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神眼の鍛冶師は素材の魂(こえ)が聞こえる ~俺は素材をプロデュースする~  作者: サンキュー@よろしく


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第34話:初めての共同作業と触媒の少女

「改めまして、今日から第零工房の所属となりました、セレスティーナ・クラウンです…。あの、その…よろしくお願いします…」


工房の作業場に、新メンバーのセレスティーナを迎え、俺は全員の前で紹介していた。彼女は、もじもじと俯いたまま、白衣の裾をぎゅっと握りしめている。その仕草のせいで、胸元の素晴らしい曲線がさらに強調されている。いかん、つい目がいってしまう。


「はっはっは! ようこそ、セレスティーナ嬢! 君のことは噂に聞いとるぞ! ワシは技術顧問のバルバロッサじゃ!」


「ようこそ! 私はハンナ! よろしくね、セレスティーナちゃん!」


バルバロッサとハンナは、気さくに彼女を歓迎する。だが、セレスティーナは「ひっ…!」と小さな悲鳴を上げ、俺の後ろに隠れてしまった。極度の人見知りは、筋金入りのようだ。


ベアトリスは、その光景を腕を組んで冷ややかに見ていた。


(あの娘…セレスティーナ。膨大な魔力を内に秘めているが、精神が不安定すぎる。まさか、あの魔人フィンは、彼女のその精神的な弱さに付け込み、依存させ、意のままに操るつもりか! なんという狡猾な…!)


「まあまあ、焦るな。彼女には、彼女のコミュニケーションの取り方がある」


俺はそう言うと、一本の杖をセレスティーナの前に差し出した。それは、俺が昨晩、魂を込めて打ち上げた、彼女専用の魔術杖だ。杖の先端には、彼女の魔力と共鳴しやすいように、特殊な加工を施した魔水晶が嵌め込まれている。


「こ、これは…?」


セレスティーナが、おそるおそる杖に触れた、その瞬間だった。

杖の魔水晶が、淡い青色の光を放ち始めた。


『――はじめまして、マスター。ボクは、あなたが最初に声をかけてくれた、杖の魂だよ』


杖から、直接、セレスティーナの脳内に、幼い少年のような声が響いた。


「え…!? しゃ、喋った…!?」


セレスティーナは、驚いて目を見開いた。


「どうやら、君は人間よりも、魂と直接対話する方が得意なようだな。その杖は、俺が君のためにプロデュースした、最初の『パートナー』だ」


「ぱーとなー…」


セレスティーナは、愛おしそうに杖を撫でる。彼女は、他人の目を見て話すことはできないが、魂を持つ「物」とは、何の抵抗もなく心を通わせることができるようだった。


「よし、それじゃあ、早速だが、初めての共同訓練を始めるぞ! 今日の目標は、この新生アイドルユニットの『化学反応』を確かめることだ!」


俺は、訓練場に、仮想敵として改良型のゴーレムを数体配置した。

そして、アルド、ハンナ、セレスティーナの三人を、その前に立たせる。


「いいか! アルドが前衛で敵の注意を引きつけ(ヘイトを集め)、ハンナが後衛を守りつつ、アルドを援護する! そしてセレスティーナ! 君には、さらにその後方から、君の作った魔道具で二人をサポートしてもらう!」


「フォーメーション…『トライアングル・アタック』だ!」


俺がドヤ顔で叫ぶ。


ベアトリス:「(…とらいあんぐる・あたっく…! 前衛・中衛・後衛の三位一体による、完璧な陣形! あの男、こんな短時間で、それぞれの役割に応じた最適な布陣を…! なんて恐ろしい戦術眼なの!)」


訓練が開始された。

アルドがゴーレムに斬りかかり、レイジ・ブリンガーが(もっと右だ、ヘッポコ!)と檄を飛ばす。ゴーレムの反撃を、ハンナが「はあっ!」という掛け声と共に、鍬で見事に弾き返す。

しかし、ゴーレムは数が多い。じりじりと、三人は追い詰められていく。


「セレスティーナ、今だ!」


俺が叫ぶ。


「ひゃ、はいぃぃっ!」


セレスティーナは、パニックになりながらも、懐から手のひらサイズのガラス玉を取り出し、ゴーレムの足元へと投げつけた。

パンッ!という音と共に、ガラス玉が割れ、中から粘性の高い緑色の液体が飛び散り、ゴーレムたちの動きを封じる。


「やったね! セレスティーナちゃん!」


「おおっ、ナイスサポートだぜ、眼鏡!」


ハンナとアルドから、賞賛の声が飛ぶ。


(ほ、褒められた…!?)


セレスティーナの頬が、ぽっと赤く染まった。


「あの魔道具、なんて名前だ?」


「え、えっと…『高分子粘着体含有・魔力式拘束カプセル』です…」


「長くて覚えにくいな! よし、今日からそいつは『スライムちゃんサプライズ』だ!」


「す、すらいむちゃん…!? は、破廉恥ですぅぅ!」


セレスティーナは、耳まで真っ赤にして、その場にしゃがみ込んでしまった。


「ははは! 面白いじゃないか、スライムちゃんサプライズ!」


「なんだか可愛い名前ね!」


アルドとハンナは、すっかりその名前が気に入ったようだ。


このやり取りを見て、ベアトリスは確信を深めていた。


(あの粘液爆弾に、わざとふざけた名前をつけることで、敵にその真の危険性を誤認させる心理的偽装…! そして、あの内気な娘を、仲間内でしか通用しない愛称で呼ぶことで、外部との繋がりを断ち、自分たちのコミュニティに強く依存させる洗脳手法…! まさに悪魔の所業!)


訓練が進むにつれて、三人の連携は目に見えて向上していった。

化学の世界には『触媒』というものが存在する。それ自体は変化しないが、特定の化学反応を促進させる物質のことだ。まさに、セレスティーナの存在が、アルドとハンナという、全く異なる性質を持つ二人の間に、新たな連携という化学反応を引き起こす、最高の『触媒』となっていたのだ。


「よし、今日の訓練はここまでだ!」


俺が終了を告げると、三人は汗だくになりながらも、どこか満足げな表情を浮かべていた。


「へへっ、なんだか、一人で戦ってた時より、ずっと楽しいぜ!」


「うん! 三人一緒だと、なんだか怖いものなしって感じがするね!」


「…わ、私も…少しだけ…」


最高のユニットが、今、確かに産声を上げた。


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