第62話:巨神降臨と『P』の圧力(挿絵あり)
67話の完結まであと少し!
生成AIで画像を作ってみました。
この話数から自動で作っただけなので、本文や他の画像との矛盾はご容赦ください。
巨神アレスが戦場にその威容を現した瞬間、グラーヴェ平原の空気は一変した。それまで互角に見えた戦いの天秤が、目に見える形で王国側へと大きく傾く。王国兵の士気は天を衝く勢いで高まり、逆に帝国の奴隷兵団の動きは、明らかに精彩を欠き始めていた。
「見ろ、ベアトリス団長。これが『プレゼンス』の力だ」
俺は、『空中機動工房プロデューサー号』の船橋から、得意げに解説を始めた。
「真のトップアイドルってのはな、ステージに立っているだけで、その場の空気を完全に支配するんだ。歌うまでもなく、踊るまでもなく、その存在感、オーラだけで観客を圧倒する。アレスは、まさに生まれながらのセンターだ。あいつがいるだけで、うちの兵士たちは『勝てる!』と確信し、帝国の連中は『終わった…』と絶望するのさ」
「ぷれぜんす…」
ベアトリスは、ゴクリと喉を鳴らした。
(存在感…オーラ…。違う! あれは、巨神が放つ精神的圧力! 敵味方を問わず、広範囲の生命体の精神に直接干渉し、士気を操作する、究極の戦略兵器! なんて恐ろしい…! あの巨神は、ただの物理的な破壊兵器ではなかったというの!?)
俺の言葉を、彼女はいつものように完璧に、そして致命的に読み違えていた。
人間や動物が、自分よりも遥かに巨大な存在に対して本能的な畏怖を感じるのは、進化の過程で、マンモスのような大型の捕食者から身を守るために脳に刻まれた、原始的な生存本能の名残だと言われている。アレスがやっているのは、要するにそれだ。圧倒的なデカさで、敵をビビらせているだけである。
「工房長、敵将ゼノンに動きが!」
セバスチャンが、遠見の水晶を指さした。
仮面の将軍ゼノンは、アレスの登場にも動じることなく、静かにその右手を掲げた。すると、彼の体から膨大な紫黒の魔力が溢れ出し、奴隷兵団を操っていた無数の糸が、より太く、より強固なものへと変わっていく。
怯えかけていた奴隷兵たちの動きが、再び統制を取り戻した。いや、以前よりもさらに機械的で、無機質なものへと変貌した。彼らは、アレスという巨大な恐怖を前にしても、一切の躊躇なく、ただ命令のままに突撃を開始した。
「ちっ、ファンの心を無理やり縛り付けて、強制的にライブを盛り上げようってか。最低の演出だな」
「アレス! ファンサービスの時間だ! あの鬱陶しい奴隷兵どもを、ステージから掃除してやれ!」
俺の命令を受け、アレスはゆっくりと、しかし圧倒的な質量を伴って、その巨大な右腕を振り上げた。
帝国兵は、ついに来る破壊の一撃を覚悟し、目を閉じた。
だが、アレスの拳は、奴隷兵団そのものではなく、彼らの頭上、何もない空間へと叩きつけられた。
ゴオオオオオオオオオオッ!
拳から放たれたのは、物理的な衝撃ではなく、凄まじいエネルギーの『波動』だった。
大気が震え、空間が歪む。その衝撃波が、奴隷兵たちを操っていた無数の紫黒色の魔力の糸を、まるでギターの弦をまとめて断ち切るかのように、物理的に『引き千切った』のだ!
「なっ…!?」
後方で見ていたゼノンが、初めて驚愕の声を漏らした。
魔力の糸を断ち切られた奴隷兵たちは、まるで電源を落とされた機械人形のように、バタバタとその場に崩れ落ち、二度と動くことはなかった。
「どうだ、ゼノン。お前のその細くて脆い絆なんざ、俺たちの愛の波動の前じゃ、ひとたまりもねえんだよ」
俺は、メガホンを通してゼノンに語りかけた。
「魂ってもんはな、糸で縛り付けるもんじゃねえ。心で繋ぎ、共鳴させるもんなんだぜ」
この光景を、王国軍の将軍たちは、畏敬の念を持って見つめていた。
「なんという戦術だ…! 敵兵を一人も殺すことなく、その戦闘能力のみを完全に奪い去った…!」
「これぞ、フィン工房長が目指す、新時代の戦…!」
船橋では、ベアトリスが震える手で記録を更新していた。
(魔力の糸を…物理的に断ち切る…!? なんて馬鹿げた、しかし、あまりにも強力な戦法! 彼は、魔法という繊細な法則を、圧倒的な物理法則で捻じ伏せた! これが、彼の言う『パーフェクト』の真髄! どんな小細工も、絶対的な力の前に無意味だと、ゼノンに、そして我々に見せつけているのだわ…!)




