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神眼の鍛冶師は素材の魂(こえ)が聞こえる ~俺は素材をプロデュースする~  作者: サンキュー@よろしく


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第22話:王宮の晩餐会と深まる謎

ギルドでの一件は、瞬く間に王都の噂となった。俺の名は、「聖剣に選ばれし者」に続き、「鍛冶師ギルドの長を心服させた若き天才」という、さらに面倒くさい肩書きで飾られることになった。


そんなある日、ルミナス公爵家から、一通の招待状が届いた。今宵の晩餐会への招待だ。


「面倒くせえ…」


渋る俺をよそに、ハンナは大はしゃぎ。結局、俺たちは王宮の晩餐会という、新たな戦場(ステージ)へと足を踏み入れることになった。

今回は「王都の有力者である鍛冶師ギルドが認めた、新進気鋭の職人」という、公式な肩書きでの招待であり、ハンナもその助手として同伴が許された。



晩餐会の会場は、きらびやかなシャンデリアが輝き、宮廷楽団が優雅なワルツを奏でる、完全なアウェー空間だった。


「フィン・アッシュフォージ殿、お待ちしておりましたぞ」


ルミナス公爵が、鷹揚な笑みで俺たちを迎えてくれた。

その横で、ベアトリスが、美しいスカイブルーのドレスに身を包みながらも、俺を射殺さんばかりの眼光で睨みつけている。


食事が始まった。

俺は、俺の『魂魄の瞳』を使い、ナイフやフォークといった食卓用金物、いわゆるカトラリーたちの魂の声を聞くことで、完璧なテーブルマナーを披露する。貴族の作法など知らなかったが、「次は私の番よ!」と輝いて教えてくれる銀食器たちのおかげで、迷うことは一切ない。

公爵が「フィン殿は、食事の作法も実に堂に入っておられる。その落ち着き、やはりただ者ではないですな」と感心したように言う。


ベアトリスは、そんな俺の姿を、新たな疑惑の目で見ていた。


(なぜだ…! 村の出と聞いたが、貴族のテーブルマナーを完璧にこなしている…。まさか…武具や鉄だけでなく、カトラリーの魂とまで対話し、その心を支配しているというのか!? この男、一体どこでこれほどの教養を…? まるで、どこか別の世界で生きていたかのようだわ…)


彼女の疑念は、図らずも俺の核心(転生者であること)に、少しずつ近づき始めていた。


晩餐会も終盤に差し掛かった頃。

公爵が、ポン、と手を打った。


「さて、皆様。今宵は、我が国に新たなる光明をもたらすやもしれぬ、若き天才を紹介しよう!」


公爵の言葉に、会場中の視線が俺に集まる。やめてくれ。


「実は、先日、王家より一つの難題が、このルミナス家に託された。曰く、王国に災いをもたらすとされる『呪われた魔剣』を浄化せよ、と」


その言葉に、会場がどよめいた。


「この魔剣は、持つ者の心を蝕む。もし浄化に失敗すれば、術者は廃人となるだろう。そのため、この場ではなく、後日、万全の準備を整えた上で、フィン殿にこの大役を任せたいと考えておる。今日は、そのお披露目までだ」


公爵の言葉は、貴族たちへの牽制と、俺への期待の表明だった。危険な儀式を衆目の前で行う無謀さは、彼にはなかった。


執事が黒いビロードに包まれた、禍々しい気配を放つ長剣を持ってきた。

『狂王』が佩いていたとされる魔剣『ヴォルテクス』。

その剣を見た瞬間、俺はゴクリと喉を鳴らした。


『魂魄の瞳』には、渦巻く紫色のオーラを放つ、強烈な魂が視えたのだ。

それは、世間から見捨てられ、拗ねに拗ねて、とんでもない不良になってしまった、最高のポテンシャルを秘めたヤンキー系アイドルのようだった。


俺のプロデューサー魂に、火がつかないわけがなかった。


「…公爵閣下。よろしければ、少しだけ、この子と『対話』させていただいても?」


「ほう…よかろう」


俺は覚悟を決め、魔剣の前に膝をついた。

俺のこの行動に、公爵は期待に満ちた声を上げ、会場の貴族たちは固唾をのみ、ベアトリスだけが「ああ…もうダメだ…父上は、この国を、この魔人に売り渡すおつもりだ…」と、一人、世界の終わりを予感していた。


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