木枯らし吹けば誰が儲かる
テーマは『木枯らし』
『第7回「下野紘・巽悠衣子の小説家になろうラジオ」大賞』の対象となる超短編作品です。
『もしもし』
「もしもし、どうした?」
『明日、暇?』
「まぁ暇だけどなに?」
『じゃあ遊ぼう』
「いいけど。……バイトは?」
『木枯らしでクビになった』
「は? ……どういうことだよ。風が吹いてなんとかが儲かるみたいな話か?」
『いや、木枯らしでバイト行けなかったんだよ。風が強くてさ』
「なんでだよ。風が強いくらいで休むなよ」
『そうは言うけどさ。風が強いってめっちゃ危ないからな』
「でも木枯らしでそんな話聞いたことないけど」
『……そもそもお前木枯らしって何か知ってるのか?』
「そりゃ、詳しくは知らないけどさ」
『だろ? だったら―――』
「なんか冷たくて強い風じゃないの?」
『……いやまぁそれはいいんだけどさ』
「何? 合ってるの?」
「いやそれはいいんだけどさ! 木枯らしがどうとかどうでもいいから!」
「お前が言い出したんだけど」
『うちの周りって風が強いんだよ。たまにものすごいことになってんの』
「ふーん」
『すげえ生返事。全然信じてないだろ。たぶん地形がどうのとかなんだろうけど、ほんとすごいんだから。嘘じゃなくて』
「いや別に嘘とまでは思ってないけど。そりゃ場所によっては多少風が強くなりがちなところとかあるだろうし」
『多少じゃないんだって』
「どのくらい?」
『木がへし折れるくらい』
「……やばいじゃん」
『だから言ってるだろ。そんな中バイトとか行ってられないから。無理』
「うーん、まぁ、だったらしょうがないのかなぁ」
『だろ? しょうがないんだって。あと木枯らしめっちゃ寒いし』
「まぁ寒いならしょうがないか」
『いや寒いのは我慢しないとだめだろ』
「……」
『こういう理不尽なこともあるわけよ。世知辛い。世間の冷たい風にさらされてしまった』
「まぁ同情の余地はあるのかもしれないけどさ。……実際、そうは言っても信じてもらえないだろうし」
『そうなんだよなぁ。―――と、そういうわけで色々と枯れてしまったわけよ』
「……色々ってなんだよ」
『寒いことになってる財布とか』
「……はぁ。まぁいいよ。この間お世話になったから今回は俺が持つよ」
『助かる』
「今回はな。次はそうならないようにちゃんとしとけよ」
『わかってる。で、明日はどうする?』
「なんでもいいけど。風が吹いてもいいところで」
『おけ。―――風だけに』
「は?」
『風だけに』
「寒すぎて木も枯れる」




