15話 社交部 再始動
「社交部再開の時だ」
聞き慣れた声に、空気が一瞬、遅れて揺れる。
レオンハルトだった。
彼は部室を一瞥して、少しだけ苦笑した。
「そろそろ」
「みんなも、同じ結論に行き着いたころかと思ってね」
誰も否定しない。
言葉にすれば、終わってしまうと分かっていた。
「でも」
彼は一歩、前に出た。
「それじゃ、ダメなんだ」
「ーーいや、違うな」
一度、言い直す。
「嫌なんだ」
「僕が、ね」
その言葉は、弱音に近かった。
だが、逃げではなかった。
「とりあえず」
「ついてきてくれ」
理由は説明されない。
双子が顔を見合わせ、セリウスが肩をすくめる。
フィオレは何も言わず、アルトリアだけが、彼の背中をじっと見ていた。
ーーこの人は、まだあきらめていない。
廊下を進み、階段を上がり、
辿り着いたのは。
「ーー相談室?」
公式相談室の前で、レオンハルトは立ち止まった。
「正確には」
「“元”相談室、だね」
扉を開ける。
振り返りながら大げさなしぐさで仰々しく言い放つ。
「紹介しよう」
「ここが」
「新しい社交部の部室だ」
沈黙。
次の瞬間、ざわめきが弾けた。
「え?」
「は?」
「正気?」
レオンハルトは、淡々と続ける。
「ははっ いい反応だ」
「役割が同じだと言うのなら」
「僕たちが、残ってもいいんじゃないかってね」
セリウスが即座に反応する。
「ーー論理としては、通るが」
「通りはすれど、反感も買う」
「承知の上だ」
レオンハルトは、机の上に書類の束を置いた。
「必要な承認は」
「すべて取ってきた」
分厚過ぎて、逆に現実味がないほどだ。
「幸い」
「社交部に味方してくれる人は、多くてね」
双子が小さく口笛を吹く。
「やるじゃん、部長」
「強行突破じゃん」
「僕の手柄じゃない」
「僕たちが積み重ねた信頼さ」
(場所が変わる)
(それでもーー)
レオンハルトは、彼女を見る。
「社交部に必要なのは」
「部屋じゃない」
ゆっくりと、しかし確かに。
「“答えを出さない姿勢”だ」
「それが許される場所なら」
「どこだっていいだろう?」
アルトリアは、思わず問いかけた。
「ーーそれでも」
「監視は、続きます」
「だろうね」
彼は笑った。
「それならいっそ」
「ここがいい」
アルトリアは、しばらく黙っていた。
レオンハルトは、静かに続ける。
「ここは」
「僕が以前間違えた場所だ」
「でも今は、君がいるから」
アルトリアは一歩、部屋に足を踏み入れる。
「ーーなら」
「ここに、居ます」
それは許可を求める声ではなかった。




