第47話:共鳴増幅システム『アンサンブル』(挿絵あり)
最近流行っているフィギュア化風で、挿絵を作ってみました。
「敵を操る魔力の糸は見えた! だが、数が多すぎる! 一本一本、断ち切っていてはキリがない!」
第零工房の作戦司令室。一時撤退した俺たちは、奴隷兵団という新たな脅威への対策を協議していた。セレスティーナの魔法によって可視化された『操りの糸』は、奴隷兵団の弱点であると同時に、その数の多さ故に攻めあぐねる原因にもなっていた。
「くそっ、あと一押しなんだ! もっとこう、ドカンと一発、広範囲に届くようなパワーがあれば…!」
アルドが、悔しそうに壁を殴る。
その言葉に、俺は閃いた。
「…パワー、か。そうだよな。アイドルのライブだって、クライマックスには、ファンと一体になって、会場全体を揺るがすような、最高の『大合唱』があるじゃないか」
「工房長? またアイドルの話ですかな?」
セバスチャンの冷静なツッコミにも、俺は構わず続けた。
「武闘大会で、ハンナの応援がアルドの力を引き上げたのを覚えているか? あれは『ピグマリオン効果』の一種だって話をしたよな。教師が生徒に期待すると、その生徒の成績が本当に上がる、っていうアレだ。つまり、仲間からの期待や応援は、対象のポテンシャルを実際に引き上げるんだ!」
俺は、作戦盤に大きく書きなぐった。
「この『応援の力』を、もっと意図的に、もっと強力に、システムとして増幅させることはできないか!?」
俺の熱弁に、司令室の面々は、それぞれの解釈を巡らせていた。
セレスティーナ:「(ぴぐまりおん…? 仲間同士の魂を直接繋いで、その想いを力に変換する…? そんなこと、理論上は…可能、かも…!)」
バルバロッサ:「(うむ! 仲間を想う心が、鉄をも貫く力となる! ドワーフの戦士たちの間でも、それは常識じゃ! フィン師は、その心の力を、魔術的に増幅させる装置を作ろうというのか! なんという発想!)」
ベアトリス:「(あの男、仲間同士の魂を喰らい合わせ、より強力な戦闘個体を生み出すための、共食い魔術を開発するつもりだわ!)」
「セレスティーナ! 君の才能ならできるはずだ! 仲間同士の魂の波長を同調させ、一つの大きなうねりとして増幅させる魔道具を! ユニット全体で奏でる、最高のハーモニー! その名も、共鳴増幅システム『アンサンブル』だ!」
「あ、あんさんぶる…!? は、はいぃっ!」
俺の無茶振りに、セレスティーナは顔を真っ赤にしながらも、その瞳に天才魔術師としての強い光を宿した。
◇
それから三日三晩。セレスティーナは研究室に籠もり、俺の抽象的なイメージと、彼女の膨大な魔術知識を融合させていった。そして、ついに三つのペンダント型魔道具が完成した。
中央には、持ち主の魔力(魂の波長)を感知する特殊な水晶が埋め込まれ、周囲には、その波長を仲間へと送信、及び受信するための、極細の魔導銀線が編み込まれている。
「すごい…本当に、できちゃった…!」
ハンナが、完成した『アンサンブル』を手に、感嘆の声を上げる。
「よし、早速試してみよう!」
俺たちは、訓練場に移動し、アルド、ハンナ、セレスティーナがそれぞれペンダントを身に着けた。
「起動コードは、『アンサンブル、オン!』だ!」
三人が声を合わせると、ペンダントの水晶が一斉に輝き始めた。
「うおっ!? なんだこりゃ!」
アルドが驚きの声を上げる。
「感じる…! ハンナの温かい気持ちと、セレスティーナさんのドキドキが、直接伝わってくる…!」
「本当だ! アルドさんの『やってやるぜ!』っていう気持ちが、私にも力をくれるみたい!」
「ひゃっ…! わ、私の気持ちまで…!? は、恥ずかしいですぅ…!」
三人の魂が繋がり、その力が互いを高め合っていく。アルドの闘気、ハンナの守りの意志、セレスティーナの魔力が混じり合い、それぞれのペンダントから、これまでとは比較にならないほどのオーラが立ち上った。古来より、集団が同じリズムで歌い、踊り、鼓舞することで、個々の力を超えた『一体感』を生み出し、困難を乗り越えてきた歴史がある。これは、単なる精神論ではなく、脳波のシンクロや神経伝達物質の分泌にも影響を与える、人間の本質的な機能の一つだとも言われている。
「すげえ…! 力が、無限に湧き上がってくるようだぜ!」
こうして、仲間との絆を力に変える、新たな武器を手に入れたのだった。




