第48話:初めての敗北(挿絵あり)
生成AIで画像を作ってみました。
この話数から自動で作っただけなので、本文や他の画像との矛盾はご容赦ください。
「見せてやるぜ、ゼノン! これが、俺たちの絆の力だ!」
再び対峙した奴隷兵団を前に、アルドは不敵に叫んだ。彼の首元で、ハンナとセレスティーナの胸元で、共鳴増幅システム『アンサンブル』が力強い光を放っている。三人の魂は、目に見えないネットワークで一つに繋がり、その力は個々の総和を遥かに超えていた。思考が、感情が、まるで高速のデータ通信のように共有され、互いの次の動きを予感させる。
「はあっ!」
アルドの一振りは、以前とは比較にならないほどの重さと速さを持ち、奴隷兵団を紙くずのように薙ぎ払う。ハンナの作る土壁は、アルドが切り込んだ瞬間に彼の背後を守るように、さながら要塞のように堅固に隆起する。そして、セレスティーナの魔法は、まるでハンナとアルドの思考を先読みするかのように、敵の陣形が最も薄くなる一点を的確に攻撃し、突破口を切り開いていく。
「す、すごい…! 私の魔法が、アルドさんたちの動きに、吸い付くみたいです…!」
「ああ! ハンナの守りがあるから、何も考えずに突っ込めるぜ! 俺の背中には、最高の壁があるからな!」
「二人とも、無理はしないで! 私の鍬が、絶対に守るから!」
魂のネットワークで繋がった三人は、完璧な連携を見せ、瞬く間に奴隷兵団の陣形を切り崩していった。それはもはや、個々の戦いではなく、三位一体となった一つの生命体のようだった。
「見ろ、工房長! 最高のステージだろ!」
アルドが、得意げに俺に向かって叫ぶ。
「ああ、最高の化学反応だ! このままセンターまで突っ走れ!」
俺の隣で、ベアトリスが戦慄に満ちた顔で呟いているのが見えた。「魂を束ね、一つの戦闘個体として機能させる…これが、彼の言うユニットの真髄…!」
その時だった。
奴隷兵団の後方から、静かに歩み出てくる影があった。仮面の将軍、ゼノン・ヴォルグだ。
「ほう。面白い玩具を手に入れたようだな。仲間との絆、魂の共鳴…反吐が出るほどの偽善だ」
ゼノンは、ゆっくりと右手を上げた。その仮面のスリットの奥で、二つの赤い魔眼が、ギラリと妖しい光を放つ。
「だが、所詮は寄せ集めの光。我が絶対の闇の前には、塵芥に同じ」
『魂魄の魔眼』が、その標的を捉えた。
だが、その視線の先は、アルドでも、ハンナでも、セレスティーナでもない。
アルドが握る、長剣『レイジ・ブリンガー』に向けられていた。
瞬間、レイジ・ブリンガーの刀身から、バチッ!と黒い火花が散った。
(ぐ…あああああああああっ!?)
剣の魂から、直接、アルドの脳内に、凄まじい苦痛に満ちた絶叫が叩きつけられる。
(な、なんだ、これ…! 俺様の魂が…直接、握り潰されるようだ…!)
「うわっ!? レイジ・ブリンガー! どうしたんだ!?」
アルドは、相棒の魂の悲鳴を受け、自分の身を斬られたかのような衝撃に襲われた。神経系に過剰な信号が流れ込み、体の自由が、一瞬だけ、完全に奪われる。
ゼノンは、その致命的な隙を見逃さなかった。
彼の黒い剣が、アルドの鎧の隙間から腹部へと、音もなく刺し込まれた。
「が…はっ…!」
アルドの口から、鮮血が迸る。彼の目に映る世界が、スローモーションになる。彼は、信じられないという顔で自分の腹を見下ろし、やがて糸が切れた人形のように、その場に崩れ落ちた。
「「アルドさん!」」
ハンナとセレスティーナの悲鳴が、戦場に響き渡る。
「なっ…!?」
後方で見ていた俺も、凍り付いた。
「なんだ、今の攻撃は…!? アイドル本人じゃなくて、その剣の魂を直接叩いたのか!? なんて汚え手を使うんだ! 心理学には『代理攻撃』って考え方があってな。本人を直接攻撃するんじゃなく、その人が大切にしてるものを攻撃することで、より大きな精神的ダメージを与えるんだ。人質を取ったり、故郷を焼いたりするのと同じ、最も下劣な戦術だぞ!」
ゼノンは、倒れたアルドを冷たく見下ろした。
「偽善者め。貴様の言う『愛』とやらは、我が『支配』の前に、かくも無力だ」
ゼノンが、アルドにとどめを刺そうと、その剣を振り上げた。
「させない!」
その前に立ちはだかったのは、ハンナだった。彼女は、涙を浮かべながらも、その瞳に強い決意を宿し、愛用の鍬『畑の女王』を固く握りしめている。恐怖よりも、怒りが勝っていた。フィンが繋いでくれた絆を、こんな形で踏みにじられることが、許せなかった。
「フィン君がくれた、この大切な仲間を…! あなたなんかに、傷つけさせない!」
ハンナの、フィンへの、そして仲間への純粋な想いが、鍬の魂に流れ込む。
鍬は、それに応えるように、温かく、そして力強い、黄金色の光を放ち始めた。それは、不純物のない純金のように、彼女の魂そのものの輝きだった。
ゼノンの『魂魄の魔眼』が、ハンナを捉える。
だが、鍬から放たれる黄金色の光が、まるで強固なバリアのように、ゼノンの邪悪な視線を弾き返した。
「なっ…!?」
ゼノンが、初めて動揺の声を漏らす。
「この光は…不快な…。魂を支配する我が魔眼の力が、たかが小娘の、その農具ごときに弾かれるだと…?」
(なるほどな…)と、俺は船橋で膝を打った。(ゼノンの魔眼は、魂の『乱れ』や『歪み』といった弱点を突く攻撃なんだ。だが、今のハンナの魂は、一点の曇りもない、完璧に調和した純粋な想いの塊だ。言うなれば、完璧なアーチ構造だな。一点に集中した力は、美しい曲線に沿って全体に分散され、無力化される。あれじゃあ、ハンマーで石橋を叩いてるようなもんだぜ!)
ゼノンは、忌々しげに舌打ちすると、黒いマントを翻した。
「…興が醒めたわ。その首、今は預けておいてやろう」
そう言い残し、彼は奴隷兵団と共に、闇の中へと姿を消した。彼の心には、初めての計算外の事態への困惑と、フィンの言う『愛』という未知の力への、歪んだ興味が芽生えていた。




