第64話:最後のステージとユニットの絆(挿絵あり)
67話の完結まであと少し!
生成AIで画像を作ってみました。
この話数から自動で作っただけなので、本文や他の画像との矛盾はご容赦ください。
最終形態となったゼノンの力は、まさに規格外だった。その巨体から放たれる憎悪の波動は、大地を割り、空気を震わせ、ただ存在するだけで周囲の生命力を奪っていく。
「行け、アレス!」
俺の号令で、守護巨神アレスがゼノンに殴りかかるが、その剛腕は、ゼノンが展開した歪んだ空間の障壁にいとも容易く受け止められてしまう。逆に、ゼノンの一撃がアレスの装甲を抉り、巨体をよろめかせた。
「プロデューサー号、最大出力で援護しろ!」
上空の『空中機動工房プロデューサー号』から、セレスティーナが遠隔操作する魔導カノンが火を噴く。だが、それすらもゼノンの障壁には通じない。
「くそっ、ラスボスが硬すぎるだろ!」
俺は悪態をついた。
「工房長、このままではジリ貧です! 何か手は!」
地上で仲間を援護していたアルドが、通信機越しに叫ぶ。
「…手は、一つしかねえ」
俺は、覚悟を決めた。
「いいか、みんな、よく聞け! これが、俺の最後のプロデュースだ! 俺とアスカロンを『センター』に、アルド、ハンナ、セレスティーナ、お前たち三人を『バックコーラス兼ダンサー』として、五人の魂を完全に同期させる! 俺たちの絆の力で、最高のハーモニーを奏でるんだ!」
俺の、いつものアイドル理論に基づいた作戦指示。だが、その言葉が持つ本当の意味に、仲間たちは気づいていた。それは、自らの魂を触媒として、仲間たちの力を極限まで引き出す、諸刃の剣。
音楽の世界には『倍音』という概念がある。一つの音(基音)を鳴らした時、その整数倍の周波数の音が同時に微かに鳴っており、この倍音の構成比率の違いが、ピアノやヴァイオリンといった楽器の『音色』の違いを生み出すのだ。俺の作戦は、俺とアスカロンの魂を『基音』とし、仲間たちの魂をその『倍音』として完全に調和させることで、全く新しい、奇跡の『音色』を生み出すという、荒唐無稽なものだった。
「そんなことしたら、フィン君の体が…!」
ハンナの悲痛な声が聞こえる。
「やかましい! プロデューサーってのはな、自分の身を削ってでも、最高のステージを創り出すもんなんだよ! お前たちは、俺の覚悟に応えろ! 俺を信じろ!」
俺の決意に、三人は涙を堪え、しかし力強く頷いた。
「…分かりました、工房長。最高のバックダンサー、務めさせてもらいます!」
「うん…! フィン君の歌が、一番輝くように、全力で踊るから!」
「はい…! 私の魔法で、マスターのステージを、世界で一番、綺麗に彩ります…!」
この、感動的な師弟の絆のやり取りを、船橋で聞いていたベアトリスは、わなわなと震えていた。
(始まった…! 魔人の、最後の儀式が…! 自らの魂を贄として、仲間たちの魂を強制的に共鳴させ、その力を暴走させることで、敵もろとも全てを消滅させる、禁断の自爆術式! 『ハーモニー』ですって!? あれは、魂の断末魔が奏でる、破滅の交響曲だわ!)
「よし、フォーメーションを組むぞ!」
俺は、アスカロンを天に掲げた。
「Aメロはハンナのディフェンスで敵の攻撃を凌ぎ、Bメロはアルドのアタックで隙を作る! サビで、俺とアスカロン、そしてセレスティーナの魔法が、最高のユニゾンでハモる! 行くぞ!」
俺の、ライブの曲構成にしか聞こえない指示に、王国軍の将軍たちは、なぜか涙を流していた。
「おお…! なんという完璧な連携術式だ!」
「Aメロ…Bメロ…サビ…! 我々には理解できぬが、きっと、古代の軍神が用いたという、必勝の呪文なのであろう!」
五人の魂が、共鳴増幅システム『アンサンブル』を介して、繋がり始める。
俺の『魂魄の瞳』が、指揮者のように、五つの異なる魂の波長を、完璧な和音へと調律していく。
アルドの燃えるような赤い闘気、ハンナの大地のような緑の守護、セレスティーナの知的な青い魔力、そして、俺のプロデューサーとしての黄金の情熱。
その全てが、聖剣アスカロンの、どこまでも純粋で、清らかな白銀の輝きへと、収束していく。
「見ろ、ゼノン! これが、俺のプロデュースした、最高のアイドルユニットの、本当の輝きだ!」
ゼノンは、その五色の光が織りなす、あまりにも美しく、調和の取れた魂の輝きに、一瞬だけ、見惚れていた。
「…美しい。だが、それ故に、破壊せねばならん!」




