表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
神眼の鍛冶師は素材の魂(こえ)が聞こえる ~俺は素材をプロデュースする~  作者: サンキュー@よろしく


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

32/67

第32話:魔導巨兵と『ユニット』構想

「――で、これがその帝国の新人、タイタン君のプロモーション映像ってわけか」


第零工房の作戦司令室。俺、フィン・アッシュフォージは、魔術師が遠見の水晶に映し出した、帝国の巨大魔導兵器『タイタン』の姿を腕組みしながら眺めていた。全長三十メートルはあろうかという、無骨な鋼鉄の巨人。その巨腕の一振りで、国境の砦の城壁が、クッキーのように砕け散る。


「うわぁ…おっきい…」


ハンナが、呆気に取られたように声を漏らす。


「ふむ。単純な物理的破壊力だけなら、古のドラゴンにも匹敵するかもしれんのう」


バルバロッサが、唸る。


「工房長。分析によりますと、あの巨兵は複数の魂を無理やり融合させ、魔力炉の動力源としている模様。ゆえに、出力は絶大ですが、動きは直線的で、細かい制御は利かないものと推測されます」


セバスチャンが、冷静な分析を報告する。


なるほど。つまり、事務所の力でゴリ押しデビューさせられた、メディアには出まくるがダンスも歌もトークもヘタな、実力のない大型新人アイドルってことか。


「ダメだな、こりゃ」


俺は、バッサリと切り捨てた。


「図体がデカいだけの、一発屋だ。最初はインパクトがあるかもしれないが、すぐにファンは飽きる。単調なパフォーマンスじゃ、人の心は掴めないんだよ」


俺のアイドルプロデューサーとしての辛口評価を、司令室のメンバーたちは、それぞれの解釈で受け止めていた。


ベアトリス:「(…動きが単調…。巨大兵器の弱点は、小回りが利かず、複雑な連携攻撃に対応できないこと…。彼の分析は、軍事的な観点から見ても、驚くほど的確だわ。でも、なぜそれをアイドルの話に例えるの!? 私の常識が、毎日破壊されていく…!)」


セバスチャン:「(『ファン』、つまり民衆ですな。巨大兵器による恐怖政治は、一時的には有効でも、いずれ人心の離反を招く。工房長は、戦術レベルだけでなく、国家戦略レベルで物事を見ておられる。さすがですな)」


バルバロッサ:「(うむ。ただデカいだけでは、魂がこもっておらん。見かけ倒しのハリボテじゃ。フィン師の言う通り、魂を揺さぶる『何か』が足りんわい!)」


俺は、チョークを手に取ると、作戦盤に大きく円を描いた。


「いいか、みんな。ゴリ押しのソロアイドルに対抗する最善の策。それは、完璧なハーモニーを奏でる、少数精鋭の『アイドルユニット』だ」


「「「ゆにっと?」」」


ハンナ以外の全員が、聞き慣れない言葉に首を傾げた。


「役割の違うメンバーが、互いの長所を活かし、短所を補い合う。一人の力では決して生み出せない、化学反応ケミストリーを起こすんだ。一人の力が百だとして、三人集まれば三百になる、というのが凡人の発想だ。だが、最高のユニットは、三人で千にも、万にもなれる! これが『シナジー効果』ってやつさ」


俺は前世の記憶――伝説のグループたちが巻き起こした熱狂を思い出しながら、熱弁を振るう。


「俺たちが目指すのは、そういうことだ。帝国のタイタンを、俺たちの最初の『踏み台』にする!」


「『しなじー』…錬金術的な能力増幅、と解釈すればよろしいですかな?」


セバスチャンの完璧なフォローが入る。


「まあ、そんなとこだ。そこで、俺が考えた最初のユニットメンバーを発表する!」


俺は作戦盤に、三つの名前を書き出した。


「まずは、斬り込み隊長、リードボーカル兼アタッカー! 『アルド&レイジ・ブリンガー』!」


「へっ、俺たちの出番ってわけか!」


別室で待機していたアルドが、ニヤリと笑う。


「次に、チームの守りの要! 鉄壁のディフェンスでメンバーを支える、メインダンサー兼ディフェンダー! 『ハンナ』!」


「は、はいっ! メインダンサー、頑張ります!」


ハンナが、よく分かっていないながらも、元気よく返事をする。その豊満な胸が、誇らしげに揺れている。うん、まさにメインを張るにふさわしいボディだ。


ベアトリス:「(アタッカー、ディフェンダー…。役割分担ロールの明確化による、戦闘効率の最大化…。恐ろしく合理的な編成だわ。しかし、なぜリードボーカルとメインダンサーという、意味不明な呼称を…!? まさか、それも敵を欺くための暗号!?)」


俺は、最後に、まだ空欄になっている三つ目の枠を、チョークでトントンと叩いた。


「そして、三人目のメンバー。後方から、多彩な技でステージを彩る、特殊効果スペシャルエフェクト担当兼、テクニカルサポーターだ。このポジションが、俺たちのユニットの『化学反応』の鍵を握る」


「して、その人材に心当たりは?」


ルミナス公爵が、身を乗り出して尋ねてきた。


「ええ。この王都に、最高の才能を持ちながら、デビューできずに燻っている、最高の『原石』がいる、と聞いています」


俺の『魂魄の瞳』が、工房の外、王宮の方角に、ひときわ大きく、しかし内に籠もった魔力の輝きを感知していた。それはまるで、分厚い殻に閉じこもった、極彩色の真珠のようだった。


「その者の名は?」


「王宮魔術師団所属、セレスティーナ・クラウン。通称、『物言わぬ賢者』。最高の才能を持つ、引きこもりです」


俺の言葉に、司令室は再び静まり返った。


「引きこもり、だと…?」


「そんな者を、国の命運を賭けた戦いに…?」


重臣たちが、ざわめく。


「ええ。彼女のような才能を、部屋の隅で腐らせておくなんて、社会の損失だ。プロデューサーとして、断じて許すわけにはいかない」


俺は立ち上がると、扉に向かって歩き出した。


「ちょっと、スカウトに行ってきます。最高のアイドルユニットの、最後のピースを、迎えにね」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
フィンの瞳はついに、目の前の魂だけでなく、壁の向こう人の集団の中から特定の人物を見つけるレベルに達したか。 視力、と言うか脳(あたま)大丈夫かな。 そして、ユニット3人目は賢者。今度は魔法の杖を作…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ