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神眼の鍛冶師は素材の魂(こえ)が聞こえる ~俺は素材をプロデュースする~  作者: サンキュー@よろしく


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第35話:出撃前夜とそれぞれの誓い

帝国魔導兵器『タイタン』との決戦を翌日に控えた、静かな夜。第零工房のメンバーは、それぞれの想いを胸に、最後の準備を進めていた。


訓練場の片隅では、アルドが愛剣『レイジ・ブリンガー』の手入れに余念がなかった。


「おい相棒、明日は頼んだぜ。俺の背中は、お前に任せた」


(ったりめえだろ、ヘッポコ。お前こそ、俺様の切れ味に、ちゃんとついてこいよな)


軽口を叩き合いながらも、その間には、戦いの中で育まれた、固い絆と信頼が確かに存在していた。かつて孤独だった若者は、工房という居場所と、相棒という魂の片割れを得て、本物の戦士へと成長していた。


厨房では、ハンナが明日のための携帯食料作りに精を出していた。


「フィン君が言ってた、栄養バランス…。タンパク質と、炭水化物と…」


彼女が作っているのは、ただのレーションではない。仲間たちの顔を思い浮かべながら、一口食べるごとに力が湧いてくるような、愛情という最高のスパイスがたっぷりと込められた、特製の戦闘糧食だ。彼女は、フィンに与えられたディフェンダーという役割だけでなく、皆を支える母親のような温かさで、このチームの心を繋ぎとめていた。


そして、工房の図書館。セレスティーナは、山のような古文書に埋もれながら、明日の戦いで使う支援魔術の最終調整を行っていた。


(大丈夫…私一人じゃない。アルドさんとハンナさんが、前にいてくれる。私にできるのは、二人を、みんなを守るための、最高の魔法を準備すること…)


彼女は、自分のためにではなく、初めてできた「仲間」のために、その類稀なる才能を燃やしていた。愛用の杖が、彼女の決意に応えるように、優しく、そして力強い光を放っている。


その頃、俺、フィン・アッシュフォージはというと…。


工房のメインファクトリーで、一人、ハンナ専用のブリガンダインの最終メンテナンスに没頭していた。

その豊満な胸のカーブに合わせて作られた胸当てを、特殊なワックスで丹念に磨き上げる。


「うむ…この滑らかな曲線、完璧だ。明日のステージで、敵の攻撃も、観客の視線も、全て滑らせてくれよ…」


俺が、うっとりと鎧の胸当てを撫で回していると、背後に冷たい気配を感じた。


「…決戦前夜に、そのような破廉恥な行為に及んでいるとはな。貴様の精神構造は、やはり私の理解を超えている」


ベアトリスが、氷のような目で俺を睨みつけていた。


「破廉恥? 何を言ってるんですか、ベアトリス団長。これは、最高のパフォーマンスを引き出すための、神聖な儀式ですよ。装備のコンディションは、アイドルのモチベーションに直結するんですから」


「儀式…だと…?」


ベアトリスは、ゴクリと喉を鳴らした。


(やはり…! あの娘の鎧に、更なる呪いを込めるための、最終調整! しかも、なんて猥褻な撫で方…! あれは、指先から魔力を最も効率よく鎧の魂に浸透させるための、古代の魔術的愛撫法に違いないわ!)


彼女は、震える手で羊皮紙に新たな記録を書き加える。


俺は、彼女の視線など気にも留めず、自らの『魂魄の瞳』を使い、工房にいる全員の魂の輝きを視た。アルドのレイジ・ブリンガー、ハンナの鍬『畑の女王クイーン・オブ・ファーム』、セレスティーナの杖。それぞれが、異なる色と強さの光を放ちながら、明日への決意を湛えているのが見えた。


「よし、最高のユニットだ」

俺は、思わず呟いた。


そこに、善も悪もない。あるのはただ、最高の作品を世に送り出したいという、プロデューサーとしての純粋な情熱だけだった。

俺の、そのあまりにも純粋で、揺るぎない眼差しを見て、ベアトリスはふと、一瞬だけ、自分の信じてきた「正義」が揺らぐのを感じた。


(この男の瞳…邪悪な魔人にしては、あまりにも真っ直ぐすぎる…。まるで、自分の信じる道を、ただひたすらに突き進む、愚直な子供のようだわ。…いや、違う! これも、私を油断させるための擬態! そうに決まっている!)


彼女は、頭を振って雑念を追い払うと、改めて魔人を監視する騎士団長としての覚悟を固め直した。

俺たちの、そして帝国との運命を賭けた『ライブ』の幕が、今、静かに上がろうとしていた。


「明日のライブ、絶対に成功させるぜ」


俺の呟きは、誰に聞かれることもなく、静かな夜の工房に吸い込まれていった。

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― 新着の感想 ―
〈気になる点〉 アルドの剣とセレスの杖が、同時刻に2つ存在してます…。彼らの手元とフィンの工房とに…。 ハンナの鍬と胸当てがフィンの手元に有るのは違和感ないので、そちらは大丈夫なはず。 修正すると…
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