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神眼の鍛冶師は素材の魂(こえ)が聞こえる ~俺は素材をプロデュースする~  作者: サンキュー@よろしく


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第43話:空飛ぶ工房計画(挿絵あり)

生成AIで画像を作ってみました。

この話数から自動で作っただけなので、本文や他の画像との矛盾はご容赦ください。

「いやー、アレスの奴、いい仕事したな。これでしばらくは、帝国の連中も大人しくなるだろ」


 アレスの華々しい『プロモーション活動』から数日後。俺は工房長室で、ハンナが入れてくれた紅茶をすすりながら、満足げに呟いていた。

 しかし、俺の心はどこか晴れなかった。

 アレスの出撃準備、現地への移動、そして帰還後のメンテナンス…。その一連の流れを監督するために、俺自身も数日間、工房を離れなければならなかったのだ。


「タレントの地方巡業に、プロデューサーがいちいち付き添ってたら、事務所の経営が成り立たないんだよな…」


 俺は、深刻な経営課題に頭を悩ませていた。


「どうかなさいましたか、工房長? 何かお悩みのようですが」


 セバスチャンが、絶妙なタイミングで声をかけてくる。


「ああ、セバスチャン。俺は考えたんだ。アイドル事務所ってのはな、タレントがどこでライブをやろうと、最高のサポートができる体制を整えておくべきなんだ。機動力が、命なんだよ!」


 俺が熱っぽく語ると、セバスチャンは「なるほど」と頷いた。


「つまり、戦場がどこであろうと、即座に対応できる迅速な部隊展開能力が必要である、と。左様でございますな」


「そう! それだよ、セバスチャン!」


 俺は、ポン、と膝を打った。


「だったら、答えは一つしかねえだろ」


 俺は、工房の設計図をテーブルに広げると、その上に、大きく翼の絵を描き加えた。


「工房ごと、飛べばいいんじゃね?」


 俺の、あまりにも突拍子もない提案に、その場にいた全員の時間が、止まった。


「…と、飛ぶ、ですって!?」


 最初に我に返ったのは、セレスティーナだった。彼女は、読んでいた魔導書を落としそうになりながら、驚きの声を上げる。


「む、無茶です! こんな巨大な建造物を、空に浮かべるなんて…! そんな魔法、理論上は可能でも、実現するには国一つ分の魔力が必要になります!」


「いやいや、魔法だけじゃない。物理の力も使うのさ」


 俺は、前世のうろ覚えの知識を総動員して説明を始めた。


「いいか、船が水に浮くのはなぜか分かるか? 『アルキメデスの原理』だよ。物体は、それが押しのけた流体(水や空気)の重さと同じだけの浮力を得るんだ。つまり、このクソデカい工房が押しのける空気の重さよりも、工房全体の重さが軽くなれば、理論上は浮く! その補助として、セレスティーナの浮遊魔法陣を使えば、消費魔力も最小限に抑えられるはずだ!」


 俺の疑似科学理論に、セレスティーナは「あ、あるきめですのげんり…?」と、目を白黒させている。


 そこに、話を聞いていたバルバロッサが、興奮した様子で割って入ってきた。


「フィン師! その話、ワシらの間にも伝説として伝わっておるぞ! 古代ドワーフ王国には、巨大な『浮遊石』を動力源として、大空を駆ける『石の船』があったとな!」


「なんだって!? それだ、バルバロッサ顧問! その伝説、詳しく聞かせてくれ!」


 古代の超技術(オーパーツ)。なんてロマンのある響きだろうか!


 バルバロッサの話によれば、古代ドワーフは、特定の音叉の振動に共鳴して、反重力のような力を発生させる『歌う石(ソングストーン)』なるものを使っていたらしい。だが、その技術は、あまりにも強力すぎたため、自ら封印したのだという。


「面白い! 最高じゃないか!」


 俺のプロデューサー魂と、男の子のロマン魂が、同時に燃え上がった。


「よし、決まりだ! 我らが第零工房の次なるプロジェクトは、『空中機動工房』の建造とする! セレスティーナの古代魔術と、バルバロッサ顧問のドワーフの叡智、そして俺のプロデュース能力! この三つが合わされば、不可能はない!」


 俺が高らかに宣言すると、セレスティーナとバルバロッサの目にも、創造主としての情熱の火が灯った。


「は、はい…! 私、やってみます! 古代の浮遊魔法陣の解析を!」


「うむ! ワシも、ドワーフの古文書を全て読み解き、必ずや『歌う石』の秘密を突き止めてみせるわい!」


 こうして、工房の技術者チームは、完全に乗り気になった。

 だが、一人だけ、この狂気の計画に、心の底から戦慄している人物がいた。もちろん、ベアトリス団長である。


 彼女は、工房の隅で、震える手で報告書を書き殴っていた。


(始まった…。魔人の、次なる侵略計画が…。彼は、自らの拠点そのものを、空に浮かべ、天から世界を支配するつもりだ…!)


 彼女の脳裏には、暗雲の中から姿を現し、地上に裁きの雷を落とす、巨大な空中要塞―――天翔ける魔王城の姿が、ありありと浮かんでいた。


(アルキメデスの原理…? 歌う石…? またしても、聞いたこともない古代の禁呪や、異世界の法則の名を…。彼は、この世界の(ことわり)すらも捻じ曲げ、自らの欲望のままに、世界を再構築しようとしている!)


 彼女は、ゴクリと喉を鳴らした。


(止めなければ…。しかし、どうやって? …いや、待てよ。もし、あの魔王城が完成すれば、その力は、帝国の脅威すらも凌駕するかもしれない…。そうなれば、王国は…)


 彼女の心の中で、騎士としての正義と、国を守るための現実的な打算が、激しくせめぎ合い始めていた。


「工房長。空中機動工房の名称は、いかがいたしましょうか?」


 セバスチャンの問いに、俺は少し考えて、答えた。


「そうだな…。俺たちプロデューサーが乗る船だ。『プロデューサー号』とでも名付けようか」


 その、どこか気の抜けた名前が、後に帝国軍から『天空の懲罰者(スカイ・パニッシャー)』と呼ばれ、畏怖されることになるとは、今の俺には知る由もなかった。


挿絵(By みてみん)

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