第46話:アイドルユニットVS奴隷兵団(挿絵あり)
生成AIで画像を作ってみました。
この話数から自動で作っただけなので、本文や他の画像との矛盾はご容赦ください。
「面白いじゃねえか、ゼノン・ヴォルグ。お前のその三流のプロデュース理論、この俺が、根底から叩き潰してやる。最高のアイドルユニットの力でな!」
俺、フィン・アッシュフォージの宣戦布告に、第零工房の作戦司令室はかつてない緊張感に包まれた。遠見の水晶に映る、魂なき『奴隷兵団』の一糸乱れぬ行軍は、それだけで見る者の心を蝕むような不気味さを放っている。
「アルド、ハンナ、セレスティーナ! 初の本格的な野外ライブだ! 観客はノリの悪い連中ばかりだが、お前たちのパフォーマンスで、無理やりにでも熱狂させてやれ!」
「へっ、お安い御用だぜ、工房長!」
「うん、任せて!」
「は、はいぃ…! が、頑張ります…!」
俺の檄に応え、我が工房が誇るアイドルユニットの三人が、前線へと躍り出た。
戦いの火蓋は、アルドの一閃によって切られた。彼は奴隷兵団の先頭にいた兵士に斬りかかり、その兜を真っぷたつにする。しかし、斬られた兵士はよろめきもせず、ただ無感情に剣を振り上げてきた。
「ちっ、手応えがねえ! まるで案山子を斬ってるみてえだ!」
相棒のレイジ・ブリンガーも、(おい、こいつら魂の輝きが全くねえぞ! どうなってやがる!)と、アルドの脳内に困惑の声を響かせる。
「アルドさん、下がる!」
ハンナが、愛用の鍬『畑の女王』で大地を抉り、土の壁を作り出してアルドを援護する。そのダイナミックな動きに合わせて、彼女の豊満な胸が大きく揺れる。うん、素晴らしい。あの躍動感こそが、ディフェンダーとしての安定感と、観客を魅了するセクシーさを両立させている。最高のパフォーマンスだ。
「きゃっ!」
数で押してきた兵士の一人が、ハンナの体勢を崩す。すかさずセレスティーナの援護が飛んだ。
「『スライムちゃんサプライズ』、ですぅ!」
投げつけられたガラス玉が割れ、粘着性の液体が兵士たちの足元を固める。その隙にハンナは体勢を立て直し、アルドが反撃に転じる。完璧な連携だ。
だが、敵の数は減らない。倒しても、倒しても、後方から次々と魂なき兵士たちが補充されてくる。まるで、感情のないアリの群れのようだ。
「どうなってやがる…! いくら斬ってもキリがねえ!」
アルドの呼吸が、徐々に荒くなっていく。ハンナの額にも、玉のような汗が浮かび始めた。
後方の指揮所で戦況を見守っていた俺は、眉をひそめていた。
「…おかしいな。いつものライブなら、今頃は観客のボルテージも最高潮のはずだ。なのに、奴らときたら、サイリウムの一本も振らねえ。なんてノリの悪い客なんだ…」
「工房長。どうやら、あなたの言う『共鳴』が、あの兵団には機能していないようですな」
セバスチャンが、冷静に分析する。
「心が空っぽの相手には、心に訴えかける戦術は効果が薄い。実に厄介な相手です」
「なるほど…。魂が空っぽだから、俺のプロデュースが響かないのか…!」
俺の『魂魄の瞳』には、アルドたちの魂の輝きが、奴隷兵団という分厚い絶望の壁に吸い込まれ、霧散していくのが視えていた。
この戦いを、ベアトリスは全く異なる視点で見つめていた。
(魂なき兵団…! 帝国の将軍ゼノンは、死者の魂を冒涜し、意のままに操る、禁断の死霊術の使い手! それに対し、フィンは無機物に魂を宿らせるゴーレムマスター! これは、魔人と魔将による、覇権を賭けた代理戦争だわ!)
彼女の羊皮紙に、また一つ、壮大な物語が書き加えられていく。
「このままじゃジリ貧だ! セレスティーナ! 何か手はねえのか!? 現状を覆すような、派手な魔法は!」
俺は、魔導通信機で叫んだ。
「は、はいぃっ! や、やってみます!」
セレスティーナは、極度の緊張から涙目になりながらも、杖を天に掲げた。彼女が詠唱を始めると、その杖を中心に魔力が渦を巻き、やがて広範囲に拡散していく。それは、敵の魔術的な偽装を見破るための、広域探査魔法だった。
魔法の光が戦場を駆け巡った、その瞬間。
俺たちの目に、信じがたい光景が広がった。
奴隷兵団の一人一人の頭上から、まるでマリオネットを操る糸のように、無数の紫黒色の魔力のラインが伸び、はるか後方のゼノンの元へと集束しているのが、はっきりと視えたのだ。
「なんだ、あれは…?」
アルドが、呆然と呟く。
俺は、ポン、と膝を打った。
「なるほどな! そういうカラクリか! あの糸が、奴らを操るコントロールケーブルだったんだな!」
集団をコントロールする方法として、心理学には『同調圧力』なんてものがある。周囲の意見や行動に、無意識のうちに自分の意見を合わせてしまう現象だ。だが、ゼノンのやり方はもっと直接的だ。魂そのものを、魔力の糸で縛り上げ、強制的に同調させている。
「セバスチャン! 作戦変更だ!」
俺は、不敵な笑みを浮かべた。
「ステージがつまらないなら、演出家を直接ぶん殴ればいい。糸を断ち切るぞ!」
「糸を…? なるほど、兵を操る指揮系統そのものを叩く、と。承知いたしました」
セバスチャンの完璧な解釈が、俺の新たな作戦に、重厚な意味合いを与えてくれた。




