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十七話 意見なんてもったいない!! 2

「ただ正直に言えば、少し前にアトリエを覗込んでいたあの時から答えは決まっていたのだがな……」


「……い、良いわよ。いいから早く聞かせて頂戴」


そうして、俺の述べた見解は。


「確かに、悪くない。悪くはない」


「えっ、本当!?良かった、アンタなかなか話し始めないから緊張したのよ……でもそれなら」


「だが」


「え?」


「それは〝美術品としては〟だ。そうと見れば刀身やつかの意匠はなかなかだと言えるだろう。


しかし使い勝手となると話は別だ。見た目だけに拘った操るに不向きなこの刀剣を手に戦地へと赴く者は皆無のはず。しかもそれを〝戦闘経験の無い者〟が作ったとなれば尚更にな」


「えっ!?ア、アンタ。何で分かったの……!?私が戦闘経験が無いって……!?」


導入部分の時点で既に、酷く彼女を驚かせる結果となった。




別に何も、先に述べた意見はただの勘でもなければ、彼女を貶めるための非難がたまたま当たったというものではない。


これにはきちんとした理由があるのだ。彼女の作ったこの刀剣を見ればすぐに分かった、ある理由がな……


「ね、ねえアンタ、どうして分かったの!?あと、何処を直せば良いと思う!?お願い教えて!絶対怒ったりしないから!ね、だからお願い!!」


では彼女もそう言っている事だし、ここからはユーデリアにも分かるよう説明していくとしようか。


「良いだろう。だがその前に一つ質問だ。


ユーデリアよ。ギルドに所属する生産職の多くは工房でアイテムや武具などの生産、製造を主とし戦闘職の者達の手助けを行う。


にも関わらず、所属したばかりの頃はまず自らが戦地に赴き、戦闘職と共に戦いに参加するのが一般的であるのだが、それは知っているか?」


「え?ええまあ、それは知っているわよ。と言うか常識でしょう?」


「では、その理由は?」


「え……ええ、と……新人いびり、とか?」


「……まあ確かに最近では制度が形骸化し、そうなっている所も少なくはない。けれどそうではないんだ。


それは仲間と共に戦い、作戦を立て、そして自ら作り上げたアイテムや武具を使用する事で、『使用者の立場』を知るためだ」


「使用者の、立場?」


「そうだ。彼等が本当に求めている物を作り上げるためにな。


例えばお前の作ったこの刀剣、まず第一に重過ぎる。恐らくは『戦うのならばより頑丈に』とそうしたのだろうが、これでは機動力が削がれてしまっていけない。


次に言うとすれば、それは『柄の部分までもが刀身と同一素材で作られている』という事だな。


まあこれは単に制作者のスキルの練度や、他には知識、素材の偏りなんかもあるだろうが……しかし、理由がどうであれ使用者にとっては致命的だ。


同じ鉄で出来ているという事は、炎暑ではその者の手を焦がし、反対に寒冷地では凍傷を引き起こすだろうからな。


とまあ、他にも指摘は多々あるのだが……大きなものとしてはこれくらいか。


逆に言えば、そうであったからこそお前の戦闘経験の有無などすぐに分かった」


「そ、そう……私、何も知らなかったわ……使用者の立場ってそんなに大切だったのね……」


「気にするな、これから覚えていけば良い。


だが、これで分かっただろう?戦闘を学ぶのはそれが例え非戦闘職であっても非常に大切な事なんだ。


本来我らを助け、我らが助けなければならない者達が死地に赴く事のないようにな……と、最初の質問の答えについてはこれくらいか。


それで二つ目は。まあ、もう話してしまった事ではあるが……お、そうだ。これ少し借りるぞ」


「あ……そ、ソレ、どうするの?」


「どうするも何も、実演して見せてやろうかと思ってな。


ええと、そしたら最低限、この刀剣はもう少し素材を抑えて軽量化して……次は柄を、そうだな……今出来るとすれば、ここにある魔物の皮なんかを材料にしてそこを覆えば……と。


よし出来た、まあ大分マシにはなっただろうな。ただ性能の引き換えとして、見た目は随分と簡素なものになってしまったが。


だがこれで、きっとこの刀剣は真にその役目を果たしてくれるはずさ」


「あ、あぁ……な、なんて事なの!?凄い、凄いわ!!元が私の作ったものだなんて思えないくらいよ!!」


以上。


これで説明は終わり、実演ついでにユーデリア作の刀剣をより戦闘向きへと作り変える事も出来た。


よって、俺からの指導は一旦終了とさせてもらお…………あ。


そう言えば、ついその場の勢いで彼女の作品に手を入れてしまった訳だが、彼女は怒るだろうか?いや、自信作だったんだから間違いなく怒るよな?


マズい。もしかすると、これは。


暴言レベルのヘマをしでかしてしまったのかもしれない、どうしよう。




「ユ、ユーデリア。も、もしかすると俺は、お前に謝らねばならない事を」


数秒の後、覚悟を決めて恐る恐る振り返ると。


「凄い!!お世辞なんかじゃないわよ、本当に凄いわ!!やっぱりアンタ、結構腕が良いのね!!」


「あ……あ、ああ。ありがとう」


彼女は未だ、興奮冷めやらぬと言った様子でいた。幸いな事にも。


それでは俺も、ほとぼりが冷めぬうちにここを立ち去るとしようか。冷静になったら彼女の怒髪が天を衝くかもしれないからな。


「ま、まあこれで分かっただろう?それじゃあ、俺はこの辺りで屋敷に戻らせてもらうぞ、邪魔したな……」


という訳で、俺は部屋に戻るべく歩き出す……


「待って!!」


直前、ユーデリアに袖口を掴まれてしまう。


「な!?」


彼女のその顔に、表情に、怒気など微塵も見当たらない。それどころか今の彼女は俺に好意すら向けている、そんな事はとうに分かっていた。


だがそれでもいつ逆鱗に触れるかと。いやもしかすると、もう触れてしまっているのではないかと。


どうにも疑心に駆られ、俺はほんの少しビクビクとしているもう一人の自分を抑え切れずにいた。


の、だが。


ユーデリアからは予想外の反応が返って来た。


「ど、どうしたんだユーデリア?俺からはもう何も」


「お願い!!これからも私に錬金術の指導をして欲しいの!!」


「…………え?」

いいね、感想等受け付けておりますので頂けたらとても嬉しいです、もし気に入ったら…で全然構いませんので(´ー`)

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