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貴族の次男として入学したら、社交部に囲われました  作者: 仮眠


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閑話 アルトリアは頼らない

 人を頼るのが、怖いのだと。

 アルトリアは、最近になってから自覚した。


 昔から、そうだったわけではない。


 屋敷にいた頃。

 父は、敵ではなかったが、完全な味方ともいえなかった。

 正妻の視線を避けるようにしながら、最低限の庇護だけは与えてくれた。


 そして、数人の侍女たち。


 中でも一人ーー

 アルトリアが、密かに慕っていた人がいた。


 母が屋敷に置かれなかったため、

 幼い頃のアルトリアにとって、

 その侍女は「一緒に過ごす時間のいちばん長い大人」だった。


 剣の稽古で転べば、そっと膝を拭いてくれた。

 夜、眠れないときには、話をしてくれた。


「大丈夫ですよ、お嬢様。そのうちわかってもらえますから」


 ーーその言葉を、信じてしまった。


 ある日。


 正妻が近くを通りがかった時、

 その侍女と談笑しているところを見られた。


 視線が、冷たく刺さったのを覚えている。


 翌日、その侍女はいなかった。


 理由は、説明されなかった。

 解雇されたのだと、後から聞いただけだ。


「余計な情をかけた」

「立場を弁えていない」


 そんな言葉が、どこからかきこえてきていた。


 アルトリアは、何も言えなかった。


 自分が慕ったせいで。

 自分が、頼ってしまったせいで。


 それが原因だと、

 誰も明言はしなかった。

 でも、幼心に、そうだと、理解してしまった。


(ーーああ)


 頼ると、失うのだ。

 慕えば慕うだけ、失ったときに苦しい。


 自分が助かる代わりに、

 誰かが、切り捨てられる。


 それ以来。


 アルトリアは、学んだ。


 人に寄りかからない。

 期待しない。期待されない。

 守られようとしない。


 自分で立てる範囲で、生きる。


 それは、生存のための選択だった。


 今。


 学院で、社交部で。

 隣に立とうとする人たちがいる。


 あの時とは状況が違う。

 そんなことはわかっている。

 それでも、心のどこかで、

 線を引いてしまう。


(同じことは、繰り返さない)


 誰かの善意が、

 自分の存在のせいで、壊れることがないように。


 だから。


 守られない立場を、選ぶ。


 それがーー

 アルトリアにとっての、生き方だった。

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