第61話:決戦開始と『完璧』なる布陣(挿絵あり)
67話の完結まであと少し!
生成AIで画像を作ってみました。
この話数から自動で作っただけなので、本文や他の画像との矛盾はご容赦ください。
夜が明け、グラーヴェ平原に決戦の火蓋が切って落とされた。地平線の彼方から、黒い津波のように押し寄せるゼノンの魂なき奴隷兵団。対する王国軍は、俺、フィン・アッシュフォージのしっちゃかめっちゃかな軍事会議の結果、なぜか空前の士気を見せていた。
「よし、みんな! いよいよ開演だ! 最高のステージで、帝国の連中を熱狂の渦に叩き込んでやれ!」
『空中機動工房プロデューサー号』の船橋から、俺は魔導拡声器を通して檄を飛ばす。眼下では、将軍たちが俺の言葉を忠実に(そして独自に解釈して)実行に移していた。
「聞けい、我が騎馬隊の者ども! 我らはステージを駆けるダンサーだ! フィン工房長の教えに従い、敵の側面を華麗なるステップで攪乱せよ!」
騎兵隊長が叫ぶと、騎馬隊はまるで舞うように敵軍の側面へと回り込み、ヒットアンドアウェイ戦法を繰り返す。その動きは、奴隷兵団の統率をわずかに、しかし確実に乱していった。
「弓兵部隊はコーラス隊だ! 我らの歌声(矢じり)で、敵の進軍を食い止めるのだ!」
弓兵部隊から、無数の矢が放物線を描いて空を舞う。それは奴隷兵団の頭上に降り注ぎ、彼らの進軍速度を効果的に削いでいた。
「メインボーカルの出番だ! 我ら重装歩兵こそが、このライブの主役! 圧倒的な声量(防御力)で、センターを死守せよ!」
王国軍の中核をなす重装歩兵部隊は、巨大な盾を並べて鉄壁の防衛線を形成し、奴隷兵団の津波を正面から受け止めていた。
「…なんなのだ、これは…」
船橋の隅で、ベアトリス団長が呆然と呟いていた。
「軍隊の動きではない…。まるで、一つの巨大な演劇を見ているようだわ…。フィン・アッシュフォージ、貴様は、この数万の命がぶつかり合う戦場を、自らが演出する舞台としか見ていないというの…!?」
「ふむ。見事なものですな、工房長」
セバスチャンは、優雅に紅茶をすすりながら感心している。
「あなたの『アイドルフォーメーション』は、各部隊の役割を兵士たちに強く意識させ、自らの持ち場におけるパフォーマンスを最大化させるという、極めて高度な心理的効果を生み出しているようです」
そうなのか? 俺はただ、それっぽいことを言っただけなんだが。
戦況は、一見すると王国軍が優勢に進めているように見えた。だが、奴隷兵団は痛みも恐怖も感じない。じりじりと、数の暴力で防衛線が押し込まれ始めていた。
「ちっ、観客のノリが悪いと、こっちのテンションも上がらねえな…」
後方で戦況を眺めていたゼノンは、仮面の下で静かに眉をひそめていた。
(…奇妙な采配だ。一見、無駄な動きや連携が多い。だが、それによって生み出される予測不能なカオスが、我が奴隷兵団の画一的なアルゴリズムを、わずかに混乱させている…。これは、計算か? それとも、ただの狂人の戯れか…?)
ゼノンですら、俺のプロデュース理論の真髄を理解できずにいた。
「よし、この辺でテコ入れが必要だな!」
俺は、ニヤリと笑った。
「スペシャルゲストの登場だ! 俺たちの秘密兵器を投入する! 出てこい、アレス!」
俺の合図と共に、王国軍本陣の後方から、大地を揺るがす巨大な影が姿を現した。王国の守護巨神『アレス』。その圧倒的な存在感に、王国軍の兵士たちから、地鳴りのような歓声が上がった。
「うおおおおっ! アレス様だ!」
「守護神のご登場だ!」
帝国の魂なき兵団も、その本能に刻まれた恐怖からか、一瞬だけ動きを止めた。
はるか後方のゼノンが、初めてその仮面の下で、明確な敵意と興味の入り混じった表情を浮かべた。彼の『魂魄の魔眼』が、アレスの巨大なスネに刻まれた、一つのアルファベットを、確かに捉えていた。
『P』
「…来たか、フィン・アッシュフォージ。貴様の、本当の『作品』が」




