第54話:天空のプロデューサー号(挿絵あり)
生成AIで画像を作ってみました。
この話数から自動で作っただけなので、本文や他の画像との矛盾はご容赦ください。
アルドが傷から回復し、相棒レイジ・ブリンガーとの感動の再会を果たした翌日、第零工房はこれまでにない熱気に包まれていた。
工房の中庭だった場所には、巨大な船の竜骨が据えられ、王国中から集められた最高の職人たちが、俺の指揮の下、世紀の大プロジェクト『空中機動工房プロデューサー号』の建造に汗を流していた。
「バルバロッサ顧問! 『歌う石』の調子はどうです!?」
「うむ! このドワーフ謹製の特殊音叉で叩けば、実に心地よい反重力の歌を奏でるわい! まさに最高のボーカリストじゃ!」
工房の中央で、バルバロッサが巨大な水晶のような石を、巨大な音叉でコンコンと叩いている。彼にしか聞こえない『歌』を聞きながら、反重力フィールドの出力を微調整しているのだ。音というのは空気の振動、つまり波だ。そして、全ての物質は特定の周波数で振動しやすい性質を持っている。これを固有振動数という。この『歌う石』は、特定の周波数の音波を受けることで、周囲の重力子に干渉する未知のエネルギー波を放出する、とんでもない超古代文明の遺物なのだ。
「セレスティーナ! 浮遊魔法陣の描き込み、進捗は!?」
「は、はいぃっ! 船体下部の第7ブロック、完了しました! 魔力の流れ(フロー)も、完璧です!」
足場の上では、セレスティーナが巨大なコンパスと定規を使い、幾何学的な魔法陣を船底に描き込んでいた。集中すると少しだけ舌を出す癖があるようで、その真剣な横顔と、作業の邪魔にならないようにたくし上げられた白衣から覗く、健康的な太もものラインが、俺の創作意欲を激しく刺激する。うん、実にいい仕事だ。
「ハンナ! 資材運搬、助かるぜ!」
「任せて! これくらい、畑仕事で鍛えてるから平気よ!」
ハンナは、資材を運んでくれていた。そのたびに、汗で張り付いたシャツが、彼女のけしからんボディラインをくっきりと描き出していた。あの引き締まったくびれと、そこから広がる豊かなヒップラインの対比…! まさに黄金比! 彼女の存在そのものが、この現場の士気を最高に高める、最高の『福利厚生』だった。
そして、俺の役目は、この巨大な船体に最高の『魂』を吹き込むこと。
俺は船体の骨格となる金属素材の魂を『魂魄鍛造』で鍛え上げ、その強度と耐久性を極限まで高めていた。
「いいか、お前ら! これからお前らは一つのユニットとして、大空にデビューするんだ! センターの奪い合いはステージの上でやれ! 今は心を一つにして、最高のハーモニーを奏でるんだ!」
俺が巨大な竜骨に叫ぶと、船体全体からキィィンという心地よい共鳴音が響き渡った。
◇
そして、運命の起動実験の日。
全ての準備が整い、工房のメンバーと、視察に訪れたルミナス公爵や王宮の重鎮たちが見守る中、俺は船橋となるべき場所に立ち、メガホンを構えた。
「これより、我らが『プロデューサー号』の、記念すべき処女航海を始める! バルバロッサ顧問、ミュージック、スタート!」
「応!」
バルバロッサが、合図と共に『歌う石』を巨大な音叉で叩いた。ブゥゥン…という、低く、しかし心地よい振動が船体全体に広がっていく。
「セレスティーナ! 魔法、点火!」
「は、はいぃっ! 浮遊魔法陣、最大出力!」
セレスティーナの号令で、船底に描かれた無数の魔法陣が一斉に青白い光を放った。
ゴゴゴゴゴゴゴ……
大地が揺れ、巨大な船体が、ゆっくりと、しかし確実に、地面から数センチ浮き上がった。
「おおっ!」
「浮いたぞ!」
職人たちから、歓声が上がる。
だが、その瞬間だった。
船体が、ガクン、と大きく傾き、不安定な振動を始めた。
「だ、ダメです! 魔力の流れが安定しません! 各所の魂の共鳴が、バラバラです!」
セレスティーナの悲鳴が響く。
「くそっ、デビュー直前にメンバー同士で喧嘩しやがったか!」
俺は悪態をつくと、船内で最も巨大な鋼材が使われている、船の背骨たる竜骨部分へと駆け出した。
「お前がリーダーだろ! もっとどっしり構えて、他のメンバーをまとめ上げんかい!」
俺は竜骨に手を触れ、『魂魄鍛造』の槌音を響かせた。
バラバラだった船体各部の魂が、一つの大きな調和の取れた魂へと統合されていく。
この光景を、安全な場所から見ていたベアトリスは、顔面蒼白だった。
(始まった…! 天翔ける要塞に、最後の魂を吹き込む、降魔の儀式が…! あの男、城そのものを、一個の巨大な生命体として、この世に顕現させるつもりだわ!)
俺の『魂の調律』によって、船体の振動は嘘のように収まった。そして、プロデューサー号は、静かに、そして雄大に、大空へとその巨体を持ち上げていく。
眼下には、豆粒のようになった王都の街並みが広がっていた。
「見たか! これが、俺のプロデュースした、最高のアイドル事務所だ!」
俺が高らかに勝利を宣言すると、地上から、割れんばかりの歓声が上がった。
その頃、帝国の秘密観測所では、一人の密偵が震える手で本国へと報告を送っていた。
「き、緊急報告! 王国、巨大な浮遊要塞の建造に成功! 天空より、我らを監視、攻撃する拠点…浮遊要塞が出現せり! 繰り返す! 浮遊要塞が出現せり!」
その報告は、仮面の将軍ゼノンの元にも、即座に届けられた。
仮面の下で、彼の口元が、楽しげに歪んだ。
「面白い…。戦場が天にまで広がったか、フィン・アッシュフォージ」




