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神眼の鍛冶師は素材の魂(こえ)が聞こえる ~俺は素材をプロデュースする~  作者: サンキュー@よろしく


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第42話:アレスの初仕事(挿絵あり)

生成AIで画像を作ってみました。

この話数から自動で作っただけなので、本文や他の画像との矛盾はご容赦ください。

「また出張かよ、面倒くせえな…」


 第零工房の工房長室。俺、フィン・アッシュフォージ男爵は、セバスチャンが持ってきた軍務省からの出動要請書を眺め、盛大にため息をついた。

 報告によれば、帝国の懲りない面々が、またしても北の国境の砦にちょっかいをかけてきたらしい。前回、俺たちの『サプライズ・パーティー』で散々な目に遭ったはずだが、どうやら喉元過ぎれば熱さを忘れるタイプらしい。


「工房長のお力、もはや王国にとって不可欠となっておりますので。これも、英雄の宿命というものかと」


 セバスチャンが、完璧な執事スマイルで言う。


「俺は英雄じゃなくてプロデューサーだって、いつも言ってるだろ…」


 俺は椅子に深くもたれかかり、天井を仰いだ。

 今回の帝国軍は、前回よりも規模が大きいらしい。アルドたち精鋭ユニットを出すのもいいが、彼らには今、別のプロジェクトに参加してもらっている。となると、この件に最適なタレントは、一人しかいない。


「…仕方ない。あいつのデビュー後の、初仕事といくか」


 俺は立ち上がると、工房の巨大な格納庫へと向かった。

 そこには、静かな威圧感を放ちながら、一体の巨神が佇んでいた。帝国の魔導巨兵タイタンを、俺が再プロデュースした、王国の新たな守護神『アレス』だ。


「よう、アレス。調子はどうだ?」


 俺が声をかけると、アレスの巨大な頭部にある青い単眼(モノアイ)が、キラリと好意的な光を放った。


「いいか、アレス。今回のミッションは『プロモーション』だ。お前の圧倒的な存在感で、帝国の連中の戦意を根こそぎ奪ってやれ。それが一番効率的だ。無駄な殺生は極力避けろ。アイドルはクリーンなイメージが大事だからな。だが、戦争なんだ。向かってくる火の粉を払うのは仕方がない。プロとして、ステージはきっちりやり遂げろ。観客ていこくに、二度と逆らう気が起きないくらいの、強烈なパフォーマンスをな」


 俺の言葉に、アレスは力強く頷くように、その巨体をわずかに震わせた。


 その様子を、物陰から見ていたベアトリスが、戦慄に満ちた表情でメモを取っていた。


(『無駄な殺生は避けろ』…!? なんてこと! 物理的に殺すのではなく、精神を完全に破壊し、恐怖で支配せよという、より残忍で、高度な命令だわ! 『火の粉は払うのは仕方がない』…つまり、少しでも抵抗の意思を見せた者は、容赦なく排除せよということ! まさに魔人の思考!)


 ◇


 数時間後。北の国境、アグリア砦。

 帝国軍は、優勢に戦を進めていた。


「はっはっは! 王国の守りも、この程度か!」


 指揮官が、高笑いを上げたその時だった。


 ゴゴゴゴゴゴゴゴ……

 大地が、地震のように揺れ始めた。

 砦の向こう、地平線の彼方から、巨大な影が、ゆっくりと、しかし着実に近づいてくる。


「な、なんだ、あれは…!?」


 帝国兵の一人が、震える声で叫んだ。

 それは、かつて自分たちが作り上げたはずの、魔導巨兵タイタン。だが、その姿は、より洗練され、そして比較にならないほど禍々しいオーラを放っていた。


「ば、馬鹿な! タイタンは、あの魔人フィンの手に落ちたと聞いていたが…! まさか、本当に我々に牙を剥くというのか!」


 指揮官は、顔面蒼白になった。


「全軍、迎撃用意! あれは、もはや我々の兵器ではない! 敵性兵器『タイタン・ノヴァ』だ!」


 帝国軍は、パニックに陥りながらも、ありったけの魔術砲撃をアレスに叩き込む。

 だが、色とりどりの魔法弾は、アレスの装甲に傷一つ付けることなく、虚しく弾かれた。


 アレスは、そんな攻撃など意にも介さず、砦の前まで歩みを進めると、ピタリ、と足を止めた。

 そして、ゆっくりと、その巨大な右腕を振り上げる。


「く、来るぞ! 総員、衝撃に備え…!」


 指揮官が絶叫した、その瞬間。


 アレスの腕は、帝国軍の陣地でも、砦の城壁でもなく、その手前の、何もない広大な大地へと、振り下ろされた。

 ズウウウウウウウウウウウウンッ!

 地響きと共に、大地が抉られ、土砂が舞い上がる。


 アレスは、まるで巨大なペンで地面に字を書くように、その腕を数回、滑らせた。

 何が起こったのか分からず、呆然とする帝国兵たち。

 やがて土煙が晴れた時、彼らの目の前に広がっていたのは、信じがたい光景だった。


 大地に、巨大な一つのアルファベットが、くっきりと刻まれていたのだ。

『P』

 それは、王国兵にとっては勝利の証。そして、帝国兵にとっては、悪夢の烙印。


 アレスは、自分の仕事に満足したかのように、一度だけ、その青い単眼をキラリと光らせると、踵を返し、悠々と王国の方向へと帰っていった。

 後に残されたのは、巨大な『P』の地上絵と、腰を抜かして声も出ない、帝国軍の兵士たちだけだった。


 この一件は、帝国の司令部に、一つの報告書として届けられた。


「――敵性兵器『タイタン・ノヴァ』、出現。我が軍の攻撃を一切受け付けず、進軍路に巨大な紋章を刻印。その行為は、大規模破壊魔法による最終警告と断定。紋章の魔力残留濃度から、その威力は戦略級と推定。これ以上の進軍は、全部隊の消滅を意味するものと判断し、即時撤退を具申いたします」


 遠見の水晶で一部始終を見ていた俺は、一瞬呆気に取られていたが、やがてニヤリと笑った。


「…なるほどな。敵兵を倒すより、武器を破壊するより、敵の『心』を折るのが、一番効果的か。アレスの奴、俺のプロデュース方針を、俺以上に理解してやがる。…ああ、最高のファンサービスだったぜ、相棒」


「はい、工房長」


 とセバスチャンが深く頷く。


「結果的に、これ以上ない、完璧な『領土宣言』でございましたな」


挿絵(By みてみん)

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