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神眼の鍛冶師は素材の魂(こえ)が聞こえる ~俺は素材をプロデュースする~  作者: サンキュー@よろしく


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第29話:祝勝会と秘密の計画

武闘大会での劇的な優勝から数日後。第零工房では、ささやかな祝勝会が開かれていた。主役はもちろん、今や王都の英雄となったアルドだ。


「いやー、それにしても工房長! あんたの言う通りにしたら、本当に勝てちまったぜ! 俺、あんたに一生ついていきやす!」


アルドは、祝杯のジョッキを片手に、すっかり俺に心酔しきっている。


「当然だ。俺のプロデュースに間違いはないからな」


俺、フィン・アッシュフォージは、したり顔で応える。傍らでは、ハンナが「アルドさん、おめでとうございます!」と、手料理を甲斐甲斐しく振る舞っていた。そのエプロン姿と、屈んだ時にちらりと見える胸の谷間が、祝勝会に彩りを添えている。うん、今日も工房は平和だ。


そんな和やかなムードの中、一人だけ、氷のような雰囲気を放つ人物がいた。もちろん、我らが監視役、ベアトリス団長である。彼女は祝勝会の隅で、腕を組みながらブツブツと呟いていた。


(祝勝会…。いや、違う。これは次の作戦への決起集会! あのサムズアップの指令を受け、魔人の軍団が、新たな侵略計画を練っているに違いない!)


そこへ、執事長のセバスチャンが、一枚の地図を広げて俺の元へやってきた。


「工房長。先日の武闘大会での活躍を受け、陛下より直々に、新たな任務が下されました。近頃、北方の国境付近で、帝国の不審な動きが活発化しているとのこと。我ら第零工房に、その調査と、必要であれば実力行使による『牽制』が命じられました」


セバスチャンが話す間、俺の懐の『呪いの破片』が、地図の北方を指して、かすかに疼いた。まるで、同類の邪気を察知したかのように。


「北の国境、ねえ…。なるほど、次のステージはそこか」


俺は地図を覗き込み、指で一つの地点をなぞった。それは、深い渓谷と、古代遺跡が点在する、戦略上の要衝だった。


「いいじゃないか。最高のロケーションだ。次のライブは、ここで決まりだな」


「ライブ…でございますか。つまり、帝国の前哨基地を叩き、我々の力を誇示する、示威行動ですな?」


セバスチャンの完璧な(勘違い)通訳に、俺は頷いた。


「そうだ。だが、ただ叩くだけじゃ芸がない。そこでだ、みんな。俺にいい考えがある」


俺は、メンバーを見回し、ニヤリと笑った。


「今回の作戦のコードネームは、『サプライズ・パーティー』だ」


「さぷらいず…ぱーてぃー…?」


「む? 奇襲のことか?」


セバスチャンとバルバロッサが首を傾げる。


俺の計画はこうだ。

まず、ハンナの土木作業能力を活かし、渓谷に巨大な落とし穴や、土砂崩れの罠を仕掛ける。そして、俺とバルバロッサが、遺跡の石材に魂を吹き込み、自律型のゴーレム部隊を複数配置する。最後に、アルドとレイジ・ブリンガーが、派手なパフォーマンスで敵の注意を引きつけ、罠へと誘導する。要するに、敵を盛大に驚かせ、戦わずして混乱に陥れる、ドッキリ大作戦である。


この俺の純粋な悪戯心を、ベアトリスがどう解釈したか。


(サ…サプライズ・パーティーですって!? なんて禍々しい作戦名なの! あれは、敵を油断させ、最も無防備な状態で、一方的に殲滅するための、悪魔の儀式の隠語に違いない!)


彼女の顔は、恐怖で引きつっていた。


「いいか、ハンナ。君には、最高の『ステージセット』を作ってもらう。敵が足を踏み入れた瞬間、『わっ!』と驚くような、最高の仕掛けを頼むぞ」


俺がハンナの肩をポンと叩くと、彼女は「うん、任せて! びっくりするような、すごい落とし穴、作っちゃう!」と、目を輝かせた。


俺がハンナの柔らかそうな肩に触れているのを見て、ベアトリスは歯ぎしりした。


(まただ…! あの娘に触れて、魔力を注入している! きっと、地形を自在に操るための、土木工事用の禁呪を授けているのか!)


次に、俺はバルバロッサに向き直った。


「バルバロッサ顧問。あなたのドワーフの知恵と、俺のプロデュース能力を組み合わせれば、遺跡に眠る石ころたちを、最高の『バックダンサー』に仕立て上げることができます」


「ほう! 石ころを、バックダンサーに! つまり、ワシらの後ろで、敵を打ちのめすゴーレム部隊ということか! 面白い! 血が騒ぐわい!」


バルバロッサは、完全に乗り気だ。


「その通り! 石にも個性がある。硬い石、もろい石、それぞれの特性を見極め、役割を与える。例えば、火打石は、衝撃で火花を散らす性質があるから、目くらまし役(フラッシュ・ゴーレム)に最適だ。これを『適材適所』って言うんですよ」


俺が前世のビジネス用語をドヤ顔で使うと、バルバロッサは「てきざいてきしょ…! なんと深みのある言葉じゃ…! フィン師の哲学、また一つ学ばせてもらったわ!」と、深く感銘を受けている。


ベアトリスの脳内では、俺の言葉が、最悪の形で翻訳されていた。


(石の個性を…見極める…!? まさか、ただのゴーレムではない! それぞれに特殊能力を持たせた、多種多様な魔法人形ホムンクルス部隊を編成するつもりか! 目くらまし、自爆、毒霧…考えただけで恐ろしいわ!)


「そして、主役のアルド。君には、最高の『おとり』役を演じてもらう。いかに敵をイラつかせ、冷静さを奪い、我々の仕掛けた『ダンスフロア』におびき寄せるかが、君の腕の見せ所だ」


「へっ、お安い御用だぜ、工房長! あの大会のパフォーマンスで、敵を挑発しまくってやりまさあ!」


アルドは、やる気満々だ。


こうして、第零工房の、初のチームミッションが決定した。

俺にとっては、ただの壮大なドッキリ計画だが。


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