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貴族の次男として入学したら、社交部に囲われました  作者: 仮眠


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14話 社交部 廃部?

 あれから一週間。


 社交部の部室は、開いている。

 だが、活動はしていなかった。


 机は整えられ、茶器も洗われ、帳簿も更新されている。

 それでもーー相談者の姿はない。


 来ても、断るからだ。


 理由は明確だった。

 公式相談室からの監視。

 そして、競合しないあり方か、別の存在意義か。

 「社交部の在り方」が示せていない現状。


 部室には、いつもの顔ぶれが揃っていた。

 だが誰もが、いつものように振る舞えない。


 双子はソファに腰掛けているが、からかいの言葉は出ない。


「ーーつまんないね」

「ねー」


 それが冗談にならない空気だと、二人とも分かっている。


 セリウスは机に肘をつき、書類を一枚見つめたまま動かない。


(続けるなら、定義がいる)

(だが、定義してはいけないものもある)


 彼はそれを、誰よりも理解していた。


 フィオレは壁にもたれ、アルトリアを盗み見る。


(ーー誰も喋らない)

(これは、良くない沈黙だ)


 アルトリアは窓際に立ち、外を見ていた。

 視線は遠く、しかし思考はここにある。


(ここは、借りだったのか)

(それともーー)


 誰も「再開しよう」と言わない。

 言えないのではなく、測っている。


 その沈黙を破ったのは、扉を叩く音だった。


 相談希望の生徒。

 だがセリウスが立ち上がり、丁寧に断る。


「今は、受け付けていない」


 扉が閉まり、空気がさらに重くなる。


 そのとき、アルトリアが口を開いた。


「ーーこのままはよくない」


 全員の視線が集まる。


「一度、考えるべきだと思います」

「社交部は、誰のための場所なのか」


 核心だった。


 双子が真っ先に反応する。


「救う場所?」

「それ、公式と被るよね」


「癒す場所?」

「ふわっとしすぎ」


 セリウスが続ける。


「逃げ場、というのも問題だ」

「依存を生む」


 誰も否定しない。

 どれも、正しい。


 アルトリアは、静かに言った。


「ここは」

「“答えを出さない場所”です」


 一同が、息を呑む。


「問題を解決しない」

「判断を代行しない」

「逃げ道も、用意しない」


 淡々と、しかし明確に。


「ただし」

「話すことは、止めません」

「一緒に考えることは、拒みません」

「帰る場所を、否定しません」


 沈黙。


 その定義は、あまりにも社交部らしく、

 そして同時に、あまりにも危うかった。


 セリウスが、ゆっくりと口を開く。


「ーーだが」

「それを“役割”として示すことはできない。それを存在意義としては認めてもらえんだろう」

「それに、示してしまえばもうーーここは、ここではなくなる」


 アルトリアは、頷いた。


「はい」

「役割を示したら、もう」

「ここは、ここではありません」


 その言葉に、全員が納得してしまった。


 だからこそーー結論は、一つしかなかった。


「ーー廃部、か」


 誰かが、ぽつりと呟く。


 誰も反論しない。

 それぞれが、静かに立ち上がり始める。


 双子が肩をすくめ、

 フィオレが何か言いかけて、飲み込む。


 アルトリアは、最後まで動かなかった。


(部長、ごめんなさい)

(もう信じることはできないーー)


 そのとき。


「ーー待ちたまえ」


 扉が開く。


 全員が振り返る。


 そこに立っていたのは、レオンハルトだった。


 公式相談室の制服のまま。

 だが、その表情は、はっきりしている。


 場が、鎮まる。


 彼は、ゆっくりと一歩踏み出し、言った。


「社交部再開の時だ」


 誰も、すぐには理解できなかった。


 だがーー

 その声には、迷いがなかった。

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