十六話 意見なんてもったいない!!
そうしてお得に出来上がった一品こと、変装の必需品『竜骨の仮面』。
「どれどれ、ちょっと付けてみるか……」
俺はすぐさま、まずは試しにとそれを装着してみる。
「ちょっと!!アンタ何呑気に試着なんてしてるのよ!!良いからさっさとそれに使った材料返してよ!!返せ!!」
何やらまた先程のように、逆上を始めたユーデリアを横目に。
……はぁ、せっかく錬成にて作り上げた物をフィッティングしている真っ最中だと言うのに、全くもって喧しい事この上無い。
この娘は一体何が気に入らぬのだろう?仮面は俺の自作であり、何も彼女から奪い取った訳でもないというのに。
だがそれにしても、数秒前までの様子とはえらい違いだ。目付きや態度こそ相変わらずではあったが、それでも意外と素直に受け答えするその姿に。
『もしかすると、姉に色々と気を配るあまりギスギスとした親しみにくい雰囲気を醸し出していたというだけで、こちらこそが本来の彼女なのではないだろうか?』
と、思い始めていたが。
残念ながらそれは見当違いだったようだ。誠に遺憾ながら……あの時の彼女は何処に行ってしまったのだろう?是非とも戻って来てもらいたいのだが?
まあとにかく、そんなユーデリア・〝ヒステリック〟はさておいて仮面の調子はと言うと。
うむ、なかなか悪くないな。竜の骨が顔によく馴染む。加えてスライムリキッドを素材として使用したためか、ザラつくような質感もなく実に滑らかだ。
ありきたりな材料ばかりを使用したが、これなら顔を隠すのには充分……いや、むしろそれだけの用途にしてはもったいない程の品質、まさに一級品クラスであると言えよう。
そしてそれ即ち、何処にでもあるような素材が錬金術師の手によって昇華したと同義であるのだ……まさにこれこそ、錬金術の醍醐味というヤツだな。
「…………」
などと考えていると、いつの間にやらユーデリアが仮面越しに俺の顔をじいっと見つめているのに気付いた。
「……どうした?」
「あ、いや別に……何でもないわ……」
とは言いつつも、ユーデリアは俺に目を向けたまま微動だにせず。興味無さげなその発言とは裏腹に彼女の視線は一心に仮面へと注がれている。
まさに舐める様に、上に下に、右に左に……と、そこで漸く。
俺はその様子から彼女がアルス・アルキミアではなく。それを隠すようにして存在する、竜骨の仮面に着目していると悟った。
そして数秒の後、ユーデリアは言う。
「……ねえ。アンタ、素材はもういいからさ、その代わり私の武具もちょっと見てくれないかしら?第三者からの意見が欲しいのよ。アンタ結構良い腕してるみたいだしさ、ね、良いでしょ?」
やはりと言うべきか、俺の予測は正しかったようだ。彼女が興味を寄せていたのは俺でなくこの装備であったという、その予測がな。
だが、少し見直した。
知識への欲望、探究。それでこそ錬金術師というものだ。彼女もそのうちの一人だったと知れて俺は満足である。
ではそんな一人の錬金術師へと敬意を表し、そのお手並み拝見させて頂くとしようか。
「良いだろう。それくらいなら容易い御用だ」
俺はアトリエの壁へと、そこにある彼女製作だという武具へと目を向けた。
ユーデリア製作の武具、それはずらりと並んでこそいる。
が。形が悪い意味で妙であったり、歪であったりと、何だかどれもアドバイスの難しい一品である。
まあでも、その中で最も中央にある一つの刀剣。それだけはまだまともだ。恐らく彼女はこれを見て俺に意見してほしいという事なのであろう、多分。
もしそうでなければ、その時は「斬新だ!」とか何とか言ってどうにか誤魔化すしかないか。
とにかく、俺はその刀剣を数秒前のユーデリアが如くじっくりと見つめる……とは言え、そうしたとて既に答えは決まっているのだがな。
しかし……敬意を表すると言った手前嘘は言いたくないが。でも、なぁ……
「なあユーデリア、その前に一つ良いか?」
「え?ええ、どうかしたの?」
「その、ええと、何と言うか……質問なんだが。ここでした発言によって、俺やサブリ……俺と共にこの屋敷へとやって来た使用人の立場が悪くなるという事はないよな?」
「何それ、もしかしてそんなに酷い出来なの……?ま、まあ良いわ。アンタがここで何を言おうと私はアンタや、アンタのお友達の使用人をクビにしたり、お姉様に告げ口したりもしないわ、逆上だって絶対にしないと約束してあげる。これで良いかしら?」
良し、言質は取れた。
これで俺が純粋な暴言以外何を吐こうがここの家主姉妹の怒りを買う事も、サブリナが無職になる心配をする必要もないという訳だな。それなら安心だ。
さて、懸念も解消された事だ。早速だが本題に入るとしよう。俺は口を開いた。
「ああ、それさえ聞ければ充分だ。では、言わせてもらうが……」
「……」
ユーデリアがごくりと固唾を飲むその音が、俺の耳にも届いたような気がした。
それだけ彼女はこの作品に向き合い、誇りを持った上で作り上げたという事なのだろう。だからこそ俺からの意見を、それ程までの緊張の中待ち続けているのだ。
ならば殊更に、安易な嘘や無駄な配慮などするべきではないな。
真っ直ぐに錬金術へと向き合うユーデリアには俺もまた真っ直ぐに接し、そして見解を述べてやらねばなるまい。
では、いい加減それを伝えるとしよう……
「ただ正直に言えば、少し前にアトリエを覗込んでいたあの時から答えは決まっていたのだがな……」
「……い、良いわよ。いいから早く聞かせて頂戴」
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