一話 捨て置くなんてもったいない!!
元々、ギルドのメンバー達にすら見放されてしまうような落ちこぼれであったものの。
いつしか国に仕え、国内最強の錬金術師と呼ばれるまでになっていた俺、アルス・アルキミアだが。
その後、『国崩し』と渾名されるようになってしまい。居場所を追われ、命を奪われかけ。
斯くして、戦闘によって薄汚れた様相のまま、放浪の旅を始める事になってしまったワケだが……当然行く当てなどなく、途方に暮れていた。
「まあでも、言うほど困る事はないか。
最悪食料や生活用品は錬金すれば良いし、入浴は川ですれば良いし……でも。
やっぱり、野宿はあんまり好きじゃないんだよなぁ……」
そうして暫くの間、俺は当てもなく彷徨い続けていたのだが。
突如として目の前に現れた立看板を見、漸く足を止める事となった。
そこには掠れた文字で『セルパ大森林』とある。
それは確か、ドラゴン等のように強力な魔物といかないまでも、一般人では歯が立たないような魔物が多く、そう言った者達の中では禁足地とされていた場所であったはずだ。
そう、俺はその事を知っていたのだ。いや、知らぬはずもない。だからつい歩みを止めてしまったのだ。
何故ならばその場所は。過去に俺のいた故郷とも呼べる、小さな村の付近にあった森なのだから。
とは言え、随分と昔の話だ。それに現在の俺は天涯孤独同然の身であり、その村に戻る理由も無ければ頼る相手も無い。
だから、その村に行くつもりも無い……無い、が。
「宇宙の石は文字通り宇宙より飛来する石だ。大地の上ならば何処にだって存在の可能性はある……一応、行ってみるか」
セルパ大森林は別だ。一人呟いてみたように、素材を発見出来る可能性がある。
という事で、俺は立看板の先へと足を踏み入れて行った。
セルパ大森林のその中で、俺は素材を採取しながら歩いた。
ただしお目当ての宇宙の石は見つからず、マジックバックを満たすものは『大樹の葉』や『薬草の素』などなど、イマイチな素材ばかりであったが。
でもまあ、それならそれで集めまくるつもりだ。
俺は何と言うかこう、『質より量になっても失った分集めまくればそれはそれで安心』みたいな性分をしているからな。なので暫くの間はここでウロウロとさせてもらおう。
魔物が来たって勿論大丈夫、と言うか大歓迎だ。
大抵の奴は拳だけでどうにかなるし。それに、むしろソイツらからの方が、より貴重な素材を入手出来るかもしれないんだからな……
「キャー!!」
そんな風に考えながら歩いていた俺の耳を、突如として女性のものであろう劈くような悲鳴が駆け抜けた。
そしてそれは、間違い無くこの大森林の中から聞こえて来た。恐らくここが禁足地と知りながらも、薬草か何かを目当てとして足を踏み入れた者がいたんだろう。
俺はすぐに、声のする方向へと向けて走り出した。
人間の恐怖する対象と言えばやはり魔物。つまりその者の近くには、貴重な素材がある可能性が……
じゃなくて人命が最優先だからだ。それが失われるというのを、捨て置いては決してならないからだ。
本当だ。
「誰か助けてー!!」
段々と声がより鮮明に、より大きく俺の耳に届くようになってきた。
その声の主が近いと言う事だろう。それはつまり、素材も……待ってろ素材!
じゃなくて、助けを求む者よ!!
「ここか!!」
そう予測し、俺は立ち塞がる草木を掻き分けて前進した。
すると、その先はひらけた平地のようになっていて、やはりと言うべきか声の主はそこにいた。
その女性は今、大木を背に蹲っているようだ。しかも怯えているのか、しきりに身体を震わせている。
……まあでも、そりゃそうだろな。
何せ女性の目の前には、その数倍以上の体格と全身に赤い鱗を持つ、四つ脚の蜥蜴のような魔物、サラマンダーがいるのだから。
そうとなれば怖がるのが普通だ、当たり前なのだ。俺はそうではないから怯みすらしていないというだけで。
ちなみに、そんな俺はと言うと。
「……!!そ、そこに誰かいるの!?お願い!!誰でも良いから助けて!!」
「お、おぉ……火精霊の鱗!火精霊の牙!あれだけのサイズなら採り放題だ……やった!!」
「え……何あの人、喜んでる……!?」
何やら、女性がこちらへと向けて助けを求めているようだったが……正直、それどころではなく。
サラマンダーとの遭遇に興奮するあまり、図らずも顔に笑みを浮かべてしまっていた。
でも、仕方ないだろう?以前の戦闘で失った素材達には到底及ばぬとは言え、こちらもまたなかなか貴重な素材には変わりない。
それを手に入れるチャンスがやって来たのだから。
そしてそのまま、つまりは笑顔のまま、俺はサラマンダーへと近付いて行った。
それを見たサラマンダーは迫り来る俺を敵と認識したらしく、こちらへと向き直り牙を剥いた。
一方で、女性は……何やらドン引きしている様子だ。
何故だろう……ああ、笑顔のせいか。でも、その反応は流石にちょっと酷いんじゃないか?
結果的にとは言え望み通り助けてやるんだから、せめてそんな表情は胸の奥に隠しておいて欲しかった。
「……まあ良い、始めるか」
とにかく。胸の内に渦巻くもやもやとした感情を抑え、俺はサラマンダーを睨み付ける。
〝ギャアアアアアア!!〟
すると、サラマンダーはそれを挑発と見做したのか、突然まるで絶叫のように叫ぶとすぐさま俺に飛び掛かって来た。
「なかなかの迫力だな……だが、それはお前の断末魔だ!!喰らえ!!」
攻撃を受けた俺もすかさず走り出して拳を振るい、魔物と俺とは交錯する。
そうして一人と一匹の位置が入れ替わった時。
勝敗は、既に決まっていた。
突如としてサラマンダーの体からポロポロとまるで雨のようにして、俺の手が触れた部分から鱗が剥がれ落ち始めたのだ。
「……!?信じられない……!!あのサラマンダー相手に、あんな……!!」
だが、それは驚く事でも何でもない。どうやら女性の方はただ一人声も出せずに驚愕しているようだが、やはり俺にとってはそうでもない。
何故ならば……と言うか、別に何も特別な理由などないのだが。これくらいの魔物など、俺の相手ではないからだ。
むしろ、殺さずに素材だけを狙っているので、難易度は若干上がっているくらいだ。だからまあ、所謂ハンデ有りみたいなものだろうか、こちらとしては。
ま、それでやられるくらいの実力なら、端からこんな真似はしてないけどな。
〝ギャアアアアアア!?〟
しかし、当の相手であるサラマンダーまでもがそんな結末を迎える事など想像もしていなかったらしく。
大蜥蜴は慌てるように今一度大きく叫ぶと、こちらに背を向けて一心不乱に逃げ出して行った。
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