わせてもらうと低い、低過ぎる。その一言に尽きる。
勿論、非戦闘職である事を加味してもだ。と言うか、その上で俺は言っているのだし。恐らくは今の今までロクに外出もせず、引き篭もって錬金術の練習ばかりしていたのだろう。
ユーデリアには悪いが、これでは彼女を引き入れてくれるギルドなどとても見つからないだろうな……例えその組織の懐が広くとも、深くともだ。どんなものにでも限度というものは存在する。
とは言え正直に打ち明けると、俺個人としては動揺は無く、またそれでも全く構わないとも思っている。
むしろ安堵しているくらいだ。答えは簡単、ここで彼女が諦めてくれればヨルダの悩みが一つ解消されるのだからな。
それに何より、ユーデリアがこうして就職難に陥る事など容易に想定出来たのだし……まあ、詰まる所。
俺にとって今の状況は好都合であり、このままでも良い。
いや、このまま〝で〟良いのだ。
「どうしよう先生〜!?私このままだと……本当に、どうしたら良いのよ〜!!」
「だから先生はやめろって、あと叫ぶのもだ……なあ、今日の所は一度撤収して、屋敷で策を練るとしないか?今のお前はとても冷静と言えるような状態では」
「やだー!!」
「だから、大声を出すなって……全く。それ以上騒ぐつもりなら、俺は屋敷に帰らせてもら」
「やだ!!行かないで!!一人にしないで〜!!」
「おま……ったく、本当に帰るからな!?」
「やだ〜!!」
とまあ、そうして状況も芳しくなく、また彼女も駄々っ子のように喚き散らかしていた事から俺はユーデリアを置き去りにして実際に帰宅した訳だが。
油断し、彼女から目を離したのが原因だろうか。
翌日、ユーデリアは思いも掛けないような事件(?)を引き起こすのである。
「…………………………ムヒヒ」
「ムヒヒ……そこのお嬢さん。何やらギルド探しでお困りのようですねぇ?それなら、アタシに良い考えがありますよぉ?」
「あら、貴女何処かで見たような顔ね?……まあ、今は良いわ。それより!!何なのその良い考えって!?是非教えて頂戴!!私今切羽詰まってるのよ!!」
「ムヒヒ、それはですねぇ……」
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